腰掛便座や入浴用いすなど、特定福祉用具販売の対象品目を介護保険で購入しようとしたとき、窓口や事業所から「償還払いになります」「この事業所は受領委任払いが使えます」と説明されて、違いがよく分からないまま話が進んでしまった経験はないでしょうか。どちらも介護保険の給付を受けられる仕組みという点は同じでも、手元から出ていくお金の額とタイミングが大きく変わるため、事前に理解しておくかどうかで購入時の負担感がまったく違ってきます。

先に、要点をまとめます。

  • 償還払いは、購入代金の全額をいったん事業所に支払い、後日市区町村へ申請して7〜9割分の払い戻しを受ける方式
  • 受領委任払いは、購入時に自己負担分(1〜3割)だけを支払えばよく、残りの7〜9割は市区町村から事業所へ直接支払われる方式
  • 受領委任払いはすべての市区町村・すべての事業所で使えるわけではなく、市区町村への登録を受けた事業所から購入した場合に限られる

ただし、受領委任払いが使えるかどうかは、住んでいる市区町村によって対応がはっきり分かれます。この点については後半で具体的に触れます。

償還払いと受領委任払い、何がどう違う?

支払うタイミングと金額が違います。償還払いは全額を立て替えてから7〜9割が戻り、受領委任払いは最初から自己負担分(1〜3割)だけを支払います。

介護保険で特定福祉用具(腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具など)を購入する際、費用の支払い方には大きく2つの方式があります。

償還払いは、購入時に商品代金の全額を事業所へ支払い、その後、市区町村に「福祉用具購入費支給申請書」などの必要書類を提出することで、所得に応じた自己負担分(1〜3割)を除いた7〜9割が本人の口座に払い戻される方式です。介護保険における特定福祉用具購入費の支給は、この償還払いが原則の仕組みとして位置づけられています。

受領委任払いは、これとは逆の順序で費用が動きます。購入時には自己負担分(1〜3割)のみを事業所へ支払い、残りの7〜9割については、本人からの委任に基づいて市区町村から事業所へ直接支払われます。結果として、本人が実際に支払う金額は自己負担分だけで済み、償還払いのように一時的にまとまった金額を立て替える必要がありません。

たとえば10万円の入浴補助用具を購入し、自己負担割合が1割の場合で考えると、償還払いでは購入時に10万円を支払い、後日9万円が戻ってきます。受領委任払いでは、購入時に支払うのは1万円だけで、残りの9万円は市区町村から事業所へ直接支払われます。最終的な自己負担額はどちらも同じですが、購入時に一時的に必要なお金の額が大きく変わる点が、この2つの方式の最大の違いです。

償還払いと受領委任払いの支払いの流れを比較する図。償還払いは購入者が全額を事業所に支払い、後日市区町村から購入者へ払い戻される。受領委任払いは購入者が自己負担分のみを事業所に支払い、残りは市区町村から事業所へ直接支払われる

受領委任払いは誰でも使える?

使えません。市区町村への登録を受けた事業所から購入した場合に限られ、登録がない事業所で購入すると、受領委任払いは選べません。

受領委任払いを利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず前提として、購入する事業所そのものが受領委任払い取扱事業者として市区町村に登録されていることが必要です。この登録は事業所が任意に行うものであり、特定福祉用具販売の指定を受けている事業所であれば自動的に受領委任払いに対応しているとは限りません。「指定は受けているが、受領委任払いの登録はしていない」という事業所も存在します。

さらに、受領委任払いという制度自体を導入していない市区町村もあります。受領委任払いは介護保険法上の全国一律の仕組みではなく、各市区町村が独自に導入・運用している制度です。そのため、次のような組み合わせによって、実際に使えるかどうかが変わってきます。

  • 住んでいる市区町村が受領委任払い制度を導入していて、かつ購入したい事業所も登録を受けている → 受領委任払いが選べる
  • 市区町村が制度を導入していても、事業所が登録を受けていない → その事業所では償還払いのみ
  • 市区町村自体が受領委任払い制度を導入していない → 選択肢はそもそも償還払いのみ

「隣の市区町村では使えたから、うちでも使えるはず」とは限らないため、購入を検討する段階で、まずお住まいの市区町村の介護保険担当窓口に「受領委任払いの制度があるか」を確認し、その上で購入したい事業所が登録事業者かどうかを事業所自身に確認するという2段階の確認が必要です。

受領委任払いが使えるかどうかは、何で決まる?

