要介護1の認定結果を受け取ったとき、多くのご家族がまず驚くのが「介護ベッドは原則レンタルできません」という説明ではないでしょうか。ケアマネジャーとの相談で、起き上がりが不安定になってきたご本人のために特殊寝台(介護ベッド)を検討し始めたのに、要介護度が足りないと言われてしまう。制度の仕組みを知らなければ、「じゃあ諦めるしかないのか」と感じてしまうのも無理はありません。
先に、要点をまとめます。
- 特殊寝台は要介護2以上が原則の対象で、要支援1・2、要介護1の方は原則として貸与の対象外
- ただし「例外給付」という仕組みがあり、状態像によっては要介護1でも借りられる2つの判断経路がある
- 1つ目は要介護認定の基本調査結果から自動的に判断される経路、2つ目は医師の医学的所見とサービス担当者会議による判断の経路
ただし、例外給付は「希望すれば誰でも使える」制度ではなく、あくまで例外的な取り扱いです。この位置づけについては後半で改めて触れます。
要介護1では、なぜ介護ベッドが原則借りられないのか?
要介護1程度の身体状況では、特殊寝台の機能を必要とする場面が想定しにくいと制度上位置づけられているためです。
介護保険の福祉用具貸与には13種目がありますが、そのうち車いす・車いす付属品・特殊寝台・特殊寝台付属品・床ずれ防止用具・体位変換器・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフト・自動排泄処理装置の9種目は、要支援1・2、要介護1の方(あわせて「軽度者」と呼ばれます)については、原則として保険給付の対象になりません。厚生労働省の資料でも、これらの品目は「その状態像からみて使用が想定しにくい」ことを理由に、原則算定できないと整理されています(厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」)。
考え方としては、要介護1程度の身体機能であれば、ベッドの背上げ機能や高さ調整がなくても、通常のベッドや布団で日常生活を送れることが多い、という想定に基づいています。実際には個人差が大きく、要介護度の数字だけでは測れない状態の方も少なくないのですが、制度としては一律にこの原則が適用されます。
福祉用具貸与13種目全体の対象範囲を最初に整理したい場合は、要支援・要介護1で使える福祉用具と原則対象外の品目ガイドで全体像を確認できます。この記事では、そのなかでも特に相談が多い「特殊寝台(介護ベッド)」1品目に絞って、例外給付の判断経路を掘り下げます。
例外給付とは、そもそもどんな仕組み?
原則対象外の品目でも、利用者の状態像から必要性が認められる場合に限り、例外的に保険給付の対象とする仕組みです。
例外給付は、軽度者だから一律に使えないというルールに、状態像に応じた個別の救済ルートを設けたものです。ただし国の通知でも「あくまで例外的措置であるという原則の下に、適切な手順により、利用者の状態像及び福祉用具貸与の必要性を十分に踏まえて行われる必要がある」と明記されており、希望すれば自動的に使えるものではありません(厚生労働省・福祉用具貸与に関する通知)。
多くの自治体が公開している例外給付の案内資料(川崎市、大田区、札幌市など)を見ると、判断のプロセスは概ね共通しており、大きく2つの経路に分かれています。この2経路の考え方を理解しておくと、ケアマネジャーとの相談がぐっと具体的になります。
経路1:基本調査の結果だけで判断される場合とは?
要介護認定調査の「起き上がり」または「寝返り」の項目で「3.できない」と判定されていれば、市町村への申請なしに例外給付の対象になります。
要介護認定を受ける際、認定調査員が自宅や施設を訪問し、心身の状態について複数の項目を調査します。この基本調査のなかに「寝返り」「起き上がり」という項目があり、それぞれ「1.できる」「2.何かにつかまればできる」「3.できない」の3段階で評価されます。
特殊寝台・特殊寝台付属品の例外給付については、次のいずれかに該当する場合、基本調査の結果のみで例外給付の対象と判断できるとされています。
- 日常的に起き上がりが困難な状態(基本調査「起き上がり」が3.できない)
- 日常的に寝返りが困難な状態(基本調査「寝返り」が3.できない)
この経路の利点は、追加の申請手続きや医師の診断書を必要としない点です。要介護認定の結果(認定調査結果票)にすでにこの情報が含まれているため、ケアマネジャーが確認すれば、その場で例外給付の対象かどうかを判断できます。福祉用具専門相談員やケアマネジャーに相談する際は、「認定調査の起き上がり・寝返りの項目がどう判定されているか教えてもらえますか」と尋ねてみると、話が早く進みます。
なお、要介護1の方でも身体状況によっては、認定調査の結果自体が要介護2相当の内容を含みつつ、総合的な要介護度としては1にとどまっているケースがあります。要介護度の数字だけを見て「うちは対象外だ」とご家族だけで判断せず、まずは調査結果の中身を確認してもらうことが大切です。
経路2:基本調査で該当しない場合、どう判断される?
