突然の入院。荷物をまとめて病院へ向かう慌ただしさの中で、「家に置いてきた介護ベッドや車いすは、このままでいいのだろうか」と気になった経験はないでしょうか。入院期間が数日で終わるのか、それとも長引くのか分からない段階では、レンタル中の福祉用具をどうすればいいのか判断に迷うものです。連絡すべきなのか、そのままにしておいていいのか、費用はどうなるのか——考えることが一度に押し寄せてきます。

先に、要点をまとめます。

  • 入院が決まったら、まず福祉用具貸与事業所またはケアマネジャーに連絡し、状況を伝えることが最初の一歩
  • 福祉用具貸与は在宅生活を支えるサービスのため、入院中は原則として介護保険の給付対象外になる。自宅に置いたまま使い続けたい場合は自費レンタルへの切り替えを相談する流れになる
  • 退院のタイミングでは、入院前と体の状態が変わっていることが多く、同じ用具をそのまま再開できるとは限らない

ただし、「連絡するタイミング」を誤ると、費用や手続きの面で余計な負担が生じることがあります。この点については後半で具体的に触れます。

入院が決まったら、福祉用具はまず何をすればいい?

福祉用具貸与事業所かケアマネジャーに、入院の事実と見込み期間を伝えることが最初の一歩です。

介護ベッドや車いすなどの福祉用具貸与は、在宅で生活する要介護者・要支援者を対象にした介護保険サービスです。本人が自宅を離れて入院すると、その用具を「自宅に置いたままにするのか」「一旦返却するのか」の判断が必要になります。まずは事業所またはケアマネジャーに連絡し、次の3点を伝えることから始めます。

  • 入院した日、または入院予定日
  • 入院先の病院名(分かる範囲でよい)
  • 入院期間の見込み(「数日程度」「はっきり分からない」といった曖昧な情報でも構わない)

「まだ入院期間が分からないから、連絡は退院してから」と後回しにしてしまう家族も少なくありません。しかし、後で詳しく触れるとおり、入院中は介護保険での福祉用具貸与の給付が原則として止まります。事業所側が入院の事実を早めに把握できれば、費用や用具の扱いについて早い段階で選択肢を案内してもらえます。入院直後、バタバタしている時期であっても、電話一本で状況を共有しておくことが、後々の手続きをスムーズにする土台になります。

入院中も福祉用具貸与の介護保険給付は続く?

続きません。福祉用具貸与は「在宅生活を支えるサービス」という位置づけのため、入院中は原則として介護保険の給付対象外になります。

福祉用具貸与は、訪問介護やデイサービスと同じ介護保険サービスの一つですが、あくまで自宅での生活を支えるために提供されるものです。入院すると、その期間は病院という医療機関の設備・体制のもとで療養することになるため、「在宅生活に用いていない」とみなされ、原則として介護保険の給付対象から外れます。これは、福祉用具貸与に限らず、在宅サービス全般に共通する考え方です。

「短期間の入院なら、契約を続けたまま様子を見ればいいのでは」と考えたくなりますが、給付が止まる原則自体は入院期間の長短にかかわらず適用されます。ただし、実務上の扱いは次のように分かれます。

  • 用具をいったん事業所に返却する: 入院が決まった時点で用具を引き取ってもらい、退院時に改めて選定・搬入してもらう方法です。ごく短い入院でも、この方法を基本とする事業所もあります。
  • 自宅に置いたまま自費でレンタルを続ける: 退院後すぐに同じ用具を使いたい場合、介護保険の給付は使えないものの、自費でのレンタル契約に切り替えて用具を自宅に残しておける場合があります。費用は全額自己負担になるため、事業所に金額を確認したうえで判断します。

どちらを選ぶかは、入院期間の見込み、用具の種類、退院後すぐに必要になりそうかどうかによって変わります。「うちの場合はどちらが現実的か」を、事業所やケアマネジャーに率直に相談してみることをおすすめします。

入院期間の見込みによって福祉用具レンタルの対応が分岐する図。入院が決まったらまず事業所・ケアマネへ連絡し、給付が止まる原則を踏まえて、いったん返却するか自費レンタルに切り替えるかを選ぶ。退院日が決まったら状態変化を踏まえて再開・見直しを確認する流れ

月の途中で入院・退院した場合、費用はどう計算される?

