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制度・事業所向け

福祉用具制度のしくみ(介護保険)——貸与・販売・選択制・指定の全体像

Published
作成日: 2026年6月28日
Updated
最終更新日: 2026年7月9日

介護保険の福祉用具制度の全体像を1本で整理。貸与・販売・選択制の3つの利用方法、指定事業所と福祉用具専門相談員、費用と限度額、軽度者への給付制限と例外給付、制度改定の追い方までまとめた総論ガイドです。

01福祉用具制度の全体像——3つの利用方法と4人の登場人物

介護保険の福祉用具制度は、個別の情報を集めるほど複雑に見えますが、骨格はシンプルです。3つの利用方法4人の登場人物で全体をつかみましょう。

3つの利用方法

  1. 福祉用具貸与(レンタル):借りて使う。13種目。制度の基本形。
  2. 特定福祉用具販売(購入):買って使う。肌に触れる6種目が対象。
  3. 選択制(2024年4月〜):一部の品目(固定用スロープ・歩行器・単点杖・多点杖)は貸与か販売かを利用者が選べる。

4人の登場人物

  • 利用者(本人・家族):困りごとを伝え、選択する主体。
  • ケアマネジャー:生活全体の計画(ケアプラン)を立て、費用の枠を管理する。
  • 事業所(福祉用具専門相談員):指定を受けた事業所が、用具の選定・納品・調整・フォローを担う。
  • 市区町村(保険者):認定・給付・手続きの窓口。

介護保険の福祉用具制度の全体像。利用者を中心に、ケアマネジャーがケアプランを作成し、指定事業所の福祉用具専門相談員が用具を選定・提供し、市区町村が認定と給付を行う。利用方法には貸与・販売・選択制の3つがある

この記事は、制度全体を1本で見渡すための総論です。各テーマの詳細は個別のガイドで掘り下げているので、まず全体像をつかんでから、必要なところを深く読む——という使い方をおすすめします。

なお、この制度が「借りる」を基本形にしているのは、状態の変化に合わせて用具を替えながら、自立した生活を支え続けるという思想があるからです。個別のルールで迷ったときは、この思想に立ち返ると「制度がなぜそうなっているか」が見えてきます。

02利用の大前提——認定・ケアプラン・指定事業所

福祉用具を介護保険で使うには、3つの前提条件があります。ここを飛ばすと保険給付が受けられないため、最初に押さえましょう。

(1)要介護・要支援認定を受けていること:市区町村に申請し、認定調査と主治医意見書をもとに、要支援1・2〜要介護1〜5の区分が決まります。この区分は、使える品目や費用の枠に関わってきます。

(2)ケアプランに位置づけられていること:福祉用具は「欲しいから借りる」のではなく、生活課題を解決する手段としてケアプラン(居宅サービス計画等)に組み込まれることで、保険給付の対象になります。だから、最初の相談先はケアマネジャー(まだいない場合は地域包括支援センター)です。

(3)指定を受けた事業所を利用すること:貸与は福祉用具貸与の指定、購入は特定福祉用具販売の指定を受けた事業所からの利用が条件です。2つの指定は別もので、一般の通販などでの購入は原則対象外です。

この3条件から、自然に「正しい順番」が導かれます。まず相談(ケアマネジャー)→計画(ケアプラン)→指定事業所と契約。逆に、先に商品を買ってしまう・契約してしまうのが、もっとも多い失敗パターンです。

指定事業所には、福祉用具専門相談員(2名以上の配置が義務)がいて、体と住環境に合わせた商品の選定、納品時の調整、使い方の説明、利用開始後のモニタリングまでを担います。「用具の専門家が伴走する」ことまで含めて、この制度の価値だと考えてください。

なお、認定をこれから受ける方は、申請中でも相談や情報収集は進められます。

03貸与(レンタル)の仕組み——制度の基本形

福祉用具貸与は、制度の基本形です。対象は、車いす(付属品含む)、特殊寝台(付属品含む)、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト(つり具の部分を除く)、自動排泄処理装置の13種目です。

なぜ「借りる」が基本なのか。要介護の状態は変化していくため、そのときどきの体に合う用具へ交換しながら使い続けられるようにする、というのが制度の考え方です。あわせて、専門相談員による定期的なモニタリング(使用状況の確認)や点検が仕組みに組み込まれており、「借りたあとのフォロー」まで含めたサービスとして設計されています。

費用は、月々のレンタル料に対して所得に応じた1〜3割の自己負担です。貸与費は、訪問介護やデイサービスなど他の在宅サービスと合算して、要介護度ごとの区分支給限度額という月ごとの枠の中で管理されます。

価格の透明性を支える仕組みもあります。2018年10月から、商品ごとの全国平均貸与価格の公表貸与価格の上限設定が行われており、事業所には、平均価格と自事業所の価格をあわせて説明すること、機能や価格帯の異なる複数商品を提示することが求められています。つまり、価格の説明や複数の選択肢は、利用者が当然に受け取れるものです。

