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福祉用具を試用(デモ)するときの確認ポイント——3つの視点で失敗を防ぐ

Published
作成日: 2026年7月7日
Updated
最終更新日: 2026年7月9日

福祉用具の試用(デモ)で何を確かめればよいかを解説。試用の頼み方、本人の動作・介助者の使い勝手・住環境との相性という3つの視点、品目別のチェック例、試用後の判断の仕方まで整理した実践ガイドです。

01なぜ「試してから」が鉄則なのか

福祉用具選びには、カタログやスペック表だけではどうしてもわからないことがあります。座ったときのお尻の感覚、ハンドルの握りやすさ、廊下の曲がり角での取り回し——体で確かめるしかない情報が、使い勝手の大部分を占めるからです。

だからこそ、選定の仕上げとして試用(デモ)の価値は絶大です。試用とは、契約や購入を決める前に、実際の商品を使って確かめること。事業所によって、自宅に商品を持ってきてその場で試す、一定期間試しに使ってみる、店舗やショールームで実物を確認する、といった形があります。

試用が特に重要になるのは、次のような場面です。

  • 購入品目を検討しているとき:入浴補助用具や腰掛便座などの購入品は、あとから交換できません。「試してから買う」が唯一の保険です。
  • 初めてその品目を使うとき:歩行器や車いすが初めての方は、「そもそも使いこなせるか」から確かめる必要があります。
  • 選択制で購入を選ぼうとしているとき:2024年から購入も選べるようになった品目(固定用スロープ・歩行器・杖)は、購入前の試用で「本当に長く使えそうか」を見きわめられます。

ただし、試用は「なんとなく使ってみる」だけでは半分しか価値を発揮しません。何を確かめるかを決めて臨むことで、試用は選定の精度を大きく上げる道具になります。この記事では、その確認ポイントを3つの視点に整理して解説します。

「試すなんて申し訳ない」と感じる方もいますが、合わない用具を使い続けるほうが、本人にも事業所にも大きな損失です。試用は双方のための仕組みだと考えてください。

02試用の頼み方——誰に、いつ、どう言うか

まず、試用の機会をどう作るかです。

誰に頼むか:商品の選定を進めている事業所の福祉用具専門相談員に直接頼むのが基本です。ケアマネジャー経由で「試してから決めたいと言っている」と伝えてもらう形でも構いません。

いつ頼むか:商品候補が2〜3に絞れた段階がベストタイミングです。候補が多すぎる段階では試用しきれず、1つに決まった後では比較になりません。

どう言うか:シンプルで大丈夫です。

  • 「契約の前に、自宅で試すことはできますか」
  • 「AとBで迷っています。両方試して比べられますか」
  • 「購入を考えていますが、買う前に実物を確認したいです」

あわせて確認しておくこと

  • 試用の期間と形(その場で試す/数日間使ってみる)
  • 試用にあたっての費用の有無
  • 試用できない場合の代替手段(ショールーム、展示品の確認など)

試用の可否や形は、事業所と商品によって異なります。すべての商品で長期の試用ができるわけではありませんが、「試したい」という希望を伝えること自体は、まったく遠慮のいらない正当な要望です。むしろ、試用の相談に柔軟に応じてくれるかどうかは、事業所の姿勢を見きわめる材料にもなります。

なお、貸与(レンタル)の場合は、契約後も交換の仕組みがあるため「まず借りて確かめる」進め方もできます。一方、購入品目は試用の重要度が段違いに高い——この違いも頭に置いておきましょう。

試用中の破損が心配な方は、「万一のときの扱い」も先に聞いておくと安心して試せます。

03視点1:本人の動作——「困っている、その動作」で試す

試用の確認ポイント、1つ目の視点は本人の実際の動作です。

福祉用具の試用で確認する3つの視点の区分図。本人の動作、介助者の使い勝手、住環境との相性をそれぞれ実際の場面で確かめる

大原則は、「その用具を使う理由になった動作」で試すことです。歩行器を検討した理由が「廊下でのふらつき」なら、実際に廊下を歩く。ベッドを検討した理由が「起き上がりのつらさ」なら、実際に寝て、起き上がってみる。展示場でちょっと触るのと、困りごとの場面で使うのとでは、得られる情報がまるで違います。

確認したいこと

  • できるようになるか:困っていた動作が、用具によって楽に・安全になるか。
  • 操作できるか:ブレーキ、高さ調整、折りたたみ——本人が自分で扱えるか。握力や理解のしやすさも含めて。
  • 体に当たる感覚:座り心地、握りの太さ、痛いところや当たるところはないか。
  • 疲れないか:数分使って、腕や腰に無理な負担を感じないか。

コツは「いつもの服・いつもの靴」で試すことです。よそ行きの格好や、普段履かないスリッパでは、実際の使用感とずれます。また、体調や時間帯で動作が変わる方は、「調子の悪いときにも使えそうか」という視点でも見ておきましょう。その場では言葉にしにくい違和感も、「なんとなく怖い」「しっくりこない」のレベルで構わないので、率直に専門相談員へ伝えてください。その感覚こそ、調整や別候補検討の入口になります。

