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2024年4月からの福祉用具の選択制とは——対象4品目と選び方の注意点

Published
作成日: 2026年6月28日
Updated
最終更新日: 2026年7月9日

2024年4月に始まった福祉用具の貸与・販売の選択制を解説。対象4品目(固定用スロープ・歩行器・単点杖・多点杖)の線引き、導入の背景、貸与と販売それぞれを選んだ場合の違い、選ぶ前の確認ポイントを整理しました。

01選択制とは——2024年4月から何が変わったのか

2024年(令和6年)4月の介護報酬改定で、福祉用具の使い方に新しい仕組みが加わりました。それが貸与と販売の選択制です。

それまで、介護保険の福祉用具は品目ごとに「借りるもの(福祉用具貸与)」か「買うもの(特定福祉用具販売)」のどちらかに固定されていました。歩行器や杖は貸与の対象だったため、何年使い続けても月々のレンタル料を払い続ける形しかありませんでした。

選択制の導入により、一部の品目に限って、貸与と販売のどちらを利用するかを利用者が選べるようになりました。対象は、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4品目です。

「選べる」というのがポイントです。販売に一本化されたわけではなく、これまでどおり借りることもできますし、買うこともできる。どちらが合うかは、使う期間の見込みや状態の変化の可能性によって人それぞれなので、福祉用具専門相談員やケアマネジャーから両方の説明を受けたうえで、利用者自身が決める仕組みになっています。

この記事では、対象品目の正確な線引き、導入の背景、貸与・販売それぞれを選んだ場合に何が違うのか、そして選ぶ前に確認しておきたいことを順番に整理します。杖や歩行器を使い始めようとしている方、いま借りていて「買ったほうがいいのかな」と迷っている方は、判断の材料にしてください。

なお、選択制は「これから使い始める人」だけの仕組みではありません。すでに対象品目を借りている方が、途中から購入へ切り替えることも相談できます。いま歩行器や杖をレンタル中の方にも関係のある制度です。

02対象4品目の正確な線引き——「歩行車」と「松葉づえ」は対象外

選択制の対象品目は、名前だけで判断すると間違えやすいため、線引きを正確に押さえましょう。

2024年4月からの選択制の対象品目と対象外の整理図。固定用スロープ、歩行器のうち固定式・交互式、単点杖、多点杖は対象。車輪付きの歩行車、松葉づえ、持ち運ぶタイプのスロープは対象外

対象になるもの

  • 固定用スロープ:玄関の上がりかまちなど、設置したら頻繁には動かさないスロープ。
  • 歩行器(歩行車を除く):脚部の先がすべて杖先ゴムなどになっていて、持ち上げて(または左右交互に)動かして使うタイプ。
  • 単点杖(松葉づえを除く):カナディアンクラッチ、ロフストランドクラッチ、プラットホームクラッチなど。
  • 多点杖:杖先が3点・4点などに分かれている杖。

対象にならないもの(従来どおり貸与のみ)

  • 歩行車:車輪やキャスターが付いていて、押して歩くタイプ。見た目が似ていても、車輪の有無で扱いが変わります。
  • 松葉づえ:単点杖の仲間ですが、選択制からは除かれています。
  • 持ち運んで使うスロープ:外出のたびに設置するようなタイプは、固定用に当たらない場合があります。

カタログや店頭では「歩行器」「歩行車」の名称が厳密に使い分けられていないことがあるため、商品単位で「これは選択制の対象ですか」と事業所に確認するのがもっとも確実です。判断に迷う場合は、福祉用具専門相談員がその商品の型式から確認してくれます。

また、選択制で「販売」を選ぶ場合は、その事業所が特定福祉用具販売の指定を受けていることが前提になります。貸与の指定しかない事業所では購入の保険給付が受けられないため、事業所選びの段階から意識しておきましょう。

03なぜ選択制が導入されたのか——背景を知ると判断しやすい

選択制が導入された背景を知っておくと、「自分はどちらを選ぶべきか」の判断軸が見えてきます。

対象になった4品目には共通点があります。比較的価格が低く、状態が安定していれば長く使い続けやすい品目だということです。厚生労働省の資料では、これらの品目の平均的な利用月数はおおむね1年前後とされています。つまり、長期間借り続けると、月々のレンタル料の積み重ねが購入価格を上回っていく可能性がある品目なのです。

そこで、利用者の負担を軽減し、介護保険制度を持続可能なものにする観点から、「長く使うなら買う」という選択肢が用意されました。あわせて、福祉用具を適切なタイミングで適切に使い、安全を確保するという狙いも掲げられています。

この背景から、判断の大きな軸が導けます。「どのくらいの期間、同じ用具を使い続けそうか」です。

  • 状態が安定していて、同じ杖・同じスロープを長く使う見込みが強い → 購入がなじむ可能性
  • リハビリや病状によって状態が変わりそう、使う期間が読めない → 交換しやすい貸与が安心

