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介護ようひんさーち
品目別の選び方

手すり・スロープ・歩行器の選び方——要支援から使える転倒予防の3品目

Published
作成日: 2026年6月28日
Updated
最終更新日: 2026年7月9日

要支援から介護保険で使える手すり・スロープ・歩行器の選び方を解説。それぞれの種類と使いどころ、困りごとから品目を考える方法、2024年からの選択制、住宅改修との使い分け、相談の聞き方まで整理したガイドです。

01転倒を防ぐ3品目——要支援の段階から使える

手すり・スロープ・歩行器(と歩行補助つえ)は、福祉用具貸与の13種目の中でも特別な位置づけの品目です。車いすや介護ベッドが要支援1・2、要介護1の方は原則対象外なのに対して、この3品目(+杖)は要支援1から誰でも介護保険で利用できます

なぜこの品目だけ軽度から使えるのか。それは、これらが転倒を防ぐための用具だからです。要支援〜要介護1の段階は、まだ自分で動ける力が残っている時期です。この時期の転倒・骨折は、入院や活動量の低下を通じて、状態を一気に悪化させるきっかけになりがちです。だからこそ、動ける力があるうちに住環境を整えることに、制度上も大きな意味が認められています。

「まだ介護用品を使うほどでは」と感じる方にこそ、知っておいてほしい事実があります。福祉用具は弱った人のための道具ではなく、いまの力を長く保つための道具でもあるということです。ふらつきや段差のつまずきが増えてきた段階で環境を整えることは、「老い込む」ことではなく、行動範囲と自立を守る前向きな選択です。

この記事では、手すり・スロープ・歩行器それぞれの種類と使いどころ、困りごとから品目を考える方法、2024年から始まった選択制との関係、住宅改修との使い分けまでを整理します。

なお、3品目とも2024年度改定時点の制度にもとづく整理です。制度の詳細は改定で変わることがあるため、最新の内容は厚生労働省や市区町村の公式情報、ケアマネジャーへの確認をおすすめします。

02困りごとから品目を考える——どの動作が不安か

3品目の詳細に入る前に、選び方の出発点を押さえましょう。品目から入るのではなく、どの動作に不安があるかから考えるのが正解への近道です。

困りごとから福祉用具の品目を考える整理図。立ち座りや伝い歩きの不安には手すり、敷居や上がりかまちの段差にはスロープ、歩行のふらつきには歩行器や歩行補助つえが対応する

  • 立ち上がる・座るときにふらつく(ベッドサイド、トイレ、玄関、ソファ)→ 手すりが候補。つかまる場所を作って動作を安定させます。
  • わずかな段差につまずく(敷居、部屋の境目、玄関の上がりかまち)→ スロープが候補。段差そのものをなくします。
  • 歩くこと自体がふらつく・疲れる(廊下の移動、外出)→ 歩行器・歩行補助つえが候補。体重を預けながら歩けます。

実際の生活では、複数の困りごとが重なっていることがほとんどです。「ベッドから起きて(手すり)、廊下を歩いて(歩行器)、敷居をまたいで(スロープ)、トイレで立ち座りする(手すり)」というように、移動の動線に沿って考えると、必要な用具の組み合わせが見えてきます。

この「動線で考える」作業は、福祉用具専門相談員が自宅訪問で一緒にやってくれます。相談の前に、家の中でヒヤッとした場所を2〜3か所メモしておくと、提案の精度がぐっと上がります。

また、同じ「ふらつき」でも、原因や場面によって合う用具は変わります。夜間だけ不安定になる、屋外だけ疲れやすい、といった時間帯・場所の情報も、選定の大事な手がかりになります。

03手すり——工事不要の「置き型」「突っ張り型」が貸与対象

「手すり」と聞くと壁に取り付ける工事をイメージする方が多いのですが、福祉用具貸与の対象になるのは、工事をともなわないタイプです。

主なタイプ

  • 置き型(据置型):床に置いて使う自立式の手すり。ベッドサイド、布団の脇、ソファや玄関の近くなど、つかまる場所を作りたいところに設置します。
  • 突っ張り型:床と天井で突っ張って固定する縦型の手すり。立ち座りやつかまり歩きの支点になります。
  • トイレ用の囲み型:便器を囲むように設置し、トイレでの立ち座りを支えます。

使いどころの例

  • ベッド(布団)からの立ち上がり
  • 玄関の上がりかまちの昇り降り
  • トイレ・脱衣所での立ち座り
  • 廊下の「あと一歩」の伝い歩きの支え

工事不要なので、賃貸住宅でも導入しやすく、身体状況や生活動線が変わったら位置の変更や返却もしやすいのが利点です。

注意点としては、設置場所の床の状態と、正しい位置の見きわめが大切です。力のかかる用具なので、ぐらつく設置は転倒のもとになります。設置と調整は専門相談員に任せ、自分で動かした後に不安定になっていないかも時々確認しましょう。体重のかけ方など「してはいけない使い方」も納品時に確認しておくと安心です。

なお、ベッドでの起き上がり用の手すり(介助バー)は「特殊寝台付属品」という別種目になる場合があります。どの種目に当たるかは商品によるので、目的を伝えて適切なものを提案してもらいましょう。

