介護ベッドをレンタルするとき、多くのご家族はベッド本体(背上げ機能や高さ調整)の性能には目が向きますが、実際に体を預けるマットレスの選び方までは意識が回らないことが少なくありません。事業所の担当者に「マットレスはどうしますか」と聞かれて初めて、標準品でいいのか、体圧分散タイプにすべきか迷う、という相談がよくあります。

先に、要点をまとめます。

  • マットレスは特殊寝台とは別の「特殊寝台付属品」という給付区分で、体の状態に応じて硬さや機能を選べる
  • 自分で動ける方は硬め、介助が必要で座位を保てる方はやや硬め、自力で動けない方は体圧分散タイプが基本の目安
  • 床ずれのリスクが高い場合は、特殊寝台付属品のマットレスとは別に「床ずれ防止用具」という区分の検討も必要になる

マットレス選びを事業所任せにせず、本人の状態に合わせて相談するための考え方を整理します。

介護ベッドのマットレスは、なぜ本体と別に選べるのか?

特殊寝台とマットレスは、介護保険の給付区分ではそれぞれ別の品目として扱われているためです。

福祉用具貸与13種目のうち、電動で背上げ・高さ調整ができる本体部分は「特殊寝台」、その上に敷いて使うマットレスやサイドレールなどは「特殊寝台付属品」という別の区分になっています。本体と付属品を別区分にしているのは、体の状態が変わったときにマットレスだけを交換できるようにするためです。背上げ機能を妨げないよう、特殊寝台付属品のマットレスは折れ曲がる柔軟性を持つ製品に限られますが、素材や硬さにはいくつかの種類があります。

特殊寝台のレンタル自体の確認ポイント(本体の機能や搬入時の注意点など)は特殊寝台(介護ベッド)をレンタルするときの確認ポイントで解説しているので、この記事ではマットレス1品目の選び方に絞って掘り下げます。

マットレスの硬さは、何を基準に選べばいい?

本人がどれだけ自力で体を動かせるかを基準に、大きく3段階で考えるのが基本です。

福祉用具の相談窓口である健康長寿ネットの整理によれば、マットレスの硬さは主に次の3パターンで判断されます(健康長寿ネット「介護保険の福祉用具:特殊寝台付属品(マットレスや手すり等)とは」)。

  • 自力で寝返りや起き上がりができる方:硬めの素材のマットレス。柔らかすぎると体が沈み込み、かえって寝返りや起き上がりの動作がしにくくなるため
  • 介助が必要だが座位は保てる方:硬めでかつ縁もしっかりしたマットレス。ベッド端に座って立ち上がる動作を支えやすくするため
  • 自力でほとんど動けない方:体圧分散効果のある柔らかめのマットレス。同じ部位に体重が集中し続けることを防ぎ、床ずれのリスクを下げるため

つまり「柔らかい=良い」でも「硬い=安全」でもなく、本人が自分の力でどこまで動けるかによって最適な硬さが変わる、という考え方です。福祉用具専門相談員が自宅を訪問してアセスメントを行う際、こうした身体状況を確認したうえで機種を提案してくれるので、事前に「起き上がりや寝返りがどの程度自分でできるか」を家族側でも整理しておくと相談がスムーズです。

床ずれのリスクが高いときは、マットレスだけで対応できる?

マットレスの硬さの調整だけでは不十分な場合があり、別区分の「床ずれ防止用具」を組み合わせて検討する必要があります。

福祉用具貸与13種目には、特殊寝台付属品のマットレスとは別に「床ずれ防止用具」という区分があります。これはエアマットレスのように、送風や圧切替の機能によって体圧をより積極的に分散させる製品で、寝たきりに近い状態や、すでに床ずれ(褥瘡)が生じている、あるいは既往がある方向けの位置づけです。

特殊寝台付属品のマットレスと床ずれ防止用具の対象イメージを、体の動かしやすさの軸で比較する図。自力で動ける場合は特殊寝台付属品の硬めマットレス、寝たきりに近い場合や床ずれリスクが高い場合は床ずれ防止用具の検討域になることを示す

特殊寝台付属品のマットレスと床ずれ防止用具は、同じ「ベッドに敷くもの」でも給付区分が異なるため、事業所によって提案の仕方が変わることがあります。「体圧分散タイプのマットレスを勧められたが、これは特殊寝台付属品なのか床ずれ防止用具なのか」がわかりにくいときは、福祉用具専門相談員に「これは特殊寝台付属品ですか、床ずれ防止用具ですか」と区分を確認しておくと、後から別の用具を追加で検討する際にも整理がしやすくなります。床ずれの既往がある、皮膚が弱い、横になっている時間が長いといった状態がある場合は、マットレスの硬さ調整だけで様子を見ず、早めに床ずれ防止用具の相談も選択肢に入れることをおすすめします。

マットレスを選ぶとき、硬さ以外に確認しておきたい点は?

サイズが本体・シーツと合っているか、お手入れのしやすさ、通気性の3点を合わせて確認しておくと、使い始めてからの困りごとを減らせます。

硬さの目安が決まった後も、次のような実務的な確認点があります。

  • サイズの適合:レンタルする特殊寝台の幅・長さに合ったマットレスか。本体とマットレスを別々に選ぶ場合、サイズが合わないと隙間ができて安全性が下がることがあるため、事業所に本体との組み合わせを確認する
  • お手入れのしやすさ:撥水加工やカバーの洗濯・交換のしやすさ。介護の現場では汗や失禁などで汚れる機会が多いため、日々のケアのしやすさは想像以上に重要になる
  • 通気性:長時間同じ姿勢で過ごす方の場合、蒸れによる肌トラブルを防ぐ観点で通気性も確認しておきたいポイント

これらは製品カタログだけでは判断しづらい部分もあるため、実際に自宅で使う環境(室温、介助者の人数、シーツの洗濯頻度など)を伝えたうえで、福祉用具専門相談員に相談すると具体的な提案を受けやすくなります。

体位変換器とマットレスは、どちらを優先すべき?

