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介護ようひんさーち
品目別の選び方

移乗ボードを使うときの確認ポイント——滑らせて移る介助を支える用具

Published
作成日: 2026年7月7日
Updated
最終更新日: 2026年7月9日

移乗ボード(スライディングボード)の役割と選び方を解説。介助の負担を軽くする仕組み、使う場面と適性、選定で確認するポイント、安全な使い方の練習、他の移乗用具との違いまで整理したガイドです。

01「持ち上げる」から「滑らせる」へ——移乗の負担を減らす発想

ベッドから車いすへ、車いすから便座へ——移乗(体を一方から他方へ移す動作)は、在宅介護の中でも介助者の身体的負担が大きい場面のひとつです。抱え上げる介助は、腰痛など介助者の体を痛める原因になりやすく、本人にとっても不安や恐怖を感じやすい動作です。

この負担を軽くする選択肢のひとつが、移乗ボード(スライディングボード)です。板状の用具をベッドと車いすの間などに橋渡しするように置き、その上を滑らせて体を移動させます。「持ち上げる」動作を「滑らせる」動作に変えることで、介助者の負担を大きく減らせる可能性があります。

ただし、移乗ボードは誰にでも合う用具ではありません。本人の座位バランスや体幹の力、介助者の技術によって、適性が大きく変わります。使い方を誤ると、かえって転倒やずれ落ちのリスクにつながることもあります。

この記事では、移乗ボードが向く場面、選定で確認するポイント、安全に使うための練習と注意点を解説します。移乗の負担に悩んでいる方は、この用具が選択肢になるかどうか、専門職と一緒に検討する材料にしてください。なお、移乗ボードは福祉用具貸与の対象となる場合があるため、詳細は事業所に確認しましょう。

この用具の名前を初めて聞く方も多いかもしれません。実際にどう使うのか、次の節から順番に見ていきましょう。

専門的に見えるかもしれませんが、要点は「困りごとを具体的に伝え、専門職と一緒に確かめながら進める」というシンプルな姿勢です。

02移乗ボードが向く場面

移乗ボードの利用が検討されるのは、主に次のような場面です。

移乗ボードの使い方を示す図。ベッドと車いすの間に板を橋渡しするように設置し、その上を滑らせて体を移動させる。本人の座位バランスと上肢の力、介助者の技術の両方が適性の条件になる

  • 座位を保つ力はあるが、立ち上がりや歩行が難しい:座ったままの状態で移動できるため、立位が不安定な方に向いています
  • 抱え上げの介助が、介助者にとって身体的な負担になっている:特に、本人の体格が大きい、介助者が小柄・高齢である場合に有効なことがあります
  • ベッドと車いす、車いすと便座など、決まった動線での移乗が多い:移乗ボードは、隣接した2つの座面の間での移動に適しています

適性の確認が必要な理由

移乗ボードを使うには、本人に一定の座位バランス(座った姿勢を保つ力)と、上肢(腕)の力が必要になることが多いです。まったく力が入らない、座位が極端に不安定な場合は、移乗ボードよりも移動用リフトなど別の用具が適していることがあります。

この適性の判断は、福祉用具専門相談員、リハビリ職(理学療法士・作業療法士)が関わる領域です。「移乗が大変で困っている」という状況を、まずケアマネジャーや福祉用具専門相談員に伝えて、移乗ボードが選択肢になるかどうかを評価してもらいましょう。

家族が「移乗のたびにヒヤヒヤする」と感じている場合、それは移乗方法そのものを見直す良いきっかけです。感覚を言葉にして専門職に伝えてみてください。

こうした場面に当てはまるかどうかを、日々の介助の記録として残しておくと、専門職への相談がより具体的になります。

03選定で確認するポイント

移乗ボードを検討する際に、確認しておきたいポイントをまとめます。

サイズと形状

  • 移乗する場所(ベッドと車いすの間、車いすと便座の間など)の高さの差や距離に合った長さか
  • 体格に対して、幅は十分か
  • 表面の滑りやすさ(滑走性)は、本人の体格・肌の状態に合っているか

耐荷重

  • 本人の体重に対して、十分な耐荷重があるか

素材と表面加工

  • 滑りすぎず、かつ抵抗が大きすぎない、適度な滑走性の素材か
  • 皮膚が弱い方の場合、摩擦による皮膚トラブルのリスクにも配慮が必要

併用する道具との相性

  • 車いすのアームサポート(着脱可能なタイプなど)が、ボードの設置と干渉しないか
  • ベッドの高さ調整機能と組み合わせて、高さを揃えられるか

本人・介助者の技術との適合

  • 実際に試してみて、無理なく滑らせる・滑られることができるか

これらは、実際に試用してみないと分からない部分が多くあります。福祉用具専門相談員やリハビリ職の指導のもとで試すことが、正しい選定と安全な導入の鍵になります。

見積もりの際は、複数の商品の比較と、実際に自宅で試せるかを事業所に確認しましょう。移乗の場面は各家庭で異なるため、カタログだけでは判断しきれない部分が多くあります。