本人が緊張して普段どおりに動けない場合は、専門相談員に少し席を外してもらい、家族と一緒に落ち着いて試す時間をつくるのもひとつの方法です。

04視点2:介助者の使い勝手——「使う人」は本人だけではない

2つ目の視点は、介助する家族の使い勝手です。福祉用具の多くは、本人と介助者の「2人で使う道具」。本人に合っていても、介助者に合わなければ、日々の生活では機能しません。

介助者が試しておきたいこと

  • 車いす:押しやすさ、ブレーキ操作、折りたたみと車への積み込み、段差の越え方。
  • 特殊寝台:リモコン操作、高さ調整(介助時に腰がつらくない高さにできるか)、シーツ交換のしやすさ。
  • 入浴・排泄用具:介助の姿勢がとれるか、支えやすいか、後片付けや掃除のしやすさ。
  • 移乗関連:本人を支えながら安全に操作できるか。

とくに重要なのは、日常的に一番介助する人が試すことです。試用の場に息子さんが立ち会って「問題ない」と判断しても、日々介助するのが小柄なお母さまなら、その方が試さなければ意味がありません。試用の日程は、主たる介助者が立ち会える日に組みましょう。

また、介助の動作は毎日・何度も繰り返されます。1回なら問題ない操作も、1日5回×365日となると、小さな負担が蓄積します。「これを毎日やるとしたら?」という想像力で試すのがコツです。

介助者の負担軽減は、遠慮して口にしにくいテーマですが、介助者が体を壊せば在宅生活そのものが揺らぎます。「私が使いにくい」という感想は、堂々と選定の材料にしてください。

介助者が複数いる家庭(平日は妻、週末は娘など)では、できれば全員が一度は触っておくのが理想です。難しければ、試した人が操作のコツを動画に撮って共有するだけでも違います。

05視点3:住環境との相性——家の中で、生活の時間で

3つ目の視点は、住環境との相性です。これは自宅での試用でしか確かめられない領域で、「自宅デモ」の価値の核心でもあります。

空間との相性

  • 廊下・ドア・曲がり角を、実際に通れるか。すれ違いや方向転換に無理はないか。
  • 敷居などの段差を越えられるか。
  • 使う場所(寝室・浴室・トイレ)に収まるか。介助スペースは残るか。
  • 使わないときの置き場所はあるか。出し入れは苦にならないか。

生活動線との相性

  • 実際の生活の流れ(寝室→トイレ→リビング)で使ってみて、途中で困る箇所はないか。
  • 他の家具や用具(すでにあるベッドや手すり)との干渉はないか。

時間帯との相性

見落とされがちですが、夜の条件で確かめることも大切です。夜間のトイレ移動のために歩行器を借りるなら、照明を落とした状態での使い勝手、寝起きのぼんやりした状態での操作性が本番の条件です。数日間の試用ができる場合は、必ず夜の場面でも使ってみてください。

住環境の確認は、専門相談員が同席していれば「ここが引っかかりますね。だったらこちらのサイズを」とその場で代案が出ることもあります。自宅試用の際は、気になる場所を遠慮なく全部見てもらいましょう。

なお、数日間の試用ができる場合は、初日の印象と数日後の印象を比べてみてください。初日は緊張でぎこちなくても、慣れれば快適になる用具もあれば、逆に使うほど不便が見えてくる用具もあります。

06品目別・試用チェックの例

3つの視点を、品目別の具体的なチェック項目に落とし込んでみます。試用の場でそのまま使えるリストです。

歩行器・杖

  • 高さは合っているか(調整してもらった状態で歩く)
  • 実際に困っている経路(廊下・玄関・屋外)を歩く
  • 方向転換、段差、狭い場所での取り回し
  • 持ち上げる・押す動作が続けられそうか

車いす

  • 座り心地と姿勢の安定(数分座ってみる)
  • 本人がこぐ場合:ハンドリムの操作、ブレーキ
  • 介助者が押す場合:押しやすさ、たたみやすさ、重さ
  • 家の中の動線とテーブルへの入り込み

特殊寝台(介護ベッド)

  • 背上げ・高さ調整を実際に操作(本人・介助者の両方)
  • 起き上がり・立ち上がり・移乗の一連の動作
  • マットレスの硬さと寝心地

入浴補助用具・腰掛便座(購入品目)

  • 実際の浴室・トイレに置いて寸法を確認
  • 座る・立つ・またぐ動作の安定感
  • 濡れた状態を想定した滑りにくさの確認(安全に配慮しながら)
  • お手入れのしやすさ(外して洗えるかなど)