どちらか一方を選ぶものではなく、体位変換の頻度や介助者の負担に応じて併用を検討する関係にあります。

福祉用具貸与13種目には、マットレス(特殊寝台付属品)や床ずれ防止用具のほかに「体位変換器」という区分もあります。体位変換器は、寝ている姿勢を横向きなどに保持しやすくするクッション状の用具で、床ずれ予防のために定期的な体位変換(寝返りの介助)を行う際の負担を軽くする目的で使われます。

体圧分散性能の高いマットレスや床ずれ防止用具を使っていても、同じ姿勢が長時間続けば局所への圧力は残るため、定期的な体位変換自体は引き続き必要になります。「体圧分散マットレスを入れたから体位変換はしなくてよい」と考えるのではなく、マットレスは圧力を分散させる役割、体位変換器は体位変換そのものの介助を助ける役割、と分けて考えると整理しやすくなります。夜間の体位変換を家族だけで行うのが負担になっている場合は、福祉用具専門相談員に体位変換器の併用についても相談してみることをおすすめします。

マットレスだけを途中で交換することはできる?

できます。本体とマットレスは別区分のため、身体状況の変化に応じてマットレスだけを交換する相談が可能です。

利用を始めた後、体の状態が変化して「もう少し体圧分散性能の高いマットレスに変えたい」「逆に動きやすさを優先して硬めに戻したい」という相談は珍しくありません。特殊寝台と付属品が別区分になっている制度設計を活かせば、本体はそのままにマットレスだけを交換できます。

福祉用具は原則として月ごとのレンタル契約で、利用開始後も福祉用具専門相談員による定期的なモニタリング訪問があります。モニタリングのタイミングで体の状態の変化を伝えれば、マットレスの見直しにつなげやすくなります。モニタリング訪問の具体的な流れについては福祉用具のモニタリング訪問って何をする?年2回の見直しタイミングを活かすにはで詳しく解説しています。逆に、モニタリングを待たずに状態が急に変化した場合は、次回訪問を待たず担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に早めに連絡することをおすすめします。

要支援・要介護1でも、マットレスだけ借りることはできる?

特殊寝台付属品は特殊寝台と原則セットの扱いのため、要支援・要介護1の方は特殊寝台本体と同様に原則対象外です。

特殊寝台付属品(マットレスを含む)は、特殊寝台と同じく、要支援1・2、要介護1の方(軽度者)については原則として保険給付の対象になりません。特殊寝台の利用が原則対象外である以上、その付属品であるマットレスだけを保険給付で借りることも基本的にはできない、という位置づけです。

ただし特殊寝台と同様に、状態像によっては「例外給付」という仕組みで軽度者でも対象になる場合があります。判断経路の詳しい仕組みは要介護1でも介護ベッドは借りられる?——例外給付の2つの判断経路と相談の進め方で解説しているので、要介護1で特殊寝台とマットレスの利用を検討している場合はあわせて確認してみてください。福祉用具13種目全体の軽度者の扱いを俯瞰したい場合は要支援・要介護1で使える福祉用具と原則対象外の品目ガイドも参考になります。

この記事で持ち帰れること

  • マットレスは特殊寝台と別区分の「特殊寝台付属品」で、本人の動ける程度に応じて硬さを選べること
  • 床ずれリスクが高い場合は、マットレスの硬さ調整だけでなく「床ずれ防止用具」という別区分の検討も必要になること
  • 身体状況が変わったときは、本体はそのままマットレスだけを交換する相談ができること

まずは今日、これまでの生活の中で「起き上がりや寝返りをどこまで自分でできているか」を家族の言葉でメモしておくと、福祉用具専門相談員へのアセスメント相談がスムーズになります。

マットレスの機種や体圧分散タイプの取り扱いは事業所によって差があるため、介護ようひんさーちの事業所検索から、特殊寝台・特殊寝台付属品の取り扱いがある指定事業所を営業エリアで絞り込み、具体的な製品ラインナップを問い合わせてみることをおすすめします。

よくある質問

Q. マットレスと床ずれ防止用具を両方レンタルすることはできますか? A. 区分支給限度額の範囲内であれば、状態に応じて両方を組み合わせて利用することは可能です。具体的な組み合わせと必要性については、福祉用具専門相談員によるアセスメントを踏まえてケアマネジャーと相談してください。

Q. マットレスの交換に追加費用はかかりますか? A. レンタル契約の内容によりますが、身体状況の変化に伴う機種変更は通常のレンタル手続きの範囲で対応されることが一般的です。契約内容や費用の扱いは事業所によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。

Q. 市販のマットレスを介護ベッドに使ってもよいですか? A. 特殊寝台は背上げ・脚上げの角度調整機能があるため、その動きに追従できない市販マットレスを使うと、機能を十分に活かせなかったり、体への負担が増えたりする場合があります。特殊寝台専用の折れ曲がり可能なマットレスを使うことをおすすめします。