04スロープ——段差をなくして、つまずきと車いすの通行を助ける

スロープは、段差を斜面に変える用具です。福祉用具貸与では、工事をともなわずに設置できるタイプが対象になります。

主なタイプ

  • 固定用スロープ:敷居や上がりかまちなど、決まった場所に据え付けて使うタイプ。頻繁に動かさない前提のものです。
  • 持ち運び型(ポータブル)スロープ:外出時など、必要なときに設置して使うタイプ。車いすでの外出の段差越えなどに使われます。

使いどころの例

  • 部屋の敷居のわずかな段差(つまずき防止)
  • 玄関の上がりかまち(昇り降りの負担軽減、車いすの通行)
  • 掃き出し窓からの庭・ベランダへの出入り

スロープ選びでは、段差の高さと勾配(角度)の関係が重要です。急な勾配は、歩く人にとっても車いすを押す人にとってもかえって危険になることがあります。設置したい場所の段差を専門相談員に実際に見てもらい、適した長さ・タイプを選定してもらいましょう。

また、2024年(令和6年)4月からは、固定用スロープが貸与と販売を選べる選択制の対象になりました。設置場所が決まっていて長く使う見込みが強いなら、購入という選択肢も含めて検討できます(詳しくは後の節で)。

なお、大きな段差や屋外の階段など、スロープでは対応しきれない場合は、住宅改修(工事)や別の用具の検討になります。無理にスロープで解決しようとしないことも、安全のための大事な判断です。

設置後は、スロープの端の見えやすさ(夜間のつまずき防止)や、雨の日の滑りやすさも気にかけておきたいポイントです。気づいたことは専門相談員に伝えて調整してもらいましょう。

05歩行器・歩行補助つえ——「歩く」を支える選択肢

歩くことそのものに不安が出てきたら、歩行器・歩行補助つえの出番です。支える力の大きい順に、ざっくり次のように整理できます。

歩行器の主なタイプ

  • 固定式歩行器:4本の脚で支えるフレームを、持ち上げて前に置きながら歩くタイプ。支える力が大きい分、使うには腕の力とバランスが必要です。
  • 交互式歩行器:フレームの左右を交互に動かして進むタイプ。
  • 歩行車:車輪付きで、押しながら歩くタイプ。屋外の移動や買い物にも使われます。ブレーキ操作の理解が必要です。

歩行補助つえの主なタイプ

  • 多点杖:杖先が3〜4点に分かれ、1本杖より安定します。
  • ロフストランドクラッチなど:腕で支える構造の杖。
  • ※一般的な1本杖(T字杖)は、介護保険の貸与対象には含まれていません。

どれが合うかは、バランスの状態、腕の力、使う場所(屋内か屋外か)、認知機能(ブレーキ操作の理解など)で変わります。「支えが強い=良い」ではないのがポイントで、必要以上に支える用具は、かえって歩く力を使う機会を減らすことがあります。リハビリ職の意見も参考にしながら、専門相談員と「いまの力に合う支え」を選びましょう。

なお、同じ「歩行器」という名前でも、車輪の有無で制度上の扱い(選択制の対象かどうか)が変わります。この点は次の節で説明します。

外出用と屋内用で使い分ける(屋内は固定式、外出は歩行車など)ケースもよくあります。生活の場面ごとに「どこで・何のために歩くか」を伝えると、組み合わせの提案が受けられます。

062024年からの選択制——この3品目との関係

2024年(令和6年)4月から、貸与と販売のどちらを利用するかを選べる選択制が始まりました。対象は、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖——つまり、この記事で扱っている品目群のうち一部が該当します。

選択制の対象になるもの・ならないもの

  • 固定用スロープ → 対象(持ち運び型は対象外の場合あり)
  • 歩行器のうち固定式・交互式(脚部がすべて杖先ゴム等)→ 対象
  • 歩行車(車輪付き)→ 対象外(従来どおり貸与のみ)
  • 多点杖・単点杖(松葉づえを除く)→ 対象
  • 手すり → 対象外(従来どおり貸与のみ)

判断の考え方はシンプルです。状態が安定していて長く使い続ける見込みが強いなら購入がなじむ場合があり、状態の変化や「合うかどうか」が不確かなら貸与が安心です。とくに初めて使う用具は、まず貸与で試して、合うことを確かめてから購入を検討する順番が失敗しにくい進め方です。

選択制の品目では、福祉用具専門相談員から貸与・販売双方のメリットとデメリットの説明を受けたうえで選ぶことになっています。「私の場合、どちらが合いそうですか」「両方の見積もりを見せてください」と遠慮なく求めてください。

なお、商品名だけでは選択制の対象かどうか判別しにくいため、具体的な商品ごとに「これは選択制の対象ですか」と確認するのが確実です。

選択制の詳しい仕組みや判断の考え方は、別のガイドでも掘り下げています。あわせて参考にしてください。

07住宅改修との使い分け——工事する?しない?