退院直後で状態が変わりそうな時期、初めての用具で合うかどうか確かめたい場面では、まず貸与で始めるのが失敗の少ない進め方です。

04販売(購入)の仕組み——肌に触れる品目は買って使う

特定福祉用具販売は、直接肌に触れるなど再利用になじまない品目を対象にした「買う」仕組みです。対象は、腰掛便座(ポータブルトイレ等)、自動排泄処理装置の交換可能部品、排泄予測支援機器、入浴補助用具(入浴用いす・浴槽用手すり等)、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分の6種目です。

費用の流れは貸与と大きく異なります。基本は償還払い——購入時にいったん全額を支払い、市区町村に申請すると、負担割合に応じた保険給付分(7〜9割)が払い戻されます。自治体によっては、最初から自己負担分のみを支払う受領委任払いを使える場合があります。

支給には同一年度内の上限(購入費支給限度基準額)があり、この枠は貸与の区分支給限度額とは別枠で管理されます。

購入ならではの注意点は3つです。

  1. 指定事業所からの購入が条件:一般の通販・ホームセンターでの購入は原則対象外。
  2. 市区町村の手続き確認:購入前の事前申請が必要な自治体があります。順番を間違えると支給されないことがあるため、支払い前の確認が必須です。
  3. 交換ができない:貸与と違い、体に合わなくなっても交換の仕組みはありません。購入前の試用と、専門相談員による選定がいっそう重要になります。

「買う前の確認がすべて」——これが販売の仕組みを一言でまとめたときの実務的な教訓です。

なお、購入品目には貸与のような要介護度による品目制限は基本的にありません。要支援の方でも、指定事業所からの購入で保険給付を受けられます。

05選択制(2024年〜)——貸与と販売を選べる品目

2024年(令和6年)4月の介護報酬改定で、貸与と販売の選択制が導入されました。対象は、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4品目です。

これらは比較的安価で、状態が安定していれば長く使い続けやすい品目です。長期間借り続けると支払い総額が積み上がるため、利用者の負担軽減と制度の持続可能性の観点から、「長く使うなら買う」という選択肢が加わりました。

選択制のポイントは3つあります。

(1)選ぶのは利用者:福祉用具専門相談員やケアマネジャーから、貸与・販売双方のメリットとデメリットの説明を受けたうえで、利用者が決めます。

(2)品目の線引きに注意:車輪付きの「歩行車」や「松葉づえ」は対象外です。同じ品目名でもタイプで扱いが変わるため、商品単位での確認が確実です。

(3)選んだ側の仕組みが適用される:貸与を選べば月々の支払いとモニタリング付き、販売を選べば償還払い・年度内上限で、購入後の定期フォローは基本的にありません。

判断の軸は「どのくらいの期間、同じ用具を使い続けそうか」と「状態が変わる可能性」です。迷ったら、後戻りしやすい貸与から始めて、合うことを確かめてから購入を検討する順番が安全です。

選択制はまだ新しい仕組みで、対象品目や運用は今後の改定で見直される可能性があります。最新情報の確認を忘れずに。

すでに対象品目を借りている方が、途中から購入に切り替える相談も可能です。切り替え時の費用の扱いは事業所とケアマネジャーに確認してください。

06費用の全体像——負担割合と2つの枠

福祉用具の費用は、「負担割合」と「2つの枠」で整理すると混乱しません。

負担割合(1〜3割):介護保険のサービスは、所得に応じて費用の1〜3割を自己負担します。自分の割合は、認定を受けた方に交付される介護保険負担割合証で確認できます。毎年見直されるため、年度替わりの確認も忘れずに。

枠その1:区分支給限度額(貸与に適用):要介護度ごとに決まる月ごとの枠で、福祉用具貸与は訪問介護・デイサービスなどと合算して管理されます。枠内なら1〜3割負担、超えた分は全額自己負担です。枠の残りはケアマネジャーに聞けばすぐわかります。

枠その2:購入費支給限度基準額(販売に適用):同一年度内の購入に適用される上限で、貸与の枠とは別枠です。

さらに、住宅改修(工事をともなう手すり設置など)には、これらとも別の上限があります。つまり「貸与の枠・購入の枠・住宅改修の枠」は独立しており、どの枠の話をしているのかを意識するだけで、費用の相談は格段に正確になります。

このサイトの方針として、具体的な金額はあえて記載していません。レンタル料や商品価格は品目・商品・地域で変わり、制度の基準額も改定されるためです。金額の確認は、(1)見積もりの場で商品ごとに、(2)制度の基準は市区町村かケアマネジャーに——この2経路で行うのが、いちばん確実で早い方法です。

なお、介護保険とは別に、自治体独自の高齢者向け用具支給・助成事業を設けている市区町村もあります。「介護保険以外に使える制度はありますか」という質問も、窓口で聞いてみる価値があります。