迷ったときは、いくつかの候補を並行して試すことで、違いが実感しやすくなります。

判断に迷ったときこそ、専門職の目を頼りましょう。

04安全に使うための練習と注意点

移乗ボードは、正しい使い方を身につけることで初めて安全に活用できる用具です。

導入時の練習

  • 初めて使う際は、必ず福祉用具専門相談員やリハビリ職の指導のもとで練習する
  • 本人と介助者の両方が、正しい体の使い方(重心の移動、ボードへの体重のかけ方)を理解する
  • いきなり本番の移乗で使わず、練習を重ねてから日常に取り入れる

使用時の注意点

  • ボードの安定性を確認する:移乗の前に、ボードがしっかり橋渡しされているか、ずれていないかを確認する
  • 急な動きを避ける:ゆっくりとした動作で移動する
  • 本人への声かけ:次の動作を説明しながら進めることで、本人の不安を減らし、協力動作を引き出しやすくなる
  • 周囲の安全確保:移乗の経路に障害物がないか確認する

リスクが高まる場面

  • 疲労時や体調不良時は、通常よりも力が入りにくく、バランスを崩しやすくなります
  • 慣れてきても、毎回の確認(ボードの位置、ブレーキの確認など)を省略しないことが大切です

車いすのブレーキと安定性

移乗の際は、車いすのブレーキを確実にかけ、車いす自体が動かないようにすることが前提です。フットサポートを上げておく、アームサポートを外せるタイプなら外しておくなど、移乗の妨げになる部分を事前に整えておきましょう。

これらの手順は、一度説明を受けただけで完璧に身につくものではありません。不安があれば、繰り返し専門職に確認・練習を依頼してください。

また、床が滑りやすい・凹凸があるといった環境要因も、移乗の安全性に影響します。移乗を行う場所の床の状態も、あわせて確認しておきましょう。

05他の移乗用具との違い——選択肢を知っておく

移乗の負担を軽くする用具は、移乗ボード以外にもいくつかあります。それぞれの特徴を知っておくと、専門職との相談がしやすくなります。

移動用リフト

吊り具(スリング)を使って、本人の体を機械の力で持ち上げて移動させる用具です。座位バランスや上肢の力が乏しい方、より重度な状態の方に向いています。移乗ボードよりも、本人の身体的な参加が少なくて済む一方、機器の操作や吊り具の装着に手間と技術が必要です。

立ち上がり補助用具

立位をとる力がある程度残っている方向けに、立ち上がりの動作を支える用具です。移乗の方法として、立って回転する「スタンディング移乗」を支えます。

手すり・介助バー

ベッドや車いす周辺に設置し、立ち上がりや移乗の際につかまる支えとして使います。

選び方の目安

  • 座ったまま滑らせて移れる力がある → 移乗ボード
  • 立つ力がある程度ある → 立ち上がり補助用具、手すりとの組み合わせ
  • 座位・立位ともに難しい → 移動用リフト

どの用具が合うかは、本人の身体機能の総合的な評価が必要です。ひとつの用具に固執せず、「移乗が大変」という困りごとを専門職に伝え、複数の選択肢の中から適切なものを提案してもらいましょう。状態の変化に応じて、これらの用具を組み合わせたり、切り替えたりすることも一般的です。

それぞれの用具の実物を見比べたい場合は、複数のカタログを事業所に用意してもらうか、ショールームでの見学を相談してみましょう。

どの用具も、単独で完璧な解決策になるとは限りません。複数を組み合わせる発想も持っておきましょう。

06介助者の負担軽減という視点

移乗ボードの検討では、介助者の身体的負担という視点も忘れてはいけません。

介助者にとっての利点

抱え上げる介助は、腰への負担が特に大きく、慢性的な腰痛や、最悪の場合は介助者自身の負傷につながることがあります。移乗ボードによって「持ち上げる」動作が減れば、介助者の体を守ることにつながります。

それでも残る負担

移乗ボードを使っても、本人を支える、ボードの設置と回収を行う、といった動作は残ります。「魔法のように介助が楽になる」わけではないことは理解しておきましょう。

介助者の体調と技術も評価の対象

選定の際は、本人の身体機能だけでなく、介助者の体格・体力・技術も考慮に入れる必要があります。「本人には合っているが、介助者が扱いきれない」という場合は、他の用具(移動用リフトなど)の検討も視野に入れましょう。

介助者自身の健康管理

移乗介助を日常的に行う方は、自分自身の腰痛予防やボディメカニクス(体の使い方の工夫)についても、専門職からアドバイスを受けることをおすすめします。介助者が体を壊してしまうと、在宅介護の継続そのものが難しくなります。介助者の負担についても、遠慮なくケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。

