福祉用具のモニタリング訪問は、目安として少なくとも年2回程度。貸与・販売の選択制対象品目は、使用開始後6か月以内に少なくとも1回という基準が制度上定められています。「専門相談員さんがまた家に来る」という連絡を受けて、何のための訪問なのか分からないまま迎えている方は少なくありません。先に、要点をまとめます。
- 福祉用具貸与では、福祉用具専門相談員が利用状況を確認する「モニタリング」が制度上組み込まれており、少なくとも年2回程度、状態や品目が合っているかを見直す機会になっている
- 2024年度の介護報酬改定で、貸与・販売の選択制対象品目については利用開始後6か月以内に少なくとも1回のモニタリングと記録の交付が義務化された
- モニタリングは「立ち会うだけ」の受け身の場ではなく、使ってみて気づいた不便さを伝える側から動くことで、用具の交換や再調整につながる仕組みになっている
ただし、モニタリングの頻度や進め方は品目や契約内容によって幅があり、後半で「訪問の間隔が空いていて不安なとき」にどうすればよいかも説明します。
モニタリングとは何をする訪問?
福祉用具専門相談員が自宅を訪れ、用具が体の状態や生活動線に合っているかを確認し、記録を残す仕組みです。
福祉用具貸与を契約すると、納品時に一度きりで関わりが終わるわけではありません。全国福祉用具専門相談員協会の解説によれば、福祉用具専門相談員の業務には選定の相談、計画の作成、適合・使用方法の説明とあわせて、「モニタリング・訪問確認」が明確な業務として位置づけられています。訪問では次のようなことを確認します。
- 用具の各部が壊れていないか、消耗品(車いすのタイヤ、歩行器のグリップなど)が摩耗していないか
- 利用者の体格や体力の変化に対して、高さや角度の調整が今も合っているか
- 実際の生活動線(ベッドから車いすへの移乗、トイレまでの経路など)の中で、使い方に無理が出ていないか
- 転倒などのヒヤリハットが起きていないか
これは、貸与という仕組みだからこそ成立している関わり方です。特定福祉用具販売(腰掛便座や入浴補助用具など)についても、利用者からの相談等に応じて使用状況を確認し、必要な場合は使用方法の指導や修理等を行うことが制度上定められています。「貸して終わり」「売って終わり」ではなく、使い始めてからの状態変化を専門職と一緒に追いかけていく前提で設計されています。
モニタリングはどのくらいの頻度で来る?
目安は少なくとも年2回程度で、貸与・販売の選択制対象品目は使用開始後6か月以内に少なくとも1回という基準が制度上追加されています。
2024年度の介護報酬改定では、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖(松葉づえを除く)・多点杖という、貸与と販売のどちらかを選べる「選択制」の対象品目について、福祉用具専門相談員が利用開始後6か月以内に少なくとも1回モニタリングを行い、その結果を記録してケアマネジャーに交付することが義務づけられました(厚生労働省 令和6年度介護報酬改定について)。これは、比較的廉価で購入も選べる品目だからこそ、「買った後に体に合わなくなっていないか」を確認する機会を制度側が用意した、という位置づけです。
選択制対象以外の貸与品目(車いす、特殊寝台、移動用リフトなど)についても、契約時に交付される重要事項説明書や運営規程に、モニタリングの頻度や訪問の目安が明記されています。年2回程度という運用が一般的とされていますが、事業所の方針や利用者の状態によって前後します。実際の頻度は、契約時にもらった書類か、担当のケアマネジャー・福祉用具専門相談員に確認するのが確実です。
お住まいの状況によっては、この訪問間隔が「体の変化に対して長すぎる」と感じられることもあります。次の章で、その場合にどう動けばよいかを説明します。
訪問の間隔が空いていて不安なときはどうする?
