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介護ようひんさーち
品目別の選び方

車いすの選び方と確認ポイント——3つの問いで候補を絞り込む

Published
作成日: 2026年7月7日
Updated
最終更新日: 2026年7月9日

車いす選びを「誰がこぐか」「どこで使うか」「どのくらい座るか」の3つの問いで整理。駆動方式・使う場面・座位時間からの絞り込み方、体格適合の見方、迷いやすい2択の考え方まで、選定の思考法を解説します。

01車いす選びは「3つの問い」で考えると迷わない

車いすは、福祉用具の中でも商品バリエーションが特に豊富な品目です。自走式、介助式、電動、モジュール型、リクライニング——カタログを開くと種類の多さに圧倒され、「結局どれがいいの?」と途方に暮れてしまう方が少なくありません。

この記事では、その迷いを解くための思考の順番をお伝えします。結論から言えば、車いす選びは次の3つの問いに答えることで、候補が自然に絞り込まれていきます。

  1. 誰がこぐ(動かす)のか?——本人か、介助者か、モーターか
  2. どこで使うのか?——屋内か、屋外か、その両方か
  3. どのくらい座るのか?——移動の道具か、長時間を過ごす場所か

この3つは、専門職が選定のときに必ず確認する基本の軸でもあります。つまり、この問いへの答えを自分の言葉で持っておけば、福祉用具専門相談員との相談が一気に具体的になり、提案の精度も上がるのです。

先にお断りしておくと、この記事は「この商品がおすすめ」というランキングではありません。車いすの正解は体格・状態・住環境で変わるため、最終的な選定は専門相談員のアセスメント(体と住環境の確認)と試用を経て行うのが大前提です。この記事の役割は、その相談の場であなたが「自分の希望と条件を語れる」ようになること。それでは、3つの問いを順番に見ていきましょう。

なお、介護保険での借り方・費用・要介護度の条件は、別ガイド「車いすをレンタルするときの確認ポイント」で解説しています。

この記事は「型番を選ぶ」ためのものではなく、「相談で何を言葉にすべきか」を整理するためのものです。読み終えたら、あなたの家族の状況を3つの問いに当てはめてみてください。

02問い1:誰がこぐのか——自走式・介助式・電動の分かれ道

最初の問いは、車いすを動かす主体です。ここで大きく3つに分かれます。

車いす選びの3つの問いによる絞り込み図。誰がこぐのかで自走式・介助式・電動に分かれ、どこで使うのかで屋内用・屋外用の条件が決まり、どのくらい座るのかで標準型からモジュール型、ティルト・リクライニング型までの座り心地の要件が決まる

本人がこぐ → 自走式(自操式)

後輪が大きく、ハンドリム(車輪の外側の輪)を自分の手で回して進みます。「自分で動ける」ことは行動の自由と体の機能維持につながるため、腕の力と体幹の安定がある方なら、まず自走式を検討する価値があります。片手と片足で操作するタイプなど、片まひの方向けの操作方法もあるので、「片方しか使えないから無理」と決めつけずに専門相談員へ相談を。

介助者が押す → 介助式

後輪が小さく、軽量・コンパクトな傾向があります。本人がこぐことがない場合はこちらが基本線。選定の主役は「押す人」になるので、介助者の体格・力・車への積み込みの有無が重要な条件になります。

モーターで動く → 電動車いす

腕の力が弱くても移動の自由を保てる選択肢ですが、操作の判断力と安全確認が前提になります。導入には適性の確認が特に重要で、試用と専門職・主治医への相談を経て慎重に決める品目です。

ここでの答えは「現在の力」だけでなく、「本人がどうしたいか」も大切です。「自分でこぎたい」という意欲は、機能を保つ資源でもあります。意欲と安全のバランスの見きわめこそ、専門職と一緒に考えるポイントです。

なお、電動車いすは要介護度による原則制限(要支援1・2、要介護1は原則対象外)が他の車いすと同じく適用されるほか、操作に不安がある場合は補助的な安全装置を備えた機種もあります。専門相談員に相談してみてください。

03問い2:どこで使うのか——屋内・屋外で条件が変わる

2つ目の問いは、使う場所です。同じ「車いす」でも、屋内と屋外では求められる性能がかなり違います。

屋内中心の場合

家の中で使う車いすの敵は、幅と回転です。廊下やドアを通れるか、トイレや食卓まわりで方向転換できるか——全幅がコンパクトで小回りの利くタイプが候補になります。フットサポート(足置き)が外せる・跳ね上げられるタイプは、立ち座りや食卓への接近がしやすくなります。また、床材(畳・フローリング)との相性や、敷居の段差も確認ポイントです。

屋外中心の場合

外の敵は、段差・坂・距離です。歩道の段差や砂利道への強さ、長い距離を押す介助者の負担、ブレーキの確実さが問われます。空気入りタイヤはクッション性が高い一方で空気管理が必要、ノーパンクタイヤは管理が楽、といったタイヤの違いも屋外では効いてきます。車で外出するなら、折りたたみやすさと重さ(積み込めるか)が現実的な決め手になることも。