手すりとスロープには、福祉用具(工事なし)とは別に、住宅改修(工事あり)という選択肢もあります。介護保険の住宅改修費の支給対象には、手すりの取り付けや段差の解消が含まれており、こちらは貸与の限度額とは別枠の上限で管理されます。

使い分けの考え方

  • 福祉用具(貸与)が向く場合:状態が変わる可能性があり、位置の変更や返却の柔軟さを残したい。賃貸住宅で工事が難しい。すぐに使い始めたい。
  • 住宅改修(工事)が向く場合:設置場所が固定的で、長期間使う見込みが強い。廊下や階段など、置き型ではカバーしにくい場所に手すりが必要。

たとえば「トイレの立ち座り」は置き型手すりでも工事の手すりでも対応できますが、「階段の昇り降り」は工事による手すり設置が基本になります。どちらが合うかは住環境と状態の見通し次第なので、両方の選択肢を知っている専門職(ケアマネジャー・福祉用具専門相談員)に現場を見てもらって判断するのがおすすめです。

住宅改修を使う場合は、工事前の事前申請が必要になるなど、手続きの流れが福祉用具と異なります。「工事してしまってから申請が通らなかった」を防ぐため、必ず着工前にケアマネジャーや市区町村に相談してください。

福祉用具と住宅改修は、対立する選択肢ではなく組み合わせるものです。「玄関は工事の手すり、寝室は置き型」といった合わせ技も、動線全体を見て設計してもらいましょう。

08相談・事業所探しの進め方と聞き方の例

最後に、この3品目を検討するときの実践的な進め方をまとめます。

相談前の準備

  • 家の中でヒヤッとした場所・動作を2〜3件メモする(いつ・どこで・何をしていて)
  • 要介護度(認定済みなら)と、いま使っているサービスを整理する

誰に相談するか

  • 認定済みの方:ケアマネジャーへ。「転倒が心配な場所がある」と伝えれば、福祉用具・住宅改修を含めた検討が始まります。
  • 未認定の方:地域包括支援センターへ。認定申請を含めた選択肢を整理してもらえます。

事業所への聞き方の例

  • 「要支援2の母が、玄関の上がりかまちで何度かつまずいています。手すりとスロープ、どちらが合うか見てもらえますか」
  • 「歩行器を検討しています。選択制の対象になる商品ですか。貸与と購入それぞれの説明をお願いします」
  • 「自宅で試してから決められますか」

事業所選びの視点

  • 福祉用具貸与(購入も検討するなら販売も)の指定があるか
  • 自宅が営業エリアに入っているか
  • 手すり・スロープ・歩行器の取扱いの幅と、住環境を見たうえでの提案力

介護ようひんさーちでは、住所から営業エリアに対応した事業所を絞り込み、品目の取扱いと指定の有無で比較できます。転倒の不安は、環境を整えることで小さくできます。「まだ早いかな」と感じているいまが、実はいちばん良い相談のタイミングです。

転倒予防の用具は、導入して終わりではありません。使い始めて数週間の「実際どうか」を専門相談員に伝えることで、位置の微調整や機種の見直しができ、効果がぐっと安定します。

FAQ

このガイドのよくある質問

借りられます。手すり(工事をともなわない置き型など)、スロープ、歩行器、歩行補助つえの4種目は、要支援1から介護保険で利用できる品目です。車いすや介護ベッドのような軽度者への原則制限はありません。転倒予防の観点から、動ける力が残っている時期にこそ環境を整える意味が大きい品目なので、ふらつきやつまずきが気になり始めたら早めにケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみてください。
工事をともなう手すりの取り付けは、福祉用具貸与ではなく住宅改修の対象になります。貸与の対象は、置き型や突っ張り型など工事不要のタイプです。住宅改修は貸与とは別枠の上限で管理され、工事前の事前申請が必要になるなど手続きも異なります。どちらが合うかは設置場所と状態の見通しによるため、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に現場を見てもらって判断するのがおすすめです。
歩行器は持ち上げて(または左右交互に)動かすタイプ、歩行車は車輪付きで押して歩くタイプで、どちらも介護保険の貸与対象です。ただし2024年からの選択制(購入も選べる仕組み)の対象は歩行器のみで、歩行車は対象外です。一方、買い物カートに近いシルバーカーは介護保険の対象外です。見た目が似ていて紛らわしいため、具体的な商品ごとに事業所へ確認してください。
一般的な1本杖(T字杖)は、介護保険の貸与対象に含まれていません。貸与の対象になる歩行補助つえは、多点杖やロフストランドクラッチなど、より支持性の高いタイプです。多点杖と単点杖(松葉づえを除く)は2024年から選択制の対象にもなり、購入も選べます。どのタイプの杖が合うかは体の状態によるため、福祉用具専門相談員に相談してみてください。
借りられます。実際、移動の動線に沿って複数の品目を組み合わせるのは一般的な使い方です。たとえば寝室に置き型手すり、敷居にスロープ、廊下の移動に歩行器という組み合わせです。費用は他の介護サービスと合算して区分支給限度額の枠内で管理されるため、組み合わせる場合は枠との関係をケアマネジャーに確認しながら、優先度の高いものから導入していくとよいでしょう。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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