メインコンテンツにスキップ
介護ようひんさーち
品目別の選び方

杖の種類と選び方——歩行を支える最初の一本を見つける

Published
作成日: 2026年7月7日
Updated
最終更新日: 2026年7月9日

介護保険で使える杖の種類と選び方を解説。T字杖・多点杖・ロフストランドクラッチなどの違い、貸与対象の範囲、高さと握りの合わせ方、2024年からの選択制との関係、安全に使うための注意点まで整理したガイドです。

01杖選びは「支える力」の見きわめから

歩行に不安が出てきたとき、最初に検討される福祉用具のひとつがです。杖は、種類によって支える力や使い方が大きく異なり、「なんとなく選んだら合わなかった」ということが起こりやすい品目でもあります。

介護保険の歩行補助つえは福祉用具貸与の対象品目に含まれますが、対象になるのは多点杖ロフストランドクラッチなど、一定の支持性を持つタイプです。街のドラッグストアなどでよく見かける一般的なT字杖(1本杖)は、実は介護保険の貸与対象には含まれていません。この違いを知らずに「介護保険で杖を借りたい」と思っていた方は、まずこの点を押さえておきましょう。

また、2024年(令和6年)4月からは、単点杖(松葉づえを除く)と多点杖が、貸与と販売のどちらを選ぶか利用者が決められる選択制の対象になりました。長く使う見込みなら購入も選択肢に入る、という新しい仕組みです。

この記事では、杖の主な種類と特徴、選び方の基本、選択制との関係、安全に使うための注意点を整理します。「歩くときに不安を感じ始めた」という段階の方に、最初の一本を見つけるための材料として読んでいただければと思います。

なお、この記事の内容は2024年度改定時点の制度にもとづいています。制度は今後も見直される可能性があるため、最新の情報は厚生労働省や市区町村の公式情報での確認をおすすめします。

02杖の主な種類——支える力の違いで理解する

杖にはいくつかの種類があり、支える力の大きさで理解すると整理しやすくなります。

杖の種類を支える力の大きさで整理した図。T字杖は軽い支えでバランス補助、多点杖は接地点が複数で安定性が高い、ロフストランドクラッチは前腕で支えるため上肢の力を活かせる、歩行器はさらに大きな支持面積を持つ

T字杖(1本杖)

最も一般的にイメージされる杖で、握りの部分がT字またはL字型をしています。軽い支え、バランスの補助が主な役割です。介護保険の貸与対象には含まれていません(一般の販売品として購入するか、選択制の対象ではないため保険適用外です)。

多点杖(3点杖・4点杖など)

杖先が複数の接地点に分かれており、T字杖より安定性が高いのが特徴です。片足に体重をかけにくい方や、バランスに不安がある方に向いています。介護保険の貸与対象で、2024年からは選択制(購入も可)の対象にもなりました。

ロフストランドクラッチ・カナディアンクラッチ

前腕を固定するカフ(腕を通す輪)が付いたタイプで、握力だけでなく前腕全体で体重を支えられます。握力が弱い方、より支持力が必要な方に向いています。介護保険の貸与対象(単点杖の一種)で、選択制の対象にもなりました。

松葉づえ

脇で支える伝統的なタイプで、選択制の対象からは除かれています(従来どおり貸与のみ)。

どの種類が合うかは、体重をかける力、バランスの状態、使う場面によって変わります。次の節で、具体的な選び方の視点を見ていきましょう。

これらの区分を知っておくと、事業所への相談の際に「どのタイプが自分に合うか」を具体的に質問できるようになります。カタログの名前だけで判断せず、実際の商品を確認しながら進めましょう。

03選び方の基本——高さ・握り・使う場面

杖を選ぶ際に確認したいポイントをまとめます。

高さの合わせ方

杖の高さは、歩行の安定性に直結する重要な要素です。一般的には、腕を自然に下ろした状態で手首の位置(大腿骨の付け根の高さ目安)に杖の握りが来る、または肘が軽く曲がる(およそ20〜30度)程度の高さが目安とされます。ただし、体の状態や姿勢によって適切な高さは変わるため、福祉用具専門相談員やリハビリ職に実際に合わせてもらうことをおすすめします。自己判断での調整は、かえって姿勢の崩れや転倒のリスクにつながることがあります。