07軽度者への給付制限と例外給付——「原則」と「例外」

要介護度によって、原則として使えない品目がある——これも制度の重要な柱です。

原則:要支援1・2および要介護1の方(軽度者)は、車いす(付属品含む)、特殊寝台(付属品含む)、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフトが原則として保険給付の対象外です。自動排泄処理装置(尿のみ吸引するものを除く)は要介護3以下が原則対象外です。

この制限の背景には、「残っている力を奪わない」という自立支援の考え方があります。歩く力がある方が車いすを常用すると、かえって体の機能が落ちる懸念がある——という発想です。

例外:一方で、疾病により状態が変動しやすい場合や、医学的に必要性が認められる場合には、例外給付という正式な仕組みで利用が認められることがあります。判断には医師の意見や市区町村の確認が関わり、運用の詳細は自治体によって異なります。

実務的な教訓はシンプルです。「軽度だから無理」と自己判断で終わらせないこと。困っている実態(いつ・どこで・何ができないか)を具体的にケアマネジャーへ伝えれば、例外給付の検討につながります。

なお、手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえの4種目は、要支援1から誰でも使えます。転倒予防の観点から、軽度のうちにこそ活用したい品目です。また、購入(特定福祉用具販売)には、このような要介護度による品目制限は基本的にありません。

08制度は変わり続ける——情報の追い方と、このサイトの使い方

福祉用具の制度は、固定されたものではありません。介護保険制度は定期的に見直され、実際にこの数年でも、2018年の貸与価格の上限設定、2022年の排泄予測支援機器の追加、2024年の選択制導入と、仕組みは更新され続けています。

だからこそ、情報との付き合い方を最後にまとめます。

一次情報にあたる:制度の正確な内容は、厚生労働省の「福祉用具・住宅改修」のページ、介護サービス情報公表システムなどの公式情報で確認できます。ネット上の古い記事は、改定前の情報のまま残っていることがあります。

「自分の場合」は専門職に聞く:制度の一般論と、あなたのケースへの当てはめは別物です。要介護度・地域・状態によって答えが変わるため、ケアマネジャー・福祉用具専門相談員・市区町村の窓口という「あなたの事情を知る専門職」への確認が、結局いちばん早くて正確です。

時点を意識する:この記事を含む当サイトのガイドは、2024年度改定時点の制度をもとに書かれています。閲覧の時期によっては、最新の改定を確認してください。

制度の全体像がつかめたら、次の一歩は2つです。ひとつは、気になるテーマの個別ガイド(貸与・販売・選択制・費用・軽度者制限など)を読むこと。もうひとつは、実際に相談できる事業所を探すこと。介護ようひんさーちでは、住所・品目・指定の有無から、お住まいの地域の指定事業所を検索できます。制度の知識は、相談の場でこそ活きてきます。

このページ自体も、制度改定にあわせて定期的に見直しています。

FAQ

このガイドのよくある質問

要介護・要支援認定を受けた方が、ケアプランにもとづいて、指定を受けた事業所から福祉用具を利用できる制度です。利用方法は、借りて使う福祉用具貸与(13種目)、買って使う特定福祉用具販売(6種目)、そして2024年4月から一部品目で貸与か販売かを選べる選択制の3つです。費用は所得に応じた1〜3割の自己負担で、貸与は月ごとの区分支給限度額、購入は年度内の上限の範囲で保険給付を受けられます。
まずケアマネジャーに困りごとを相談してください(まだ要介護認定を受けていない方や担当がいない方は、地域包括支援センターか市区町村の介護保険窓口へ)。介護保険で使うには、ケアプランへの位置づけと、指定事業所の利用が前提になるためです。先に商品を購入したり契約したりすると保険給付を受けられないことがあるので、「相談が先、契約が後」の順番を守ることが大切です。
厚生労働省の告示で品目ごとに定められています。状態の変化に合わせて交換しながら使うものは貸与(車いす・特殊寝台・手すりなど13種目)、直接肌に触れて再利用になじまないものは販売(腰掛便座・入浴補助用具など6種目)という考え方です。2024年4月からは、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖・多点杖に限り、貸与と販売を利用者が選べる選択制になりました。
厚生労働省の「福祉用具・住宅改修」のページで制度の最新情報を確認できます。事業所の指定や体制は介護サービス情報公表システムで調べられます。また、ご自身のケースへの当てはめは、ケアマネジャーや市区町村の介護保険窓口に聞くのが確実です。介護保険制度は定期的に改定されるため、古いネット記事ではなく公式情報と専門職への確認を基本にしてください。
品目によります。手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは要支援1から使えます。一方、車いすや特殊寝台などは要支援1・2、要介護1の方は原則対象外ですが、状態によって必要性が認められる場合の例外給付という仕組みがあります。また、購入品目(腰掛便座や入浴補助用具など)には要介護度による品目制限は基本的にありません。あきらめる前にケアマネジャーへ相談してみてください。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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