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福祉用具選びの全体手順——困りごとの整理から「使いながら見直す」まで

Published
作成日: 2026年7月7日
Updated
最終更新日: 2026年7月9日

福祉用具を選ぶ手順を8つのステップで解説。困りごとの整理、品目の絞り込み、複数商品の比較、試用での確認、そして使いながら見直すサイクルまで、誰が何を判断するのかがわかる選び方の全体ガイドです。

01福祉用具選びは「商品選び」から始めない

福祉用具を選ぼうとするとき、多くの方が最初にやってしまうのが、いきなり商品を検索することです。「車いす おすすめ」「歩行器 人気」——こうした調べ方は、家電を選ぶときには有効でも、福祉用具では遠回りになりがちです。

理由は2つあります。ひとつは、福祉用具の「正解」が使う人の体・住環境・生活によって変わるからです。誰かにとっての名品が、あなたのご家族には合わないことが普通に起こります。もうひとつは、介護保険で使う場合、品目が制度上の区分(貸与・販売・選択制)で整理されており、選び方の手続きも決まっているからです。商品から入ると、この仕組みとかみ合わず、あとから手戻りが発生します。

では、何から始めればよいのか。答えは「困りごとの整理」です。商品でも品目でもなく、「いつ・どこで・どの動作に困っているか」を出発点にして、専門職と一緒に品目→商品へと絞り込んでいく。これが福祉用具選びの基本形です。

この記事では、その全体手順を8つのステップに分けて解説します。各ステップで「誰が・何を判断するのか」を明確にするので、読み終わる頃には、自分が今どの段階にいて、次に何をすればよいかが見えるはずです。すでに検討が進んでいる方は、該当するステップから読んでいただいて構いません。

なお、この手順は「初めて福祉用具を使う場面」だけでなく、「2つ目・3つ目の用具を追加する場面」「いまの用具を見直す場面」でも同じように使えます。手順を一度身につけておくと、介護の局面が変わるたびに応用が利きます。

02ステップ1〜2:困りごとの整理と、ケアマネジャーへの相談

ステップ1:困りごとを書き出す(あなたの仕事)

まず、生活の中の「できない・危ない・つらい」を書き出します。コツは、動作と場面のセットで具体的にすることです。

  • 「夜中にトイレへ行くとき、廊下でふらつく」
  • 「浴槽をまたぐときに、手をつく場所がない」
  • 「布団からの起き上がりに5分以上かかる」

本人の言葉だけでなく、家族から見た「危なっかしい場面」も加えてください。本人が「大丈夫」と言っている動作ほど、実はリスクが潜んでいることがあります。2〜3件書ければ十分です。

ステップ2:ケアマネジャーに相談する(相談の入口)

書き出した困りごとを、担当のケアマネジャーに伝えます。まだ要介護認定を受けていない方や担当がいない方は、地域包括支援センターが窓口です。

ここで大切なのは、「歩行器を借りたい」ではなく「廊下でふらつく」と伝えることです。品目を決め打ちすると、ケアマネジャーはその品目の手配に動きますが、困りごとで伝えると、福祉用具以外の選択肢(住宅改修、リハビリ、他のサービス)も含めた幅広い検討ができます。実は福祉用具が最適解ではないケースもあり、それを見きわめるのがこの段階の役割です。

福祉用具が有効と判断されれば、ケアプランに位置づけられ、次のステップへ進みます。

なお、相談は無料です。困りごとが小さいうちに相談するほど選択肢は多くなるので、「こんなことで相談していいのか」というためらいは不要です。

メモは走り書きで十分です。完璧な文章より、具体的な場面が2〜3件あることが大事です。

03ステップ3〜4:アセスメントと品目の絞り込み

ステップ3:アセスメント——体と住環境を見てもらう(専門職の仕事)

事業所が決まると、福祉用具専門相談員が自宅を訪問し、心身の状況と住環境を確認します。これをアセスメントと呼びます。見られるのは、たとえば次のような点です。

  • 体の状態:立ち上がる力、歩行のバランス、握力、座位の安定性
  • 住環境:廊下・ドアの幅、段差、部屋の配置、生活の動線
  • 介護の状況:誰が介助するか、介助者の体格や負担

このとき、ステップ1で書き出した困りごとメモが活きてきます。「実際に困る場面」を再現しながら見てもらうと、アセスメントの精度が上がります。

ステップ4:品目の絞り込み(専門職と一緒に判断)

アセスメントの結果から、「この困りごとには、この品目」という絞り込みが行われます。たとえば「夜間のふらつき」に対して、手すりか、歩行器か、その組み合わせか——ここは専門相談員の提案を聞く場面ですが、受け身になる必要はありません。

  • 「なぜこの品目なのですか」(根拠を聞く)
  • 「他の品目で解決する方法はありますか」(代替案を聞く)