次の定期訪問を待たず、状態が変わった時点でケアマネジャーか福祉用具専門相談員に連絡してよい仕組みになっています。
モニタリングは「決まった周期で来るのを待つもの」ではなく、「変化があったときに呼べるもの」でもあります。たとえば次のようなタイミングは、次回訪問を待たずに連絡する理由になります。
- 退院直後で、自宅での動作を試してみたら想定していた使い方と違っていた
- 夏や冬など季節の変わり目で、体力や活動量が急に落ちた
- 要介護認定の区分が変わった、あるいは更新のタイミングが近づいている
- 用具の一部に不具合や異音があり、次の定期訪問まで様子を見るのが不安
福祉用具貸与は、購入と違って状態の変化に応じた交換がしやすい仕組みです。退院直後の準備の進め方については退院してすぐ困らないために福祉用具は入院中からどう準備を始めるかでも触れていますが、退院後しばらくして生活の中で見えてきた不便さこそ、次のモニタリングを待たずに相談する価値があります。
もし本人が用具そのものに気乗りしていない場合でも、モニタリングの機会は「使ってみてどうだったか」を専門職に率直に話せる場でもあります。本人が福祉用具を嫌がっている状況での声かけの進め方は本人が福祉用具を嫌がるとき、家族が焦らずに進めるための考え方と伝え方で詳しく解説しています。
品目によって見直しのポイントは変わる?
車いすや特殊寝台は体格・体力の変化への適合、歩行器や杖は転倒リスクの有無というように、品目ごとに確認の重心が違います。
モニタリングで見る観点は、品目によって次のように変わります。
- 車いす・車いす付属品: 座面や背もたれの角度が体格に合っているか、自走・介助のどちらが中心かによって操作部の調整が必要になっていないか
- 特殊寝台・特殊寝台付属品: 起き上がり・立ち上がりの動作にベッドの高さやサイドレールの位置が合っているか、褥瘡(床ずれ)のリスクが出ていないか
- 歩行器・歩行補助つえ: グリップの高さが体力の変化に合っているか、屋外・屋内どちらの使用が増えたかによって適したタイプが変わっていないか。歩行器は品目のなかでも見直しの機会が多く、具体的なサインの見分け方は歩行器は今のままでいい?交換・見直しのサインと相談のタイミングで詳しく整理しています
- 移動用リフト: つり具のサイズや装着方法に慣れているか、介助する家族の負担が大きくなっていないか
- 床ずれ防止用具・体位変換器: 使用頻度に対してマットレスの硬さや通気性が今の体調に合っているか
いずれも共通しているのは、「納品時にちょうど良かった設定が、数ヶ月後も同じとは限らない」という点です。とくに退院直後に急いで整えた場合、実際の生活の中で使ってみて初めて分かる不便さが出やすく、退院してすぐ困らないために福祉用具は入院中からどう準備を始めるかでも触れているとおり、最初から完璧を目指さず、モニタリングで段階的に調整していく前提で考えると気が楽になります。
モニタリングの前に、家族が準備しておくとよいことは?
使っている場面を短くメモしておくだけで、相談員が状況を把握する時間を大幅に短縮できます。
訪問当日に「特に困っていません」とだけ伝えると、専門相談員も表面的な確認で終わってしまいがちです。事前に次の3点をメモしておくと、限られた訪問時間を具体的な相談に使えます。
- いつ・どの動作のときに不便や不安を感じたか(例: 朝の起き上がり、夜間のトイレ移動)
- 用具の調整(高さ、角度、位置)を最後に変えたのはいつか
- 家族から見て、本人の動きや体力に変化を感じる場面があるか
福祉用具専門相談員は、日常的にその家で過ごしているわけではないため、家族が言語化して伝えることで初めて把握できる情報が多くあります。逆に言えば、こちらから何も伝えなければ、前回訪問時と同じ設定のまま継続という判断になりやすいということでもあります。
モニタリングでよくあるすれ違いは?