ただし、これはあくまで出発点の考え方です。実際には、点検やメンテナンスの必要性、費用の支払い方の違いも関わってきます。次の2つの節で、貸与を選んだ場合と販売を選んだ場合に何が起きるかを具体的に見ていきましょう。

なお、「平均より長く使いそうだから購入」と機械的に決めるのは早計です。平均利用月数はあくまで全国の傾向であり、ご本人の状態の見通しは主治医やリハビリ職の見立てによって大きく変わります。数字は参考程度にとどめ、専門職との相談で個別に判断してください。

04貸与を選ぶとどうなるか

選択制の品目で貸与(レンタル)を選んだ場合は、従来どおりの貸与の仕組みで利用します。

費用の面では、月々のレンタル料に対して所得に応じた1〜3割を自己負担します。貸与費は他の介護サービスと合算して区分支給限度額の枠内で管理されます。月々の負担は小さい一方、利用が長期になるほど支払い総額は積み上がっていきます。

フォローの面では、貸与の大きな利点がそのまま受けられます。

  • 状態が変わったら交換できる:杖から歩行器へ、歩行器から別の機種へと、心身の状態に合わせて入れ替えられます。
  • 定期的なモニタリング:福祉用具専門相談員が使用状況を確認し、実施時期は福祉用具サービス計画に記載されます。
  • 点検・修理:不具合があれば事業所に連絡して対応してもらえます。

向いているのは、退院直後でリハビリの経過によって歩行の状態が変わりそうな方、初めて歩行器や杖を使うため「本当に合うか」を見極めたい方、転倒歴があり定期的に専門職の目でチェックしてほしい方などです。

また、「まず貸与で試して、状態が安定したら購入を検討する」という段階的な使い方も考えられます。その場合は、いま借りている商品と同等のものを購入できるか、切り替えのタイミングで費用がどうなるかを、事業所に確認しながら進めましょう。

費用の総額が気になる場合は、「この商品を1年借りた場合と購入した場合、支払いはそれぞれどうなりますか」と、期間を区切った比較を見積もりで出してもらうと、具体的に検討できます。

05販売を選ぶとどうなるか

選択制の品目で販売(購入)を選んだ場合は、特定福祉用具販売の仕組みで利用します。

費用の面では、購入時にいったん全額を支払い、市区町村へ申請すると保険給付分(7〜9割)が払い戻される償還払いが基本です。支給は同一年度内の購入費支給限度基準額の範囲内で、貸与の区分支給限度額とは別枠です。月々の支払いはなくなりますが、最初にまとまった支払いが発生します。自治体によっては、自己負担分のみを支払う受領委任払いを使える場合があります。

フォローの面では、貸与との違いをよく理解しておく必要があります。

  • 交換の仕組みがない:購入した用具は自分のものになるため、状態が変わって合わなくなっても、貸与のような交換はできません。
  • モニタリングが基本的にない:定期的な訪問確認は貸与の仕組みです。購入後の点検・修理がどこまで対応してもらえるかは、事業所や商品によって異なります。

だからこそ、購入を選ぶ前に必ず確認したいのが次の3点です。(1)購入後の修理・調整・部品交換はどこに頼めるか、(2)試用(デモ)をしてから決められるか、(3)私の市区町村では購入前の事前申請が必要か。

向いているのは、状態が安定していて長く同じ用具を使う見込みが強い方、すでに貸与で同型の用具を使っていて体に合うことが確認できている方などです。逆に、初めて使う用具をいきなり購入するのは、合わなかったときのリスクが大きい選択だということは知っておいてください。

06選ぶまでの流れ——説明を受けてから決める

選択制の品目を使うことになったら、次のような流れで選択に進みます。

  1. ケアマネジャーに相談する:困りごとと使いたい品目を伝えます。選択制の対象品目であれば、その旨の説明があります。
  2. 福祉用具専門相談員から両方の説明を受ける:選択制では、貸与と販売それぞれのメリット・デメリットについて、専門相談員等から説明を受けたうえで選ぶことになっています。説明が一方に偏っていると感じたら、「貸与の場合と販売の場合、両方の説明をお願いします」と伝えて構いません。
  3. 自分の状況に当てはめて考える:使う期間の見込み、状態変化の可能性、メンテナンスの必要性、支払い方の希望を整理します。
  4. 決めて、手続きへ進む:貸与なら貸与契約、販売なら購入と市区町村への申請手続きに進みます。

ステップ2で確認しておきたい質問をまとめます。

  • 「私の場合、どのくらいの期間使う見込みですか」
  • 「貸与と販売、それぞれの費用と支払いの流れを教えてください」
  • 「購入した場合、修理や調整はどうなりますか」
  • 「あとから貸与に戻したくなったら(またはその逆)、どうなりますか」