握りの形状

握力や手の形に合った握りかどうかも大切です。T字型、オフセット型(握りが少しずれた形)など、握りやすさは商品によって異なります。実際に握ってみて、無理なく力を入れられるかを確認しましょう。

使う場面

屋内中心か、屋外での外出も多いかによって、求められる耐久性や重さが変わります。屋外での使用が多い場合は、雨天時の滑りにくさ(先ゴムの状態)も確認ポイントです。

利き手・使う側

一般的に、痛みや不安のある側の反対の手で杖を持つことが基本とされますが、体の状態によって異なる場合があります。この点も、専門職に確認しながら決めるのが確実です。

これらは、カタログを見るだけでは判断しきれない部分が多くあります。実際に歩いてみて確認することが、失敗しない杖選びの基本です。

また、複数の杖を用途別に使い分ける方もいます。「屋内は軽いT字杖、外出時は安定感のある多点杖」というように、場面に応じた選択も検討してみてください。

迷ったときは、複数の候補を実際に借りて比較してみるのも一つの方法です。介護保険の貸与であれば、いったん借りてから合わないと感じた場合に別の商品へ変更することもできます。

042024年からの選択制——貸与と購入、どちらを選ぶか

2024年(令和6年)4月から、単点杖(松葉づえを除く)多点杖は、貸与と販売のどちらを利用するか選べる選択制の対象になりました。

選択制の考え方

杖は比較的価格が低く、状態が安定していれば長く使い続けやすい品目です。長期間借り続けると、レンタル料の総額が購入価格を上回る可能性があるため、「長く使うなら買う」という選択肢が用意されました。

貸与を選ぶ場合

月々のレンタル料に対して1〜3割の自己負担です。状態が変わりやすい方、初めて杖を使う方は、交換しやすい貸与が安心です。

購入を選ぶ場合

償還払いなど、7〜9割が払い戻される仕組みです。すでに使っていて体に合うことが確認できている方、長く同じ杖を使う見込みが強い方は、購入が向いている場合があります。

選ぶ前に確認すること

  • 「私の場合、どのくらいの期間使う見込みですか」
  • 「貸与と購入、それぞれのメリット・デメリットを教えてください」
  • 「購入した場合、修理や部品(先ゴムなど)の交換はどうなりますか」

選択制の品目では、福祉用具専門相談員から貸与・販売双方の説明を受けたうえで選ぶことになっています。初めて杖を使う場合は、まず貸与で試してから、合うことが確認できたら購入を検討する、という段階的な進め方も選択肢です。

選択制の説明を受けたら、その内容をメモしておくと、あとで家族と相談する際や、状態が変わって見直す際の材料になります。

05安全に使うための注意点

杖を安全に使い続けるために、押さえておきたい注意点をまとめます。

先ゴムの点検

  • 先ゴムは消耗品で、すり減ると滑りやすくなります。斜めに減っていないか、ひび割れがないかを定期的に確認しましょう
  • すり減りに気づいたら、早めに事業所に相談を(自分で市販の交換用ゴムを使う前に、正しい商品か確認することをおすすめします)

高さの再確認

  • 体調や姿勢の変化によって、以前合っていた高さが合わなくなることがあります。「最近つまずきやすい」と感じたら、高さの見直しを専門職に相談してください

使う場面に応じた注意

  • 雨の日や雪道では、滑りやすさが増すため、より慎重な歩行を心がける
  • 段差や階段では、杖の使い方(先に上る・後に下りるなど)を専門職から確認しておく

体調による判断

  • 体調が優れないとき、いつもよりふらつきを感じるときは、無理をせず、必要に応じて他の家族に付き添いを頼む

杖だけに頼らない

  • 杖はあくまで補助であり、過信すると転倒のリスクがかえって高まることがあります。歩行に不安が強い場合は、歩行器など、より支持力の高い品目の検討も視野に入れましょう