「特に問題ありません」で終わらせてしまうと、本当は困っている場面があっても専門相談員に伝わらないまま次の訪問まで数ヶ月空いてしまいます。
実際の訪問でよく起きるすれ違いには、次のようなパターンがあります。
- 訪問時に本人が「大丈夫です」と答えてしまい、家族が普段感じている「動作が遅くなった」「介助がつらくなってきた」といった変化が伝わらない
- 短時間の訪問の中で確認できるのは限られた場面だけのため、夜間や早朝など専門相談員が立ち会えない時間帯の困りごとが漏れる
- 家族の誰か一人だけが対応し、他の家族が気づいていた不便さが共有されないまま訪問が終わる
- 「前回と同じでいいです」と答えることが習慣化し、体力低下など緩やかな変化に本人・家族自身が気づいていない
これらに共通するのは、モニタリングを「相談員が判断してくれる場」として受け身で構えてしまう姿勢です。実際には、家族の側から「いつ・どの場面で」という具体的な情報を持ち込むほど、その訪問の価値が上がります。逆に何も伝えなければ、見た目に大きな不具合がない限り現状維持という判断になりやすい点は覚えておくとよいでしょう。同居していない家族がいる場合、誰が訪問に立ち会い、誰がどの情報を共有するかを事前に決めておくと、こうしたすれ違いを防ぎやすくなります。役割分担の具体的な進め方は遠方に住む家族が福祉用具選びに関わるには?きょうだいでの分担と伝え方で取り上げています。
この記事で持ち帰れること
- 福祉用具貸与にはモニタリングという制度上の見直し機会が組み込まれており、選択制対象品目は使用開始後6か月以内に少なくとも1回という基準がある
- 定期訪問を待たずに、体の状態や生活の変化があった時点でケアマネジャー・福祉用具専門相談員に連絡してよい
- 訪問前に「いつ・どの動作で困ったか」を短くメモしておくと、限られた時間で具体的な相談ができる
福祉用具は、一度決めたら変えられないものではありません。モニタリングという仕組みがあることを知っておくだけで、「合わなくなってきたけれど、言い出していいのか分からない」という迷いが減ります。なお、モニタリング訪問とは別に、用具そのものが故障・不具合を起こしたときの連絡先も確認しておくと安心です。特にお盆休みや年末年始のような長期休業期間の対応については、福祉用具が壊れたら?長期休業中(お盆・年末年始)の連絡先の確認と備えでまとめています。
まずは今週、用具を使っていて少しでも「あれ」と思った場面を一つだけ、日付とともにメモしてみてください。次のモニタリング訪問、あるいはケアマネジャーへの連絡のときに、そのまま伝えるだけで具体的な相談の出発点になります。
事業所ごとにモニタリングの頻度や対応の丁寧さには違いがあります。契約前や見直しのタイミングで、介護ようひんさーちの事業所検索から、営業エリアや取扱い品目、福祉用具貸与・特定福祉用具販売の指定の種類で事業所を絞り込み、直接問い合わせて確認してみてください。モニタリングで相談しても対応が改善しないと感じる場合は、福祉用具の事業所を変えたい。ケアマネに言いにくいときの相談先と切り替えの流れで、変更の進め方を整理しています。
見直し相談に持っていく観察メモ
以下は相談のための記入例です。分からない欄は「未確認」のままで構いません。氏名や詳しい住所などの個人情報は、相談相手と共有方法を確認してから伝えてください。
| 項目 | メモすること | 相談時に確認すること |
|---|---|---|
| 使う場面 | どの用具を、どの場所で、いつ使うか | 本人・家族・支援者で見ている場面が違うことも残す |
| 困ったこと | 使いづらかった操作や置き場所 | 「危ない気がする」だけでなく起きた場面を書く |
| 変化 | 前回の確認から変わった住環境や使い方 | 自己判断で調整せず、専門相談員へ確認する |
| 次の確認 | 担当者、確認日、回答待ちの事項 | 変更・継続・再確認のどれが決まったか分ける |
確認事項の整理には福祉用具レンタルの返却・解約はどこに連絡する?手順と費用精算まとめも使えます。
よくある質問
Q. モニタリングの訪問で追加料金はかかりますか? A. モニタリングは福祉用具貸与・特定福祉用具販売のサービス提供に含まれる業務のため、訪問自体に別途の追加料金は発生しません。詳細は契約している事業所の重要事項説明書でご確認ください。
Q. モニタリングの結果、用具を交換したいと言ったら断られますか? A. 体の状態や生活動線に合わなくなった場合、別の品目やタイプへの交換を相談できます。ケアプラン上の位置づけがあるため、ケアマネジャーとあわせて相談する形になります。
Q. モニタリングの記録はどこに残りますか? A. 福祉用具専門相談員が記録を作成し、ケアマネジャーに交付する仕組みになっています。内容について気になる点があれば、担当のケアマネジャーに確認できます。
Q. 訪問の予定日に都合が悪い場合はどうすればいいですか? A. 事前に事業所へ連絡すれば日程の調整が可能です。訪問自体を省略できるものではないため、都合のよい日への振替を相談してください。