福祉用具貸与費は月額で算定されるため、月の途中で入退院があった場合の扱いは、契約している事業所や保険者(市区町村)の運用によって異なります。個別に確認することが必要です。

福祉用具貸与の費用は、多くの品目で「1ヶ月単位」の考え方に基づいて算定されます。そのため、月の途中で入院した場合や、月の途中で退院してレンタルを再開した場合、その月の費用をどう計算するかは、日割りになるのか、月額のままなのか、契約している事業所や地域の保険者(市区町村)の運用によって異なることがあります。

「入院した日から自動的に費用がかからなくなる」と決めつけず、次の点を事業所に確認しておくと安心です。

  • 入院した月の費用は、日割りになるのか、その月いっぱい発生するのか
  • 用具を引き取ってもらうタイミングによって、費用の扱いが変わるか
  • 退院後、同じ月内にレンタルを再開した場合の費用はどうなるか

福祉用具の費用がどのような仕組みで決まるかは、福祉用具の費用と自己負担の仕組みガイドで全体像を整理しています。月をまたぐ入退院が絡む場合の費用は個別性が高いテーマなので、まずは基本の仕組みを押さえたうえで、事業所に具体的な扱いを確認する流れがおすすめです。

(ここで一つ、後半で説明したい注意点があります。退院時には「同じ用具をそのまま再開すればいい」とは限らないケースがあります。これについては、後ほど詳しく触れます。)

特定福祉用具(購入した用具)は、入院中どうすればいい?

レンタルではなく購入した用具(腰掛便座や入浴補助用具など)は契約の概念自体がないため、入院中の連絡は基本的に不要です。

福祉用具には、介護保険の給付を受けて借りる「福祉用具貸与」の対象品目と、購入して自己所有する「特定福祉用具販売」の対象品目(腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽など)があります。購入した用具は本人の所有物であるため、レンタルのような契約・給付の概念は存在せず、入院中に事業所へ連絡する必要は基本的にありません。自宅にそのまま置いておいて差し支えないケースがほとんどです。

ただし、入院が長期化し、退院後の生活環境が大きく変わりそうな場合(たとえば要介護度が上がる見込みがある、退院先が自宅ではなく別の施設になるかもしれない、といった場合)は、購入済みの用具が退院後も引き続き適切に使えるものかどうか、ケアマネジャーに一度相談しておくと安心です。特定福祉用具販売でどのような手続きが必要になるかは、特定福祉用具購入の償還払いの流れでも整理しています。退院後に新たに用具を購入する場合、支払い方法によって購入時に必要なお金の額が変わる点は、受領委任払いと償還払い、福祉用具購入はどちらが使える?でまとめているので、まとまった出費が難しい時期にはあわせて確認しておくと安心です。

退院が決まったら、レンタルの再開はどう進める?

退院日が決まった時点で速やかに事業所へ連絡し、入院前と同じ用具でよいか、体の状態の変化を踏まえて改めて確認することが必要です。

退院日が決まったら、できるだけ早いタイミングで福祉用具貸与事業所またはケアマネジャーに連絡します。入院中に用具をいったん返却していた場合は、退院日に間に合うよう改めて選定・搬入の調整が必要になるため、この連絡が特に重要です。ここで意識しておきたいのは、「入院前に使っていた用具を、そのまま同じように使えるとは限らない」という点です。入院期間中に、次のような変化が起きていることは珍しくありません。

  • 入院前より歩行が不安定になった、または逆に回復して以前ほどの介助が不要になった
  • 要介護度の区分が変わった(区分変更の認定を受けた場合)
  • 退院直後は一時的に介助量が増える(リハビリ途上のため)

こうした変化がある場合、入院前と同じ特殊寝台やベッド用付属品では、退院後の生活に合わなくなっていることがあります。特殊寝台(介護ベッド)を再開する際の確認ポイントは、特殊寝台(介護ベッド)をレンタルするときの確認ポイントにまとめているので、退院前の準備段階で目を通しておくと、事業所との相談がスムーズになります。

退院前から福祉用具の準備を進めておきたい場合の考え方は、退院してすぐ困らないために。福祉用具は入院中からどう準備を始めるかでも詳しく取り上げています。あわせて確認しておくと、入院中の対応から退院後の再開までの流れが一通り見通せます。

「短期のはずが長引いた」場合、途中で連絡し直してもいい?