住んでいる市区町村の制度導入状況と、購入する事業所の登録状況の組み合わせで決まります。事前にどちらも個別に確認する必要があります。

「受領委任払いが使えるかどうか」を左右する要素を整理すると、次の2点に集約されます。

  1. 市区町村側の制度導入: 受領委任払い制度を導入しているかどうかは自治体ごとの判断です。制度の名称も「受領委任払い」のほか、地域によって多少の呼び方の違いがあります。
  2. 事業所側の登録: 制度を導入している市区町村であっても、事業所が個別に登録手続きを行っていなければ、その事業所では受領委任払いを取り扱えません。

この2点はどちらか一方だけでは成立しないため、購入前の確認では両方をセットで押さえておく必要があります。実務上は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に「受領委任払いを使いたいのですが、対応している事業所はありますか」と相談すると、地域の状況に詳しい担当者から具体的な事業所を案内してもらえることが多いです。「制度があるかどうか自分で自治体のホームページを調べるのは大変」と感じる場合は、この相談から始めるのが現実的な進め方です。

受領委任払いを選ぶと、事業所選びの幅は狭まる?

狭まる可能性があります。受領委任払いを希望する場合、登録事業者の中から選ぶことになるため、候補となる事業所の数が償還払いより限られることがあります。

購入したい商品の取り扱いや対応エリアだけで事業所を選べる償還払いと違い、受領委任払いを希望する場合は「登録事業者であること」という条件が一つ加わります。地域によっては登録事業者の数がそれほど多くなく、結果として選べる事業所の幅が狭まることがあります。

ここで一つ考えておきたいのは、一時的な負担軽減と、事業所選びの自由度のどちらを優先するかという視点です。受領委任払いを使えば購入時の出費を抑えられますが、選べる事業所が限られることで、対応や品揃えの面で希望と合わない事業所しか選択肢がない、という状況になる可能性もゼロではありません。逆に、償還払いであれば取扱い品目や対応エリア、これまでの利用実績などを基準に、より幅広い候補から事業所を選べます。

家計の状況によって、どちらを優先すべきかは変わります。一時的にまとまった出費が難しい場合は受領委任払いが選べる事業所を優先して探す価値がありますし、逆に一時的な立て替えが可能であれば、事業所選びの幅を優先して償還払いで進めるという判断もできます。事業所そのものの選び方の基本的な考え方は、福祉用具の貸与・販売事業所の選び方でも整理しているので、あわせて確認してみてください。

支給限度額や対象品目の考え方は、償還払いと受領委任払いで変わる?

変わりません。年度内の支給限度額や対象品目の範囲は、支払い方法にかかわらず共通の考え方が適用されます。

「受領委任払いを選んだから対象品目が増える」「償還払いだから限度額が減る」というようなことはありません。特定福祉用具購入費の支給は、同一年度内(4月〜翌年3月)で一定の限度額の範囲内という考え方が基本で、対象となる品目(腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具など)も、支払い方法によって変わることはありません。支給限度額と対象品目の全体像、同一年度内での再購入の考え方については、特定福祉用具購入の償還払いの流れで詳しく整理しています。支払い方法の違いはあくまで「いつ・いくら手元から出ていくか」の違いであり、給付の総額や対象範囲そのものを左右するものではないという点を押さえておくと、混同せずに整理できます。

同一年度内での限度額の考え方をより詳しく知りたい場合は、福祉用具の費用と自己負担の仕組みガイドもあわせて確認しておくと、支払い方法とは別軸の「いくらまで使えるか」という制度理解が深まります。

受領委任払いを使う場合、購入前に何を確認しておくべき?