主治医の医学的な所見と、福祉用具専門相談員を含むサービス担当者会議での検討を通じて、市町村が個別に確認する経路に進みます。
基本調査の「起き上がり」「寝返り」がどちらも「3.できない」に該当しない場合でも、それだけで例外給付の可能性がなくなるわけではありません。国の通知では、この場合「サービス担当者会議等で、医師の医学的な所見に基づき、利用者の状態像から見て当該福祉用具貸与が必要である」と判断されれば、例外給付の対象になり得るとされています。
この経路で重要になるのが、主治医から得られる医学的所見です。自治体の資料を見ると、医師の所見には次のような内容が具体的に確認できる必要があるとされています。
- 福祉用具が必要となった具体的な病名・症状
- その福祉用具が必要な具体的な理由と、対象となる品目
「なんとなく体が不安定だから」という抽象的な理由ではなく、病名や症状と結びついた具体的な説明が求められる点がポイントです。この所見をもとに、ケアマネジャーが招集するサービス担当者会議(主治医の意見を踏まえ、ケアマネジャー・福祉用具専門相談員などが参加する場)で、特殊寝台の必要性が検討されます。
会議で必要性が確認できた場合、最終的には市町村に対して確認申請の手続きを行います。自治体によって申請書類の様式や名称(確認依頼(届出)書など)が異なるため、具体的な手続きはケアマネジャーを通じて確認することになります。
経路1と経路2、実際にはどちらが多い?
基本調査の結果だけで判断がつく経路1の方が、手続きの負担は明らかに軽いため、まずは経路1に該当しないかを確認するのが実務上の順番です。
自治体が公開しているフロー図でも、「手順1: 要介護認定の基本調査の結果による判断」を先に行い、該当しない場合に「手順2: 医師の医学的所見等による判断」に進む、という順序で整理されているのが一般的です。経路2は主治医への相談、サービス担当者会議の開催、市町村への確認申請と、関わる人と手続きの数が増えるため、時間も手間もかかります。
そのため、ケアマネジャーに相談する際は、まず「認定調査の起き上がり・寝返りの結果はどうなっていますか」と確認することから始めるのが効率的です。該当していれば、その時点で特殊寝台の利用に向けて具体的な手配(福祉用具専門相談員によるアセスメント、事業所への相談)に進めます。該当していなければ、主治医への相談という次のステップに移ることになります。
(ここで一つ、後半で説明しておきたい点があります。例外給付が認められたとしても、それで手続きがすべて終わるわけではありません。この点は次の見出しで説明します。)
例外給付が認められたら、それで手続きは完了?
いいえ。ケアプランへの位置づけと、福祉用具貸与事業所への相談・アセスメントという通常の手続きが、例外給付の確認とは別に必要です。
例外給付は「特殊寝台を保険給付の対象として借りられるかどうか」を判断する仕組みであり、それ自体が用具の手配を行うものではありません。例外給付の対象と確認できた後は、通常の福祉用具貸与と同じ流れで進みます。
- ケアマネジャーが、特殊寝台の利用をケアプランに位置づける
- 福祉用具貸与事業所を選び、福祉用具専門相談員が自宅を訪問してアセスメントを行う
- 身体状況や住環境に合わせた機種を選定し、納品・使用方法の説明を受ける
- 利用開始後も、福祉用具専門相談員による定期的なモニタリングを受ける
つまり、例外給付の確認は「入口の関門を通過する」という位置づけであり、そこから先の事業所選びや機種選定は、要介護2以上の方が特殊寝台を借りる場合と変わりません。特殊寝台を実際にレンタルする際の確認ポイントは特殊寝台(介護ベッド)をレンタルするときの確認ポイントガイド、利用開始後のモニタリングの流れについては福祉用具のモニタリング訪問って何をする?で詳しく解説しています。
例外給付が認められなかった場合、他に選択肢はある?
あります。全額自費でのレンタル・購入という選択肢と、市販の家庭用ベッドや代替品を検討する選択肢の2つが主に考えられます。
サービス担当者会議やケアマネジャーとの相談の結果、例外給付の対象と認められないこともあります。その場合でも、特殊寝台そのものを諦める必要はありません。
- 全額自費でのレンタル・購入:介護保険の給付を使わず、福祉用具貸与事業所や医療機器レンタル会社から自費でレンタルする、あるいは購入するという方法です。介護保険を使わないため要介護度による制限を受けませんが、費用は全額自己負担になります。要介護認定の結果が出る前の暫定利用と同様に、費用感や契約内容を事前に確認しておくことが大切です。要介護認定の結果待ちの間の福祉用具利用については要介護認定の結果待ちでも福祉用具は使える?でも詳しく解説しています。
- 市販の家庭用ベッド・補助具の検討:背上げ機能付きの家庭用ベッドや、通常のベッドに後付けできる昇降補助具などを、家電量販店や介護用品の通販で購入する方法もあります。介護保険の対象品目としての機能(電動での細かい角度調整、床ずれ防止機能との連動など)は限定的になりますが、選択肢の一つとして検討されることがあります。
いずれの場合も、まずはケアマネジャーや福祉用具専門相談員に、なぜ例外給付が認められなかったのか(基本調査の結果、医師の所見の内容)を確認し、その上でご本人・ご家族にとって現実的な選択肢を一緒に整理していくことをおすすめします。状態が変化すれば、次回の認定調査や更新のタイミングで再度判断が変わる可能性もあります。
例外給付の相談で、実際によくあるつまずきは?