もちろん問題ありません。むしろ、見込みが変わった時点で早めに連絡し直すことが、費用や手続きのトラブルを避ける一番確実な方法です。

入院時によくあるのが、「数日で退院できると聞いていたのに、検査や治療の都合で結局1ヶ月以上かかった」というケースです。最初に自費レンタルで用具を自宅に残していた場合でも、長期化が見えてきた時点で事業所に連絡し直せば、そこから用具の引き取りへ切り替えることもできます。

大切なのは、「最初に決めた方針を最後まで守らなければならない」と思い込まないことです。入院期間の見通しは、本人の状態や治療方針によって変わっていくのが自然です。事業所側も、状況が変わるたびに連絡をもらう方が、費用の計算や用具の手配を正確に行いやすくなります。逆に、見込みが変わったことを伝えないまま長期間放置してしまうと、次のようなことが起こり得ます。

  • 短期で退院できると思い込んで自費レンタルを続けていたが、実際には長期入院になり、使っていない期間の自費負担が積み重なっていた
  • 用具の定期点検の時期が来ても本人が不在で、点検自体ができないまま連絡が滞っていた
  • 退院のタイミングで初めて事業所に連絡し、久しぶりの相談になったことで、状態の変化を一から説明し直す手間が生じた

いずれも、途中経過を一報入れておくだけで防げることばかりです。「まだ状況が固まっていないから」と連絡を先延ばしにするより、「今のところこう見込んでいますが、変わったらまた連絡します」と暫定の情報でも共有しておく方が、事業所とのやり取りはずっとスムーズになります。

入院中の福祉用具対応で、実際によくあるつまずきは?

「誰かが連絡してくれているだろう」という思い込みと、介護保険の給付が止まることを知らずに費用の見通しを誤ることの2つが、特に多いつまずきです。

福祉用具貸与を利用している家庭で、入院をきっかけに実際によく起きる行き違いには、次のようなパターンがあります。

  • 家族の誰かが「病院への付き添いで忙しいから、福祉用具のことは後でいいだろう」と考え、結局誰も事業所に連絡しないまま数週間が経過してしまった
  • 同居家族と別居家族の間で「あちらが連絡しているはず」という思い込みが重なり、双方とも連絡していなかった
  • 入院中も介護保険でレンタルを続けられると思い込んでいたが、実際には給付対象外で、自費分の請求を受けて驚いた
  • 退院が決まってから初めて用具の再検討を相談したため、必要な用具の手配が退院日に間に合わなかった
  • 区分変更の申請中であることを事業所に伝えておらず、退院後に品目の対象外を理由に一時的に用具が使えない期間が生じた

これらの多くは、「入院が決まったらすぐ連絡する」「見込みが変わったら再度連絡する」「退院日が決まったら早めに相談する」という3つのタイミングを押さえておくだけで防げます。逆に言えば、この3つのタイミングさえ意識しておけば、入院という予定外の出来事があっても、福祉用具まわりの手続きで大きくつまずくことは少なくなります。

入院中に用具の破損や不具合に気づいたら?