両方で使う場合

1台で兼ねるなら、どちらの条件を優先するかの整理が必要です。使用頻度の高い場面に合わせるのが基本ですが、「屋内は歩行器、外出時だけ車いす」というように品目の組み合わせで解決する方が快適なケースもあります。1台にこだわらず、生活全体で考えるのがコツです。

自宅の廊下幅や玄関まわりの寸法は、相談前にメジャーで測っておくと、この問いの答えがぐっと具体的になります。

迷ったら、実際に一週間の生活を思い浮かべて「何回、何分くらい座っているか」を数えてみると、答えが自然と見えてきます。

04問い3:どのくらい座るのか——「移動の道具」か「過ごす場所」か

3つ目の問いは、座っている時間の長さと質です。これは見落とされがちですが、車いす選びの快適さと安全を大きく左右します。

短時間の移動が中心(通院・買い物・室内の移動)

座位が安定していて、移動のときだけ座るなら、標準型の車いすが基本の候補です。この場合の関心は主に操作性とサイズになります。

日中の多くを車いすで過ごす

座っている時間が長いほど、姿勢の保持と体圧の分散が重要になってきます。体に合わせて座面幅・奥行き・アームサポートの高さなどを調整できるモジュール型や、体圧を分散するクッション(車いす付属品として貸与対象)の併用が検討対象に入ってきます。合わない車いすで長時間過ごすと、姿勢の崩れや、お尻・腰への負担につながることがあるためです。

自力で座位を保つのが難しい

背もたれが倒れるリクライニング型や、座面ごと角度が変わるティルト型という選択肢があります。姿勢を変えることで、体への負担を分散しながら座っていられる時間をつくる考え方です。このレベルの選定は、本人の状態評価が特に重要になるため、リハビリ職(理学療法士・作業療法士)の意見も交えて検討するのが理想です。

この問いの答えは、状態の変化とともに変わっていきます。「最近、座っている時間が長くなってきた」は、車いす(またはクッション)を見直すサインだと覚えておいてください。

05体格との適合——専門職が見ているポイントを知っておく

3つの問いでタイプが絞れたら、最後は体格との適合です。ここは専門相談員の領域ですが、何を見てくれているのかを知っておくと、相談と試乗の質が上がります。

  • 座幅:お尻の幅に対して適切か。広すぎると姿勢が崩れやすく、狭すぎると窮屈で圧迫の原因に。
  • 座面の奥行き:深すぎると膝裏が圧迫され、浅すぎると太ももが支えられません。
  • 座面の高さ:足こぎをするなら足裏が床に届く高さか。立ち座りのしやすさにも関わります。
  • 背もたれの高さ:体幹の支えの必要量に応じて。高すぎると腕の動きを妨げることも。
  • アームサポート・フットサポート:肘と足の自然な位置に合っているか。

こうした適合は、実際に座って動いてみないとわかりません。だからこそ試乗(試用)が大切で、確認のポイントは「困りごとの動作で試す」「介助者も一緒に試す」「実際の生活の場で試す」の3つです。

また、体格適合には服装や季節も影響します。冬の厚着では座幅の余裕が変わり、膝掛けの使用はフットサポートまわりの安全に関わります。日常の実際の格好で試乗するのがおすすめです。

最終的な微調整(フットサポートの高さ、ブレーキ位置など)は納品時に行われます。「なんとなく合わない」という感覚を遠慮なく伝えることが、適合の最後の仕上げになります。

試乗の際は、本人がその場で「痛い」「怖い」と言いにくいこともあります。家族が表情やしぐさの変化を観察し、専門相談員に代わりに伝えるのも大切な役割です。

06迷いやすい2択——考え方のヒント

車いす選びで実際によく迷う2択について、考え方のヒントを紹介します。

「軽さ」と「安定感」で迷ったら

軽い車いすは介助者に優しく、車への積み込みも楽。一方で、しっかりした作りの車いすには走行の安定感があります。考えるヒントは使用場面の優先順位です。車での外出が多いなら軽さの価値が上がり、長時間の座位や不整地の走行が多いなら安定感の価値が上がります。「どの場面で一番使うか」に立ち返りましょう。

「本人は自走したい、家族は介助式で十分」で意見が割れたら

これは単なる好みの対立ではなく、「自立の維持」と「安全・現実性」のバランスの問題です。おすすめは、専門職を交えて、本人の力を実際に確認してから決めること。試乗で自走の様子を見れば、感情論ではなく事実で話し合えます。自走式を選びつつ介助用ハンドルで家族も押せるようにする、という折衷もあります。

「今の状態に合わせる」と「先を見据える」で迷ったら

原則は「今」に合わせることです。先回りした過剰な機能は、残っている力を使う機会を減らすことがあります。ただし、状態の変化が医学的に見込まれる場合は、調整幅のあるモジュール型を選ぶなど「変化に対応できる余地」を持たせる考え方があります。主治医やリハビリ職の見立てを、判断材料として共有しましょう。