この2つの質問をすると、提案の理由が言葉になり、納得して次に進めます。品目が決まると、それが貸与・販売・選択制のどれに当たるかも整理されます。

アセスメントの日は、普段の様子をそのまま見てもらうのがコツです。来客だからと頑張ってしまうと、実態より軽く見積もられることがあります。普段どおり、が一番の協力です。

04ステップ5〜6:複数商品の比較と、試用での確認

ステップ5:商品候補を複数見る(比較はあなたの権利)

品目が決まったら、具体的な商品の選定です。ここで知っておきたいのは、制度上、事業所は機能や価格帯の異なる複数の商品を提示することになっている点です。貸与では、商品ごとの全国平均貸与価格と事業所の価格の説明もあわせて行われます。

1つの商品だけを勧められた場合は、「他の候補も見せてください」「この商品と、機能がシンプルなものの違いを教えてください」と遠慮なく求めましょう。比較して選ぶことは、わがままではなく、制度が想定している当然のプロセスです。

ステップ6:試用(デモ)で確かめる(できる限りやる)

カタログ上のスペックと、実際の使い勝手は別物です。多くの事業所で試用の相談ができるので、「自宅で試してから決められますか」と聞いてみてください。

試用で確認したいのは、次の3点です。

  • 本人の実際の動作:座る、立つ、こぐ、またぐ——実際に困っている動作で試す
  • 介助者の使い勝手:押しやすさ、たたみやすさ、操作のわかりやすさ
  • 住環境との相性:廊下を通れるか、置き場所に収まるか、動線に無理がないか

特に購入品目(入浴補助用具や腰掛便座など)は、あとから交換ができないため、試用や実物確認の価値がいっそう大きくなります。

比較の際は、見積もりに商品名・型式・月額(または本体価格)・搬入費用の有無が明記されているかも確認しましょう。あいまいな見積もりは、後の行き違いのもとになります。

05ステップ7:決定・納品——「決めて終わり」にしない確認

ステップ7:決定と納品時の最終確認

商品が決まったら、契約と納品です。納品当日は、専門相談員が用具を設置し、体に合わせた調整と使い方の説明を行います。この日を「受け取りの日」ではなく「最終確認の日」と位置づけるのがおすすめです。

納品時のチェックポイントをまとめます。

  • その場で実際に使ってみる:説明を聞くだけでなく、本人が試す。違和感があればその場で調整を依頼
  • 家族も操作を覚える:ベッドの操作、車いすのブレーキとたたみ方、手すりの位置
  • 「してはいけない使い方」を聞く:安全上の注意点は、口頭だけでなくメモに残す
  • 連絡先の確認:不具合・調整・夜間緊急時にどこへ連絡するか
  • 書類の保管:契約書・重要事項説明書、購入の場合は領収書(支給申請に必要)

また、選定の根拠が書かれた福祉用具サービス計画の説明を受け、交付されます。「なぜこの商品なのか」「何を目標に使うのか」が書かれた大事な書類なので、内容に納得できるまで質問し、保管しておきましょう。

ここまでで「選ぶ」プロセスはいったん完了です。ただし、福祉用具選びには、もうひとつ大事なステップが残っています。

納品直後の数日は「気づきのゴールデンタイム」です。使ってみて感じた小さな違和感をメモしておき、早めに事業所へ伝えると、調整で解決できることがほとんどです。

なお、貸与の月額や購入の支払いは、契約前に確認した見積もりと一致しているかを契約書で照合してください。数字の確認は、遠慮する場面ではありません。

06ステップ8:使いながら見直す——選定は一度で終わらない

ステップ8:使いながら見直す(選び直しは失敗ではない)

福祉用具選びの最後のステップは、納品後にあります。実際に使ってみて、合っているかを確かめ、必要なら見直すことです。

貸与には、専門相談員による定期的なモニタリング(使用状況の確認)が仕組みとして組み込まれています。ここで「実際どうか」を率直に伝えてください。

  • 使い始めて気づいた不便(夜間は使いにくい、思ったより重い)
  • 体の変化(リハビリで回復してきた、逆に弱ってきた)
  • 使わなくなった用具(あるなら、返却して費用と枠を軽くできます)

大切な心構えとして、「選び直し=最初の選定の失敗」ではありません。体の状態も生活も変わっていくのですから、用具が合わなくなるのは自然なことです。むしろ、交換しながら「いまの体に合うもの」を使い続けられることが、貸与という仕組みの最大の価値です。

見直しのきっかけは、モニタリングを待つ必要はありません。「なんだか合わない気がする」の段階で、事業所かケアマネジャーに連絡してかまいません。小さな違和感のうちに調整するほうが、転倒などのリスクを未然に防げます。

この「使いながら見直す」まで含めて、福祉用具選びの全体手順です。一度で完璧を目指すより、専門職と一緒に育てていく——そう考えると、選ぶことへの気負いも軽くなるはずです。