すべてを完璧に確認しようとしなくて大丈夫です。「困りごとの動作」+「毎日繰り返す操作」の2つを最優先に、残りは気づいた範囲で。チェック結果は、その場で専門相談員と共有しながら進めると効率的です。

チェック中に撮った写真やメモは、家族との共有にも、あとで候補を比較するときの記録にも役立ちます。

07試用のあと——決める・調整する・別候補にする

試用が終わったら、結果を判断につなげます。ありうる着地は3つです。

(1)決める:困りごとの動作が改善し、本人も介助者も無理なく使え、住環境にも収まる——なら、自信を持って決めて大丈夫です。試用で確かめた分、「使い始めてから合わなかった」のリスクは大きく下がっています。

(2)調整して再確認する:「概ね良いが、高さがしっくりこない」「クッションを変えたい」——こうした場合は、調整や付属品の変更で解決できることが多いです。その場で調整してもらい、もう一度試しましょう。

(3)別候補にする:「思ったより重い」「怖くて使えそうにない」——率直にそう伝えて、別の商品や、場合によっては別の品目の検討に戻ります。試用で「合わない」とわかったことは、失敗ではなく成果です。契約後・購入後に気づくより、はるかに良いタイミングで軌道修正できたのですから。

判断に迷ったら、次の3つの問いに戻ってください。

  • 困っていた動作は、楽に・安全になったか?
  • 毎日使う人(本人・介助者)は、無理なく扱えたか?
  • 家の中で、実際の生活の流れで使えたか?

3つとも「はい」なら進める、ひとつでも「いいえ」なら立ち止まる。シンプルですが、これで大きな失敗は防げます。なお、断る場面で気まずさを感じる必要はありません。複数候補の提示も試用も、納得して選んでもらうための正規のプロセスです。

家族間で意見が割れたときは、「本人の実感」と「主たる介助者の実感」を優先する、と決めておくと収拾がつきやすくなります。

08まとめ——試用に強い事業所を選ぶ

試用の確認ポイントを、最後に整理します。

  • 試用は候補が2〜3に絞れた段階で、「契約の前に試せますか」と頼む
  • 確認は3つの視点で:本人の動作(困りごとの動作で試す)、介助者の使い勝手(主たる介助者が試す)、住環境との相性(実際の家・実際の時間帯で)
  • 優先順位は「困りごとの動作」+「毎日繰り返す操作」
  • 結果は3択:決める/調整して再確認/別候補へ。「合わない」とわかるのも成果
  • 購入品目(入浴補助用具・腰掛便座など)と、選択制で購入を選ぶ場合は、試用の重要度が特に高い

そして、この記事の隠れた結論をひとつ。試用にどう応じてくれるかは、事業所選びの優れたリトマス試験紙です。試用や実物確認の相談に柔軟で、確認ポイントを一緒に見てくれて、「合わない」という結論も尊重してくれる——そんな事業所は、契約後のフォロー(調整・モニタリング・交換)も丁寧であることが多いものです。

介護ようひんさーちでは、住所から営業エリアに対応した事業所を絞り込み、品目や指定で比較できます。問い合わせの際に「試用はできますか」と聞いてみてください。その答え方まで含めて、あなたに合う事業所を見つける材料になります。

試用は、時間と手間のかかるプロセスに見えて、実は「合わない用具と暮らす時間」を丸ごと節約してくれる最短ルートです。急いでいるときほど、試用のひと手間を惜しまないでください。

FAQ

このガイドのよくある質問

多くの事業所で試用(デモ)の相談ができます。自宅に商品を持ってきてその場で試す、一定期間試しに使う、ショールームで実物を確認するなど、形は事業所と商品によって異なります。商品候補が2〜3に絞れた段階で、「契約の前に試せますか」と福祉用具専門相談員に頼んでみてください。試用の可否・期間・費用の有無もあわせて確認しましょう。
3つの視点で確認します。(1)本人の動作——その用具を使う理由になった困りごとの動作(廊下を歩く、起き上がるなど)で実際に試す。(2)介助者の使い勝手——日常的に介助する人が、押す・たたむ・操作するを試す。(3)住環境との相性——実際の家の動線・置き場所・段差で使えるか。優先すべきは「困りごとの動作」と「毎日繰り返す操作」の2つです。
もちろんです。試用で「合わない」とわかることは失敗ではなく成果で、契約後や購入後に気づくよりずっと良いタイミングでの軌道修正です。率直に感想を伝えれば、調整や別候補の提案につながります。複数商品の提示も試用も、利用者が納得して選ぶための正規のプロセスなので、気まずさを感じたり、義理で契約したりする必要はまったくありません。
できればおすすめしますが、貸与(レンタル)には契約後も調整・交換の仕組みがあるため、「まず借りて使いながら確かめる」進め方も可能です。一方、購入品目(入浴補助用具・腰掛便座など)と、選択制で購入を選ぶ場合は、あとから交換ができないため、試用や実物確認の重要度が格段に高くなります。購入前こそ「試してから」を徹底してください。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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