入浴やトイレへの移乗、ベッドから車いすへの乗り移りで、ご本人を抱えるのがつらくなってきた——そんなとき候補にあがるのが移動用リフトです。福祉用具の事業所や地域包括支援センターに相談すると、「リフト本体はレンタルできますが、つり具は購入になります」と説明されることがあります。ひとつの用具なのに扱いが分かれると聞くと、何がどう違うのか戸惑ってしまうご家族も少なくありません。

先に、要点をまとめます。

  • 移動用リフトの本体は福祉用具貸与(レンタル)の対象で、原則要介護2以上が対象
  • 身体を包んで支えるつり具部分は貸与の対象外で、特定福祉用具販売(購入)の対象
  • つり具の購入には年間10万円の上限があり、費用はいったん全額を支払う償還払いが基本

なぜ本体とつり具で扱いが分かれるのか、どう申請を進めればよいのか、順番に見ていきます。

移動用リフトは、なぜ本体とつり具で扱いが分かれる?

つり具は肌に直接触れて体重を支える消耗性の高い部品のため、貸与ではなく購入の対象とされているためです。

介護保険の福祉用具は、原則として「貸与(レンタル)」で提供されます。使う人が変わるたびに別の製品を新調するより、既存の製品を消毒・点検して繰り返し使う方が費用を抑えられるためです。しかし、直接肌に触れて体重を支えるつり具のような部品は、衛生面や個人の体格への適合という理由から、他の利用者との使い回しに向きません。そのため、移動用リフトは「本体は貸与」「つり具は個人専用の購入」という2つの制度にまたがる、やや特殊な扱いになっています。

同じような考え方は、腰掛便座や入浴補助用具など、肌に直接触れる特定福祉用具にも共通しています。品目全体の貸与・販売の分かれ方を先に整理したい場合は、福祉用具貸与と特定福祉用具販売の違いガイドも参考にしてください。

移動用リフト本体のレンタルは、誰でも使える?

原則として要介護2以上の方が対象で、要支援1・2、要介護1の方(軽度者)は原則として貸与の対象外です。

福祉用具貸与13種目のうち、移動用リフトを含む9種目(車いす・車いす付属品・特殊寝台・特殊寝台付属品・床ずれ防止用具・体位変換器・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフト・自動排泄処理装置)は、軽度者について原則保険給付の対象外とされています。厚生労働省の資料でも、これらの品目は「その状態像からみて使用が想定しにくい」ことを理由に、原則算定できないと整理されています(厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」)。

ただし、要介護1の方でも身体の状態によっては「例外給付」という仕組みで借りられる場合があります。特殊寝台(介護ベッド)の例外給付の判断経路については要介護1でも介護ベッドは借りられる?で詳しく解説していますが、判断の骨格(基本調査の結果による経路、医師の所見とサービス担当者会議による経路の2つ)は移動用リフトでも同様です。移乗の際に転倒・転落のリスクが高い、介助者の身体的負担が大きいといった状態像がある場合は、「うちは要介護1だから対象外」と決めつけず、まずはケアマネジャーに基本調査の結果を確認してもらうことをおすすめします。

福祉用具貸与13種目全体で、どの品目がどの要介護度から対象になるかを一覧で確認したい場合は、要支援・要介護1で使える福祉用具と原則対象外の品目ガイドにまとめています。

つり具の購入には、どんな条件がある?

1年間(4月1日〜翌年3月31日)で購入できる金額の上限は10万円で、費用はいったん全額を支払う「償還払い」が基本です。

つり具は特定福祉用具販売の対象で、他の対象品目(腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽など)と合算して、年間10万円までが保険給付の対象になります。1割負担の方であれば、10万円分を購入した場合、自己負担1万円・保険給付9万円という計算になります(一定以上の所得がある方は自己負担が2〜3割になります)。

支払いの流れは、まず利用者がいったん販売事業者に全額を支払い、その後市町村に申請することで、保険給付分(9割・8割・7割)が払い戻される「償還払い」が基本です。地域や事業者によっては、利用者負担分のみを事業者に支払う「受領委任払い」に対応している場合もあります。2つの支払い方式の違いについては受領委任払いと償還払い、福祉用具購入はどちらが使える?で詳しく整理しています。

つり具は移動用リフト本体の機種によって適合するサイズ・形状が決まっているため、購入前に福祉用具専門相談員による採寸・適合確認を受けるのが通常の流れです。体格やご本人の身体状況が変わった場合は、つり具だけを買い替える必要が出てくることもあります。

移動用リフト本体とつり具で制度が異なることを示す比較図。本体は要介護2以上を原則として福祉用具貸与の対象、つり具は年間10万円上限の特定福祉用具販売の対象で償還払いが基本という2つの制度を並べて示す

年度の途中で本体を借り始めたら、つり具はいつ買える?

本体のレンタル開始とつり具の購入は別の手続きなので、同時でなくても構いません。ただし、つり具の年間10万円の上限は「年度」で区切られる点に注意が必要です。

移動用リフト本体のレンタルは、契約が成立すればいつからでも始められます。一方、つり具の購入費は「毎年4月1日から翌年3月31日まで」という年度単位で上限額が決まっているため、年度の終盤に本体のレンタルを始めた場合、つり具の購入を急いで年度内に済ませるべきか、年度をまたいで落ち着いて選ぶべきかで迷うことがあります。

年度をまたぐ購入や、つり具以外の特定福祉用具(腰掛便座、入浴補助用具など)を同じ年度内にあわせて購入する場合の上限額の考え方は、福祉用具の購入費、年度をまたぐとどうなる?で詳しく解説しています。急いで購入して後から他の品目を買えなくなる、といった事態を避けるためにも、年度内の購入予定は福祉用具専門相談員やケアマネジャーと事前にすり合わせておくと安心です。

(もう一つ、意外と見落とされやすい点があります。それは「複数のつり具」を持つケースです。次の見出しで触れます。)

つり具は複数持てる?体格や用途で使い分けたい場合は?