地域によっては、介助技術の研修や相談会を開催している事業所やケアマネジャーもいます。「介助の仕方を教わりたい」という相談も、遠慮なくしてみてください。

体を守ることは、続けられる介護を支える大切な基盤です。

07使い始めてからの見直し

移乗ボードを導入したあとも、継続的な確認と見直しが大切です。

見直しを考えたいサイン

  • 移乗のたびに不安定さを感じる、うまく滑らない
  • 本人の座位バランスが変化してきた(改善・悪化のどちらも)
  • 介助者の体力・技術に不安が出てきた
  • ボードの表面が劣化してきた(滑走性の低下、ひび割れなど)

モニタリングの活用

福祉用具専門相談員による定期的なモニタリングの機会に、実際の移乗の様子を見てもらい、フィードバックを受けることをおすすめします。使い方が自己流になっていないか、安全に行えているかを、定期的にチェックしてもらいましょう。

状態が変化した場合

本人の身体機能が向上した場合(立ち上がりができるようになったなど)は、より自立度の高い移乗方法へ移行できる可能性があります。逆に、機能が低下した場合は、移動用リフトなど、より支援度の高い用具への切り替えを検討する時期かもしれません。

移乗ボードは、「一度導入したら終わり」ではなく、本人と介助者の状態に合わせて見直していく用具です。小さな違和感でも、我慢せず専門職に相談してください。

家族が「最近、移乗のときに危なっかしい」と感じたら、その気づきをそのまま専門職に伝えてください。専門的な評価につながる大切な情報です。

体は日々変わっていくものです。「先月は問題なかったから」と油断せず、定期的な確認を続けることが安全の土台になります。

08まとめ——専門職の指導のもとで、安全に導入する

移乗ボードについて、要点を整理します。

基本の理解

  • 「持ち上げる」介助を「滑らせる」動作に変え、介助者の負担を軽くする可能性がある用具
  • 本人の座位バランスと上肢の力が、適性を判断する重要な要素

選定のポイント

  • サイズ・形状・耐荷重・滑走性を確認
  • 併用する用具(車いす、ベッド)との相性も検討

安全のために

  • 導入時は専門職の指導のもとで練習する
  • ブレーキの確認、周囲の安全確保など、毎回の手順を省略しない

他の用具との比較

  • 移動用リフト、立ち上がり補助用具、手すりなど、複数の選択肢を知ったうえで選ぶ

介助者の視点も大切に

  • 本人だけでなく、介助者の体格・体力・技術も考慮する
  • 介助者自身の健康管理についても相談する

移乗は、日常的に繰り返される動作だからこそ、無理のない方法を見つけることが、本人と介助者双方の生活の質に直結します。介護ようひんさーちでは、住所から営業エリアに対応した事業所を絞り込み、移乗用具の取扱いで比較できます。「移乗が大変」という困りごとを、ぜひ専門職に相談してみてください。

移乗は毎日繰り返される動作だからこそ、正しい方法を身につけることの価値は大きいものです。焦らず、専門職とともに一歩ずつ進めてください。

介助の質が上がることは、本人の尊厳と介助者の健康、両方を守ることにつながります。

FAQ

このガイドのよくある質問

誰にでも合う用具ではありません。座位バランス(座った姿勢を保つ力)と上肢(腕)の力がある程度必要とされ、これが乏しい場合は移動用リフトなど別の用具が適していることがあります。適性の判断には福祉用具専門相談員やリハビリ職の評価が必要なので、まずケアマネジャーや事業所に「移乗が大変で困っている」と相談し、移乗ボードが選択肢になるか確認してもらいましょう。
正しい使い方を身につけるには練習が必要です。導入時は必ず福祉用具専門相談員やリハビリ職の指導を受け、本人と介助者の両方が正しい体の使い方を理解してから日常的に使うことが大切です。自己流で使うと、かえって転倒やずれ落ちのリスクにつながることがあります。不安があれば、繰り返し専門職に確認・練習を依頼してください。
移乗ボードは、本人が座位を保ち、板の上を滑らせて自力で近い体重移動を行う用具です。一方、移動用リフトは、吊り具を使って機械の力で体を持ち上げて移動させる用具で、座位バランスや上肢の力が乏しい方、より重度な状態の方に向いています。どちらが合うかは身体機能の評価が必要なので、専門職に相談して判断してください。
はい、選定の際には本人の身体機能だけでなく、介助者の体格・体力・技術も考慮すべき要素です。抱え上げの介助は介助者の腰に大きな負担をかけるため、その負担を伝えることは大切な情報になります。「本人には合っているが介助者が扱いきれない」場合は、移動用リフトなど別の用具の検討も視野に入ります。介助者自身の腰痛予防についても、遠慮なく専門職に相談してください。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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