見直しの結果、用具の変更ではなく「使い方の再指導」や「置き場所の変更」で解決することもあります。答えを決めつけず、状況をそのまま伝えるのがコツです。

07全体の流れを図でおさらい——誰が何を判断するか

ここまでの8ステップを、判断の主体に注目して整理し直します。

福祉用具選びの8ステップの流れ図。困りごとの整理とケアマネジャーへの相談から始まり、アセスメント、品目の絞り込み、複数商品の比較、試用、決定と納品、使いながらの見直しへと進む。各ステップで利用者と専門職の役割が分かれている

あなた(本人・家族)が主に担うこと

  • 困りごとを具体的に伝える(ステップ1〜2)
  • 提案への質問と、比較・試用での確認(ステップ5〜6)
  • 最終的な決定と、使ってみた実感の共有(ステップ7〜8)

専門職(ケアマネジャー・福祉用具専門相談員)が主に担うこと

  • 福祉用具以外も含めた解決策の検討(ステップ2)
  • アセスメントと品目・商品の提案(ステップ3〜5)
  • 納品時の調整と、その後のモニタリング(ステップ7〜8)

こう並べると、役割分担がはっきり見えてきます。あなたの仕事は「正しい商品を見抜くこと」ではなく、「実感と希望を具体的に伝えること」です。目利きは専門職に任せてよい。その代わり、暮らしの実態はあなたにしかわかりません。

この分担がうまく回ると、福祉用具選びは「難しい買い物」から「専門職との共同作業」に変わります。遠慮なく伝え、遠慮なく質問する——それが良い選定のいちばんの近道です。

なお、ここでいう「専門職に任せる」は「丸投げ」とは違います。提案の根拠を聞き、比較し、試して、納得して決める——判断の材料集めは専門職に任せ、最後の決定はあなたがする、という分担です。この距離感を保てると、専門職との関係も対等で健全なものになります。

家族間でも、この役割分担を共有しておくと、「誰が決めるのか」で揉めることが減ります。

08はじめの一歩——相談先を見つける

全体手順がわかったら、あとは動き出すだけです。いまの状況別に、最初の一歩を整理します。

まだ誰にも相談していない方

ステップ1の「困りごとメモ」を作って、ケアマネジャー(いなければ地域包括支援センター)に連絡してください。「福祉用具のことで相談したい」と伝えれば、そこから手順が動き始めます。

品目の見当がついてきた方

相談先となる事業所の候補を探しましょう。事業所選びの前提は3つ——福祉用具貸与・特定福祉用具販売の指定があるか、自宅が営業エリアに入っているか、必要な品目を扱っているか。介護ようひんさーちでは、この3条件(住所・指定・品目)で事業所を検索できます。

商品の比較段階にいる方

「複数候補の提示」「試用の可否」「全国平均貸与価格との比較」を事業所に求めながら、この記事のステップ5〜6のチェックポイントで確認を進めてください。判断に迷ったら、いつでもケアマネジャーに立ち戻って大丈夫です。

福祉用具は、選び方の手順さえ知っていれば、決して難しいものではありません。困りごとの整理から始めて、専門職と一緒に、一歩ずつ絞り込んでいきましょう。その伴走者となる事業所探しは、介護ようひんさーちがお手伝いします。

なお、急いでいる場合(退院が迫っているなど)は、その旨を最初に伝えれば、手順を並行して進める調整をしてもらえます。期限があることは、隠さず早めに共有しましょう。

FAQ

このガイドのよくある質問

商品を検索する前に、「いつ・どこで・どの動作に困っているか」を2〜3件書き出すことから始めてください。それをケアマネジャー(まだいない場合は地域包括支援センター)に伝えると、福祉用具以外の選択肢も含めた検討が始まります。品目や商品の絞り込みは、福祉用具専門相談員によるアセスメント(体と住環境の確認)を経て、専門職と一緒に進めるのが基本の手順です。
最終的に決めるのは利用者自身です。ただし、体と住環境に合うかの見立ては福祉用具専門相談員の専門領域なので、「専門職が候補を提案し、利用者が比較・試用して決める」という共同作業になります。事業所には機能や価格帯の異なる複数商品の提示が求められているため、1つだけ勧められた場合も「他の候補も見せてください」と遠慮なく求めてかまいません。
事業所や商品によりますが、多くの事業所で試用の相談ができます。「自宅で試してから決められますか」と聞いてみてください。試用では、本人の実際の動作、介助する家族の使い勝手、住環境との相性の3点を確認します。特に購入品目(入浴補助用具や腰掛便座など)はあとから交換できないため、試用や実物確認をしてから決めることを強くおすすめします。
貸与(レンタル)なら、調整や機種変更を事業所に相談できます。定期的なモニタリングの仕組みもあり、体の状態や生活の変化に合わせて交換しながら使い続けられることが貸与の利点です。選び直しは失敗ではなく、自然なプロセスと考えてください。なお、購入した用具には交換の仕組みがないため、購入前の試用と選定がより重要になります。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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