即決する必要はありません。「家族と相談してから決めます」と持ち帰り、納得してから返事をするのは、まったく問題のない進め方です。

なお、選択の説明を受けた内容(提示された商品、貸与・販売それぞれの説明、自分が選んだ理由)を簡単にメモしておくと、あとで状態が変わって見直すときの判断材料になります。

07見落としやすい注意点

選択制にまつわる、つまずきやすいポイントをまとめます。

(1)「選択制=どの品目でも選べる」ではない:選べるのは4品目だけです。車いすや特殊寝台は従来どおり貸与のみ、腰掛便座や入浴補助用具は販売のみです。

(2)同じ品目名でもタイプで扱いが違う:車輪付きの歩行車、松葉づえは対象外です。商品単位での確認を忘れずに。

(3)購入後の「やっぱり貸与に戻したい」は簡単ではない:購入した用具の返品・返金は原則できないと考えておきましょう。改めて貸与を利用すること自体は相談できますが、購入費用が戻るわけではありません。迷いがあるうちは貸与で様子を見るほうが、後戻りしやすい選択です。

(4)販売で買った用具のモニタリングはない:転倒リスクが気になる方、独居の方は、定期的に専門職の目が入る貸与の価値を重めに見積もってよいと思います。

(5)制度は変わる可能性がある:選択制は2024年度に始まった仕組みで、対象品目や運用は今後の改定で見直される可能性があります。この記事は2024年度改定時点の整理です。最新の内容は、厚生労働省や市区町村の公式情報、ケアマネジャーへの確認をおすすめします。

どの注意点も、「決める前に確認する」ことでリスクを小さくできます。特に(3)は後戻りできない選択なので、購入に踏み切る前の試用と、専門相談員への相談を省略しないでください。

08相談・事業所探しで確認すること

最後に、選択制の品目を検討するときの実践的な確認リストです。

ケアマネジャーに確認すること

  • 使いたい品目が選択制の対象か
  • 貸与を選んだ場合、区分支給限度額の枠に余裕があるか
  • 販売を選んだ場合、年度内の購入枠との関係はどうか

事業所に確認すること

  • 福祉用具貸与と特定福祉用具販売、両方の指定を受けているか(どちらを選んでも同じ事業所で相談を続けられるため)
  • 検討中の商品が選択制の対象か(型式単位で)
  • 貸与・販売それぞれの見積もり
  • 試用(デモ)の可否
  • 購入した場合の修理・調整・問い合わせ先

聞き方の例としては、「要支援2で、歩行器を検討しています。選択制の対象になる商品で、貸与と販売それぞれの見積もりと説明をお願いできますか」のように、両方の提示を最初から求めるのがおすすめです。比較材料がそろった状態で考えられます。

介護ようひんさーちでは、貸与・販売それぞれの指定の有無を条件に、住所や取扱い品目と組み合わせて事業所を検索できます。選択制の品目を検討する方は、両方の指定がある事業所を探すところから始めると、その後の相談がスムーズです。

迷ったときの最終チェックは3つです。(1)試してから決められるか、(2)購入後のフォローはどうなるか、(3)後戻りできない選択になっていないか。この3つに納得できる答えがそろってから、決めても遅くありません。

FAQ

このガイドのよくある質問

2024年4月時点で、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4品目です。車輪やキャスターが付いた歩行車、松葉づえは対象外で、従来どおり貸与のみです。同じ品目名でもタイプによって扱いが変わるため、具体的な商品が対象かどうかは事業所に型式単位で確認してください。対象品目は今後の制度改定で見直される可能性があります。
一概には言えません。長く同じ用具を使い続ける見込みが強いなら購入がなじむ場合があり、状態が変わる可能性や使う期間の不確実さがあるなら、交換しやすい貸与が安心です。また、貸与には定期的なモニタリングや点検が含まれますが、購入では基本的になくなります。金額面だけでなくフォロー体制の違いも含めて、専門相談員に両方の見積もりと説明を求めて比較しましょう。
選択制の対象品目であれば、購入への切り替えを検討できます。すでに使っていて体に合うことがわかっている場合は、購入判断がしやすい状況といえます。切り替えのタイミングでの費用の扱い、同じ商品を購入できるか、購入後の点検や修理がどうなるかを、担当の福祉用具専門相談員とケアマネジャーに確認しながら進めてください。
購入した用具は自分のものになるため、貸与のような交換・返却の仕組みはなく、原則として買い替えの検討になります。再購入が保険給付の対象になるかには条件があり、市区町村の判断が関わります。こうしたリスクがあるため、状態が変わる可能性がある段階では貸与で様子を見る、購入前に必ず試用する、といった進め方をおすすめします。
福祉用具専門相談員やケアマネジャーから、貸与と販売それぞれのメリット・デメリットの説明を受けたうえで選ぶことになっています。説明が足りないと感じたら、追加の質問や両方の見積もりの提示を遠慮なく求めてください。即決の必要はなく、家族と相談してから決めて問題ありません。制度の詳細は市区町村の介護保険窓口でも確認できます。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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