どの2択も、共通する解き方は「使用場面の事実に立ち返る」と「専門職を交えて確認する」です。

どの2択でも、最終判断を焦らないことが肝心です。試乗を重ね、専門職の見解を複数の角度から聞いてから決めても、まったく遅くありません。

07選定チェックリスト——相談前・試乗時・決定前

ここまでの内容を、実際の選定の流れに沿ったチェックリストにまとめます。

相談前に整理しておくこと

  • [ ] 誰がこぐか(本人/介助者/電動を検討)と、本人の意向
  • [ ] どこで使うか(屋内/屋外/両方)と、主な使用場面
  • [ ] 1日にどのくらい座るか
  • [ ] 廊下・ドア幅、玄関まわりの寸法(メジャーで採寸)
  • [ ] 車への積み込みの有無

試乗のときに確認すること

  • [ ] 困りごとの動作(実際の移動経路)で試す
  • [ ] 介助者も押す・たたむ・積むを試す
  • [ ] 座り心地と姿勢の安定(数分座ってみる)
  • [ ] ブレーキなどの操作が本人・介助者ともにできる

決定前に確認すること

  • [ ] 複数候補を比較したか(機能・価格帯の異なる提案を受けたか)
  • [ ] クッションなど付属品の要否
  • [ ] 全国平均貸与価格との比較説明を受けたか
  • [ ] 納品後の調整・点検・交換の体制

このリストを埋めながら進めれば、「なんとなく勧められたものに決めた」ではなく、「条件に照らして選んだ」という納得感のある選定になります。

そして繰り返しになりますが、車いすは貸与(レンタル)が基本の品目です。体の状態が変われば交換できることを前提に、「今のベスト」を気軽に選び、使いながら育てていく——その気持ちで臨むのが、結局いちばん上手な選び方です。

チェックリストは印刷またはメモにして、相談当日に持参すると、聞き漏らしを防げます。

08まとめ——3つの問いを持って、相談へ

車いすの選び方を、最後に一枚の地図にまとめます。

絞り込みの3つの問い

  1. 誰がこぐ? → 自走式/介助式/電動
  2. どこで使う? → 屋内向けの条件(幅・回転)/屋外向けの条件(段差・距離・積み込み)
  3. どのくらい座る? → 標準型/モジュール型+クッション/ティルト・リクライニング型

そのうえで

  • 体格適合は専門相談員のアセスメントと試乗で確認
  • 迷う2択は「使用場面の事実」と「専門職の確認」で解く
  • 複数候補の比較・試用・納品時の調整という選定プロセスを省略しない

3つの問いへの答えは、そのまま事業所への相談の言葉になります。「母は要介護3で、介助中心、屋内がメイン、日中も長く座って過ごします」——この一文が言えれば、専門相談員は候補をぐっと絞った提案ができます。

相談先を探す段階なら、介護ようひんさーちをご活用ください。住所から営業エリアに対応した事業所を絞り込み、車いすの取扱いと貸与の指定の有無で比較できます。問い合わせの際に、3つの問いへの答えと「試乗したい」の一言を添えれば、良いスタートが切れます。

車いすは、行動範囲——つまり暮らしの広さを決める道具です。じっくり、でも気負わずに、あなたの生活に合う一台を見つけてください。

FAQ

このガイドのよくある質問

3つの問いから考えるのがおすすめです。(1)誰がこぐのか(本人なら自走式、介助者中心なら介助式、腕の力が弱ければ電動も検討)、(2)どこで使うのか(屋内なら幅と小回り、屋外なら段差への強さと積み込みやすさ)、(3)どのくらい座るのか(長時間ならモジュール型やクッションの併用も)。この3つの答えを持って福祉用具専門相談員に相談すると、候補が具体的に絞り込まれていきます。
基本は「本人がこぐ力と意欲があるか」です。腕の力と座位の安定があり、自分で動きたい意欲があるなら自走式を検討する価値があります。自分で動けることは行動の自由と機能維持につながるためです。介助が中心なら、押す人の体格や積み込みの有無を基準に介助式を。片まひの方向けの操作方法もあるため、決めつけずに専門相談員へ相談し、試乗で実際の様子を確認して決めるのが確実です。
座面や姿勢が体に合っていない可能性があります。座っている時間が長い方には、体圧を分散するクッション(車いす付属品として貸与対象)の併用や、体に合わせて調整できるモジュール型への変更などの選択肢があります。我慢して使い続けず、事業所の福祉用具専門相談員に状況を伝えてください。皮膚の状態に心配がある場合は、あわせて看護職や主治医にも相談しましょう。
条件次第です。屋内は幅と小回り、屋外は段差への強さや運びやすさと、求められる性能が異なるため、1台で兼ねる場合はどちらを優先するかの整理が必要です。使用頻度の高い場面に合わせるのが基本ですが、「屋内は歩行器、外出時は車いす」のように品目の組み合わせで解決するほうが快適なこともあります。生活全体を専門相談員に伝えて、最適な形を提案してもらいましょう。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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