入浴用・移動用など用途別に複数のつり具を用意することもできますが、それぞれが年間10万円の上限額の対象になります。

移動用リフトは、ベッドから車いすへの移乗、浴室への移動など、複数の場面で使われることがあります。場面ごとに適した形状のつり具(座位保持型、シート型、入浴対応型など)を使い分けたいという相談も少なくありません。制度上、複数のつり具を購入すること自体は可能ですが、購入費の合計が年間10万円の上限に含まれる点は変わりません。

そのため、「まずどの場面での移乗が一番負担になっているか」を福祉用具専門相談員と相談し、優先順位をつけてつり具を選ぶことが、限られた上限額を有効に使うポイントになります。すでに他の特定福祉用具(腰掛便座など)を同じ年度内に購入している場合は、残りの上限額も含めて確認しておきましょう。

相談の場面で、実際によくあるつまずきは?

「リフトはレンタルできる」という説明だけを覚えていて、つり具が別枠の購入品であることを後から知って戸惑うケースが目立ちます。

福祉用具の相談でよく聞かれるつまずき方には、次のようなものがあります。

  • 事業所から「本体はレンタルできます」とだけ説明を受け、つり具が別途購入になることを契約の直前まで知らなかった
  • つり具の年間10万円の上限を、他の特定福祉用具(腰掛便座、入浴補助用具など)とは別枠だと思い込んでいて、実際には合算されることを後から知った
  • 償還払いの仕組みを理解しないまま契約し、購入時に全額を立て替える必要があることに驚いた
  • 体格が変わってつり具を買い替えたいときも「リフトのレンタル契約に含まれているはず」と誤解していた

これらの多くは、「本体とつり具は別の制度」という前提を最初に共有しておくだけで防げるつまずきです。福祉用具専門相談員から説明を受ける際は、「本体のレンタル料はいくらで、つり具の購入費用はいくらか、それぞれ教えてください」と、両方を分けて確認する習慣をつけておくと安心です。

他の福祉用具と組み合わせて使うことはできる?

特殊寝台や床ずれ防止用具など、他の貸与品目と組み合わせて利用することは一般的で、むしろ移乗の負担軽減という目的では組み合わせて検討されることが多い品目です。

移動用リフトは、ベッドから車いすへの移乗、車いすからトイレ・浴室への移乗など、複数の生活場面で使われます。そのため、特殊寝台(介護ベッド)と組み合わせて、ベッドの高さ調整とリフトでの吊り上げを連動させて使うケースや、車いすと組み合わせて移乗後の姿勢保持を安定させるケースなど、他の福祉用具と一体で検討されることが少なくありません。

特殊寝台の例外給付の考え方は要介護1でも介護ベッドは借りられる?、ベッドに敷くマットレスの選び方は介護ベッドのマットレスはどう選ぶ?で解説しています。移動用リフトの導入を検討する際は、ケアプラン全体のなかで「どの移乗場面の負担を最も軽くしたいか」を整理し、関連する福祉用具をあわせてケアマネジャーに相談すると、必要な組み合わせが見えやすくなります。

この記事で持ち帰れること

  • 移動用リフトは「本体=レンタル」「つり具=購入」と、ひとつの用具で2つの制度にまたがること
  • 本体は原則要介護2以上が対象だが、要介護1でも例外給付の対象になる場合があること
  • つり具の購入には年間10万円の上限があり、償還払いが基本であること

「本体は借りられそうだけど、つり具はどう手続きすればいいのか分からない」という段階でも、まずは福祉用具専門相談員に相談してみることから始められます。今日、ケアマネジャーに「移動用リフトを検討したいので、まず基本調査の結果と、対応事業者を教えてもらえますか」と聞いてみると、具体的な話が進みやすくなります。

該当しそうだと分かったら、介護ようひんさーちの事業所検索から、移動用リフトの取り扱いがある福祉用具貸与・特定福祉用具販売の指定事業所を営業エリアで絞り込み、つり具の適合確認も含めて問い合わせてみてください。

よくある質問

Q. 移動用リフト本体とつり具は、同じ事業者から用意する必要がありますか? A. 必ずしも同じ事業者である必要はありませんが、つり具は本体の機種に適合するものを選ぶ必要があるため、実務上は本体のレンタル元である福祉用具貸与事業所に、つり具の取り扱いや適合確認も相談するのが一般的です。

Q. 要介護2以上でも、移動用リフトが借りられないケースはありますか? A. 要介護度の条件を満たしていても、住環境(設置スペース、床の耐荷重など)によっては設置が難しい場合があります。福祉用具専門相談員による自宅訪問・アセスメントで、実際の設置可否を確認する流れになります。

Q. つり具が古くなった場合、年度内に何度でも買い替えられますか? A. 買い替え自体は可能ですが、購入費用は年間10万円の上限に含まれます。上限に達している場合、その年度内の追加購入は全額自己負担になるため、劣化や体格の変化に気づいた時点で早めに専門相談員に相談することをおすすめします。