入院中であっても、用具の破損や不具合に気づいた時点で事業所へ連絡して構いません。訪問による対応が難しい場合でも、状況を伝えておくことが後々の確認をスムーズにします。

入院前から使っていた用具に不具合があった、あるいは入院準備でバタバタしている最中に用具を傷つけてしまった、というケースもあります。福祉用具貸与の用具は、通常の使用による自然な劣化であれば事業所の保守対応の範囲に含まれますが、破損の状況によっては連絡と確認が必要です。本人が入院中で自宅に用具の利用者がいない場合でも、家族が気づいた時点で「入院中ですが、用具に不具合があるので確認してもらえますか」と伝えておくとよいでしょう。福祉用具が故障・破損したときの一般的な対応の流れは、福祉用具が故障・破損したときの対応で確認できます。なお、お盆休みや年末年始のような長期休業期間と入院が重なった場合は、事業所の緊急連絡先の確認がいつも以上に重要になります。休業中に福祉用具が壊れたときの連絡先の確認方法もあわせて確認しておくと安心です。

入院中に要介護認定の見直しが入ったら、福祉用具はどうなる?

要介護度が変わると、レンタルできる品目の範囲が変わることがあります。区分変更の結果が出るまでは、現在の認定に基づいた利用が基本です。

入院をきっかけに心身の状態が変化し、要介護度の区分変更を申請するケースもあります。区分変更の審査結果が出るまでには一定の期間がかかるため、その間は現在の認定区分に基づいて考えるのが基本的な流れです。

区分変更によって要介護度が上がれば、それまで対象外だった品目(たとえば要介護1では原則対象外の特殊寝台や車いすなど)がレンタルの対象になる可能性があります。逆に要介護度が下がった場合は、一部の品目が原則の対象外になることもあります。いずれにしても、区分変更の結果が出た段階で、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に「認定が変わったので、退院後の用具の扱いを確認したい」と伝えることが、退院後の生活をスムーズに整えるための次の一歩になります。

まだ要介護認定の結果自体が出ていない、あるいは認定の有効期間が入院中に切れてしまいそうな場合の福祉用具利用については、要介護認定の結果待ちでも福祉用具は使える?暫定利用と自費レンタルという2つの道で解説しています。入院と認定手続きのタイミングが重なる方は、あわせて確認しておくと安心です。

この記事で持ち帰れること

  • 入院が決まったら、まず福祉用具貸与事業所かケアマネジャーに連絡し、入院期間の見込みを伝えることから始めること
  • 福祉用具貸与は在宅サービスのため入院中は原則として介護保険の給付対象外になり、自宅に用具を残すなら自費レンタルへの切り替えが選択肢になること
  • 退院時は「入院前と同じ用具でよいか」を体の状態の変化を踏まえて見直す必要があり、区分変更が絡む場合は認定結果を待ってから相談すること

入院という予定外の出来事の中で、福祉用具のことまで手が回らないと感じるのは自然なことです。ですが、事業所への連絡は電話一本で済みます。まずは今日、担当のケアマネジャーや福祉用具貸与事業所の連絡先を確認し、手元にメモしておくところから始めてみてください。いざというときに慌てずに済みます。

事業所への連絡先が分からない、あるいはこれから福祉用具貸与の事業所を探したいという場合は、介護ようひんさーちの事業所検索から、住所を起点に営業エリアや取扱い品目で指定事業所を絞り込めます。

よくある質問

Q. 入院中、福祉用具貸与事業所への連絡は誰がすればいい? A. 決まったルールはありません。本人が難しい場合は、家族またはケアマネジャーが代わりに連絡して構いません。まずは入院の事実と見込み期間を伝えることが大切です。

Q. 入院中に用具を自宅に置いたままにすると、介護保険は使えますか? A. 原則として使えません。福祉用具貸与は在宅生活を支えるサービスのため、入院中は介護保険の給付対象外になります。自宅に用具を残したい場合は、自費レンタルへの切り替えを事業所に相談する流れになります。

Q. 退院後、入院前と同じ用具をそのまま使えますか? A. 使えることもありますが、入院中に体の状態が変化している場合は、同じ用具が合わなくなっていることがあります。退院日が決まった時点で、早めに事業所へ相談することをおすすめします。

Q. 短期入院の場合でも、事業所への連絡は必要? A. 数日程度の短期入院であっても、連絡しておくことをおすすめします。介護保険の給付が入院中は止まる原則があるため、費用の見通しを誤らないためにも早めの連絡が安心です。