定期的なモニタリングの機会を活用し、いまの杖が合っているかを専門職と一緒に確認する習慣をつけることをおすすめします。

夜間や薄暗い場所での歩行は、特に慎重さが求められます。照明の確保や、慣れた経路を選ぶといった工夫もあわせて心がけましょう。

特に、初めて杖を使い始めた直後の数週間は、体が使い方に慣れておらず、思わぬ場面でバランスを崩すことがあります。この時期は特に慎重に、無理のない範囲で行動範囲を広げていきましょう。

06見直しのタイミング

杖も、使いながら状態に応じて見直すことができます。

見直しを考えたいサイン

  • 支えとしての力が足りなくなってきた(より安定性の高いタイプへの変更を検討)
  • 逆に、状態が回復して、より軽い支えで十分になってきた
  • 先ゴムや握りの劣化が目立つようになった
  • 外出の機会が増え、屋外向けの仕様(耐久性など)が必要になった

歩行器への移行を考える場面

杖だけでは支えが足りなくなってきた場合、歩行器への移行も選択肢のひとつです。「杖から歩行器に変えるべきか」という判断は、福祉用具専門相談員やリハビリ職に相談しながら進めましょう。逆に、歩行器から杖へ移行できる場合もあり、いずれも状態の変化に応じた自然な流れです。

リハビリとの連携

杖の使用は、リハビリテーションの成果とも密接に関わります。訪問リハビリや通所リハビリを利用している場合は、リハビリ職からのアドバイスも参考にしながら、杖の種類や使い方を見直していきましょう。

杖は、身近で導入しやすい福祉用具だからこそ、「なんとなく使い続ける」のではなく、定期的に「いまの自分に合っているか」を確認する意識を持つことが大切です。

こうした見直しは、「弱くなった」というマイナスの意味だけでなく、「回復した」というプラスの変化でも起こります。どちらの方向でも、遠慮なく専門職に伝えてください。

迷ったときは一人で抱え込まず、まず相談してみてください。

07介護保険の対象になるかの確認方法

杖選びで特に注意したいのが、「その杖が介護保険の対象になるか」の確認です。

確認のポイント

  • 一般的なT字杖(1本杖)は、介護保険の貸与対象には含まれていません
  • 多点杖、ロフストランドクラッチなど、支持性の高いタイプが貸与(または選択制での購入)の対象です
  • 商品によって、同じ「多点杖」という名称でも、対象になるかどうかは個別に確認が必要な場合があります

確認の進め方

  1. ケアマネジャーに、歩行の困りごとを相談する(自己判断で「T字杖が欲しい」と決めつけず、困りごとから相談を始めるのがおすすめです)
  2. 福祉用具専門相談員のアセスメントを受け、どのタイプの杖が身体機能に合い、かつ保険給付の対象になるかを確認する
  3. 選択制の対象品目であれば、貸与か購入かの説明を受けて選ぶ

保険外の選択肢も知っておく

T字杖など介護保険の対象外の杖が必要な場合は、一般の店舗や通販での購入(全額自己負担)になります。それでも、「どんなタイプが自分に合うか」は、専門職に相談してから選ぶことをおすすめします。杖は種類が多く、見た目だけでは適性が分かりにくい用具だからです。

こうした確認の手間は、最初は面倒に感じるかもしれません。しかし、正しい杖を選ぶことは、その後の転倒予防や生活の安心に直結する、価値のある一手間です。

このひと手間を惜しまないことが、結果的に安心して長く使い続けられる一本につながります。

08まとめ——最初の一本は、専門職と一緒に選ぶ

杖の選び方について、要点を整理します。

種類を知る

  • T字杖(介護保険対象外)、多点杖、ロフストランドクラッチ(いずれも貸与・選択制の対象)、松葉づえ(貸与のみ)