「要介護度が足りないから無理」と早い段階で相談自体を諦めてしまい、基本調査の結果を確認しないまま終わってしまうケースが目立ちます。
例外給付の相談でよく聞かれるつまずき方には、次のようなものがあります。
- ケアマネジャーから「要介護1なので原則対象外です」とだけ伝えられ、例外給付という制度があることを知らないまま諦めてしまった
- 主治医への相談の際、「ベッドが欲しい」という要望だけを伝え、具体的な病名・症状・必要な理由を伝えられず、所見の記載が曖昧になってしまった
- サービス担当者会議の開催を待つ間に時間がかかり、その間の生活の負担をどう乗り切るか(自費レンタルの検討など)を並行して考えていなかった
- 例外給付が認められた後、通常の貸与手続き(アセスメント・機種選定)が別途必要であることを知らず、すぐに使えると思い込んでいた
これらの多くは、「例外給付には2つの判断経路があり、まず基本調査の結果を確認する」という制度の骨格を知っておくだけで防げるつまずきです。ケアマネジャーに相談する際は、「原則対象外ですよね」で終わらせず、「基本調査の起き上がり・寝返りの項目はどう判定されていますか。例外給付に該当する可能性はありますか」と、一歩踏み込んで聞いてみることをおすすめします。
要介護1以外の軽度者(要支援1・2)でも、同じ判断の仕組み?
基本的な考え方は同じです。ただし要介護2・3の方でも、車いすなど一部品目は同様の例外給付の対象になる場合があります。
ここまで要介護1を中心に説明してきましたが、例外給付の2経路(基本調査による判断・医師の所見による判断)という枠組みは、要支援1・2の方にも共通して適用されます。また、品目によっては、要介護2・3の方であっても原則対象外とされ、同様の例外給付の仕組みが適用される場合があります(車いす・車いす付属品など一部品目)。
品目ごとに、どの要介護度から原則対象になるか、例外給付でどこまでカバーされ得るかは異なります。特殊寝台以外の品目(車いす、床ずれ防止用具、移動用リフトなど)について、ご自身やご家族の状態に当てはめて確認したい場合は、要支援・要介護1で使える福祉用具と原則対象外の品目ガイドで品目別の整理を確認してみてください。
この記事で持ち帰れること
- 特殊寝台は要介護2以上が原則対象だが、要介護1でも「例外給付」という仕組みで借りられる可能性があること
- 例外給付には、基本調査の結果だけで判断される経路と、医師の所見とサービス担当者会議による経路の2つがあり、まずは前者に該当しないかを確認するのが実務上の近道であること
- 例外給付が認められても、その後にケアプランへの位置づけやアセスメントなど通常の貸与手続きが必要なこと
「要介護1だから」という一言だけで諦めてしまう前に、まずは今日、担当のケアマネジャーに「認定調査の起き上がり・寝返りの結果を教えてもらえますか」と聞いてみることから始めてみてください。この一言が、例外給付の対象になるかどうかを確認する最初の一歩になります。
該当する可能性がありそうだと分かったら、介護ようひんさーちの事業所検索から、特殊寝台の取り扱いがある福祉用具貸与の指定事業所を営業エリアで絞り込み、例外給付の相談も含めて問い合わせてみることをおすすめします。
よくある質問
Q. 例外給付の申請は利用者本人が行う必要がありますか? A. 経路によって異なります。基本調査の結果による判断であれば申請自体が不要な場合が多く、医師の所見による判断の場合は、ケアマネジャーがサービス担当者会議の開催や市町村への確認手続きを担うのが一般的です。まずは担当のケアマネジャーにご相談ください。
Q. 主治医に相談する際、どのように伝えれば所見を書いてもらいやすいですか? A. 「ベッドが欲しい」という要望だけでなく、具体的にどんな動作(起き上がり・寝返りなど)が困難になっているか、日常生活のどんな場面で困っているかを、できるだけ具体的に伝えることが助けになります。ケアマネジャーに事前に相談し、伝えるポイントを整理しておくとスムーズです。
Q. 例外給付が認められるまで、どのくらい時間がかかりますか? A. 基本調査の結果による判断であれば比較的短期間で確認できますが、医師の所見・サービス担当者会議を経る経路は、それぞれの日程調整によって数週間程度かかることがあります。急を要する場合は、並行して自費レンタルなどの選択肢も相談しておくと安心です。
Q. 一度例外給付が認められなかった場合、再度申請できますか? A. 状態の変化があれば、次回の認定調査や随時の相談を通じて再度判断される可能性があります。体の状態に変化があった際は、その都度ケアマネジャーに相談することをおすすめします。