受領委任払いの登録事業者であることの確認と、市区町村への事前申請の要否の2点を、購入前に必ず確認しておく必要があります。

受領委任払いを利用する場合、購入後に慌てないために、次の点を事業所や市区町村の窓口に確認しておくことをおすすめします。

  • 事業所が受領委任払いの登録を受けているか: 事業所のパンフレットや契約書類に記載がない場合は、口頭で直接確認します
  • 購入前に市区町村への事前申請が必要か: 多くの市区町村では、購入前に「受領委任払い承認申請書」のような書類の提出を求めています。購入してから申請しても受け付けてもらえないケースがあるため、購入前の申請の要否は特に重要な確認事項です
  • 必要書類の種類: 見積書、パンフレット、医師の意見書(品目によって要否が変わります)など、市区町村ごとに求められる書類が異なります

「事業所に任せておけば安心」と考えたくなりますが、申請の主体はあくまで本人(または家族)であるケースが多いため、事業所に確認を任せきりにせず、自分自身でも市区町村の窓口に一度問い合わせておくと、手続きの抜け漏れを防げます。ケアマネジャーが決まっている場合は、事前確認の段階から同席・相談してもらうと安心です。

受領委任払いを利用する場合の実際の流れを、時系列で整理すると次のようになります。

  1. ケアマネジャーまたは福祉用具専門相談員に相談する: 購入したい品目と、受領委任払いを希望している旨を伝えます
  2. 市区町村の窓口で制度導入の有無を確認する: 導入していない市区町村であれば、この時点で選択肢は償還払いのみに絞られます
  3. 登録事業者を確認・選定する: 市区町村のホームページの一覧や、ケアマネジャーからの紹介をもとに、受領委任払いに対応した事業所を選びます
  4. 事前申請の要否を確認し、必要であれば申請書類を提出する: この段階を飛ばして購入を進めてしまうと、受領委任払いとして扱ってもらえないおそれがあります
  5. 事業所から見積もりを受け取り、内容を確認する: 品目、金額、自己負担割合が正しく反映されているかを確認します
  6. 商品を購入し、自己負担分のみを支払う: 残りの給付分は、市区町村から事業所へ直接支払われます

この一連の流れの中で、特に見落とされやすいのが4番目の事前申請です。「購入してから申請すればよい」という償還払いの感覚のまま進めてしまうと、受領委任払いでは間に合わないケースがあるため、事前申請が必要な市区町村かどうかは、早い段階で確認しておくことが欠かせません。

受領委任払いのつもりが償還払いになった、というつまずきは実際に起きる?

起こり得ます。特に「事前申請を購入後に行ってしまう」「事業所が登録事業者だと思い込んでいた」の2パターンが多いつまずきです。

窓口や事業所への相談の中で、実際によく聞かれるつまずきには次のようなものがあります。

  • 購入前の事前申請が必要な市区町村だったにもかかわらず、「あとで申請すればいいだろう」と考えて先に購入してしまい、受領委任払いとして扱ってもらえず、結果的に全額を立て替える償還払いの扱いになった
  • 以前利用した事業所が受領委任払いに対応していたため、「福祉用具の事業所ならどこでも対応しているはず」と思い込んで別の事業所で購入したところ、その事業所は登録を受けておらず、受領委任払いが使えなかった
  • 市区町村が受領委任払い制度を導入していることは知っていたが、自分が住んでいる地域で実際に導入されているかを確認しないまま話を進め、購入直前になって「うちの市区町村は受領委任払いを実施していない」と分かった