選び方の基本

  • 高さは専門職に合わせてもらう、握りは実際に握って確認、使う場面(屋内・屋外)も考慮する

2024年からの選択制

  • 単点杖・多点杖は貸与と購入を選べる。初めては貸与、慣れたら購入検討という段階的な進め方も

安全のために

  • 先ゴムの定期点検、高さの再確認、体調に応じた判断

見直しの意識

  • 状態の変化に応じて、杖の種類や、歩行器への移行を検討する

杖は身近な福祉用具ですが、種類が多く、適性の見きわめには専門的な視点が必要です。「なんとなく」で選ばず、困りごとをケアマネジャーや福祉用具専門相談員に伝えるところから始めてください。介護ようひんさーちでは、住所から営業エリアに対応した事業所を絞り込み、杖の取扱いで比較できます。歩行の不安を、最初の一歩から一緒に解消していきましょう。

杖という身近な用具だからこそ、正しい知識を持って選ぶことが、日々の安心につながります。困りごとを率直に伝えるところから、最初の一歩を踏み出してみてください。

FAQ

このガイドのよくある質問

一般的なT字杖(1本杖)は、介護保険の貸与対象には含まれていません。貸与の対象になるのは、多点杖やロフストランドクラッチなど、より支持性の高いタイプです。T字杖が必要な場合は、一般の店舗や通販での購入(全額自己負担)になります。どのタイプの杖が自分の状態に合うかは、福祉用具専門相談員に相談してから選ぶことをおすすめします。
腕を自然に下ろした状態での手首の高さ、または肘が軽く曲がる程度が一般的な目安とされますが、体の状態や姿勢によって適切な高さは変わります。自己判断での調整は姿勢の崩れや転倒のリスクにつながることがあるため、福祉用具専門相談員やリハビリ職に実際に合わせてもらうことをおすすめします。体調の変化があれば、高さの見直しも相談してください。
2024年4月からの選択制の対象品目(単点杖・多点杖)は、貸与と購入のどちらかを選べます。状態が変わりやすい方や初めて使う方は、交換しやすい貸与が安心です。すでに使っていて体に合うことが確認できている方、長く使う見込みが強い方は購入が向いていることがあります。まず貸与で試してから購入を検討する、という段階的な進め方も選択肢です。
先ゴムのすり減りは滑りやすさに直結するため、早めの対応が大切です。自分で市販の交換用ゴムを使う前に、正しい商品かどうかを事業所に確認することをおすすめします。貸与品であれば、点検・部品交換の相談ができます。すり減りに気づいたら放置せず、次のモニタリングを待たずに事業所へ連絡し、早めに交換してもらいましょう。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

Related

あわせて読みたいガイド

品目別の選び方

多点杖を選ぶときの確認ポイント——3点杖・4点杖の違いと選び方

多点杖(3点杖・4点杖)を選ぶときの確認ポイントを解説。T字杖との違い、ベースの大きさと安定性の関係、2024年からの選択制との関わり、日常生活での使い方の注意点まで、導入前に整理しておきたい情報をまとめたガイドです。

品目別の選び方

手すり・スロープ・歩行器の選び方——要支援から使える転倒予防の3品目

要支援から介護保険で使える手すり・スロープ・歩行器の選び方を解説。それぞれの種類と使いどころ、困りごとから品目を考える方法、2024年からの選択制、住宅改修との使い分け、相談の聞き方まで整理したガイドです。

レンタルと購入

2024年4月からの福祉用具の選択制とは——対象4品目と選び方の注意点

2024年4月に始まった福祉用具の貸与・販売の選択制を解説。対象4品目(固定用スロープ・歩行器・単点杖・多点杖)の線引き、導入の背景、貸与と販売それぞれを選んだ場合の違い、選ぶ前の確認ポイントを整理しました。

品目別の選び方

立ち上がり補助用具の選び方——「まだ立てる力」を活かす視点

立ち上がり補助用具(スタンディングリフト・立ち上がり補助いすなど)の役割と選び方を解説。適性の見極め、種類と特徴、他の移乗用具との使い分け、安全に使うための注意点まで整理したガイドです。

FREE CONDITION CHECK

ガイドの内容をもとに、確認事項を整理できます

AIコンシェルジュは準備中です。 公開までは、検索での絞り込みと、各事業所ページからの問い合わせをご利用ください。

事業所を探す気になる事業所へ直接問い合わせ