これらに共通するのは、「以前はこうだった」「他の地域ではこうだった」という思い込みで進めてしまい、今回の市区町村・今回の事業所の状況を個別に確認していないという点です。受領委任払いは全国一律の制度ではなく、市区町村ごとの導入状況と事業所ごとの登録状況の掛け合わせで決まる仕組みであるため、過去の経験や他の地域の話をそのまま当てはめると、こうした行き違いが起こりやすくなります。

購入を決める前に、「今回の市区町村」「今回の事業所」という前提を毎回確認し直す姿勢が、こうしたつまずきを避ける一番確実な方法です。

同じ年度内に複数の品目を購入する場合、支払い方法は品目ごとに選べる?

選べます。年度内の支給限度額の範囲内であれば、品目ごとに償還払いと受領委任払いを使い分けることも可能です。

たとえば、同じ年度内に腰掛便座と入浴補助用具の2品目を購入する場合、必ずしも両方を同じ支払い方法にそろえる必要はありません。1品目目は受領委任払いに対応した事業所で購入し、2品目目は取扱い品目の幅を優先して別の事業所(受領委任払い非対応)で購入し、償還払いで申請する、といった使い分けも制度上は可能です。

ただし、品目ごとに事業所を分けると、それぞれの事業所とのやり取りや必要書類の管理が増えるため、「手続きの手間を減らしたいのか」「支払い方法の柔軟さを優先したいのか」を事前に整理しておくと、購入計画が立てやすくなります。年度内の支給限度額をどう配分するかという計画の立て方は、福祉用具購入費用を見積もる考え方でも扱っているので、複数品目の購入を検討している場合はあわせて確認しておくとよいでしょう。年度をまたいで購入を計画する場合は、福祉用具の購入費、年度をまたぐとどうなる?で支給限度基準額のリセットの仕組みを解説しています。

この記事で持ち帰れること

  • 償還払いは全額を立て替えて後日払い戻しを受ける方式、受領委任払いは最初から自己負担分だけを支払う方式で、最終的な自己負担額は同じだが購入時に必要なお金の額が異なること
  • 受領委任払いは市区町村の制度導入と事業所の登録の両方がそろって初めて使える仕組みで、「隣の市区町村では使えた」がそのまま当てはまるとは限らないこと
  • 受領委任払いを希望する場合、登録事業者の中から選ぶことになるため、事業所選びの幅が償還払いより狭まる可能性があること

一時的な立て替えが負担になりそうだと感じたら、まずは今日、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に電話して「受領委任払いの制度がありますか」と一言尋ねてみてください。制度の有無が分かるだけで、その後の事業所選びの進め方がはっきりします。

受領委任払いに対応した事業所を具体的に探したい場合は、介護ようひんさーちの事業所検索から、営業エリアや特定福祉用具販売の指定の種類で事業所を絞り込み、受領委任払いの対応可否を直接問い合わせて確認してみてください。

よくある質問

Q. 受領委任払いのほうが、最終的な自己負担額は安くなりますか? A. いいえ、最終的な自己負担額は償還払いでも受領委任払いでも同じです。変わるのは、購入時に一時的に支払う金額とタイミングだけです。

Q. 受領委任払いを申請したのに、実際は償還払いになることはありますか? A. 事前申請が必要な市区町村で申請を怠った場合や、購入した事業所が実は登録事業者でなかった場合など、想定通りに手続きが進まないと償還払いの扱いになることがあります。購入前の確認が重要です。

Q. 受領委任払いに対応しているかどうかは、どこで確認できますか? A. お住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または購入を検討している事業所に直接確認する方法が確実です。市区町村のホームページに登録事業者の一覧が掲載されていることもあります。

Q. 償還払いから受領委任払いに、途中で変更できますか? A. 支払い方法は購入前の申請時点で決まる仕組みのため、購入後に遡って変更することは基本的にできません。購入前にどちらの方式を使いたいかを決めておくことが大切です。