排泄予測支援機器は、2022年4月から介護保険の特定福祉用具販売(購入)の対象になった福祉用具です。対象になるのは、排尿のタイミングが分かればトイレで排尿できる見込みがある方で、要介護度による一律の線引きはありません。購入前には医師の所見で膀胱機能を確かめ、事業所が装着や通知の理解を確認します。試用は要件ではありませんが、厚生労働省は一定期間の試用を推奨しています。

「トイレに間に合わないことが増えてきた」「声をかけるタイミングが分からず、何度もトイレに誘っては空振りになる」——排尿の困りごとは、本人にとっても家族にとっても言い出しにくい話題です。そうした場面で候補にあがるのが、おなかに付けたセンサーが膀胱内の状態から尿のたまり具合を推定し、スマートフォンなどに知らせる排泄予測支援機器です。ただ、制度に加わってからまだ年数が浅く、「誰が買えるのか」「何を確認されるのか」が分かりにくい用具でもあります。

先に、要点をまとめます。

  • 排泄予測支援機器は購入(特定福祉用具販売)の対象で、年度ごとの購入費の支給限度基準額の範囲で1〜3割負担になる
  • 給付の対象は「排尿の機会が予測できれば、失禁を避けてトイレで排尿できる見込みがある方」。要支援の方や要介護4・5の方も、この状態に当てはまれば対象になり得る
  • 購入前に医師の所見で膀胱機能を確認し、事業所が「目的の理解・装着・通知の理解とトイレまでの移動」を確かめる。市区町村への申請には所見が分かる書類を添える
  • 試用は要件ではないものの推奨されており、試用で「通知のあとトイレで排尿できたか」を記録しておくと判断がしやすい

ここから、厚生労働省が2022年3月31日に出した留意事項通知とQ&A(介護保険最新情報Vol.1059に収録)をもとに、順番に整理します。

排泄予測支援機器とは、どんな福祉用具?

体に付けたセンサーが膀胱内の状態から尿量を推定し、一定の量に達したと推定したときに、本人や介助する人へ排尿の機会を自動で知らせる機器です。

厚生労働省の解釈通知では、排泄予測支援機器を「利用者が常時装着した上で、膀胱内の状態を感知し、尿量を推定するものであって、一定の量に達したと推定された際に、排尿の機会を居宅要介護者等又はその介護を行う者に自動で通知するもの」と定めています。通知の方法としては、機器本体から専用アプリを入れたスマートフォンやタブレットへ、近距離通信(ブルートゥース)で知らせる形が想定されています。

制度上の位置づけで押さえておきたいのは、次の3点です。

  • レンタルではなく購入の対象: 腰掛便座や入浴補助用具と同じく、特定福祉用具販売の種目に入っています。販売の対象になる6種目の全体像は特定福祉用具販売とは?購入対象品目・償還払い・上限の考え方で整理しています
  • 消耗品は対象外: 装着のたびに使う専用ジェルや専用シートなどの関連製品は、保険給付の対象から除かれています。購入後も自費でかかる費用があるため、見積もりの段階で確認しておきます
  • 失禁をなくす機器ではない: Q&Aでは、トイレでの自立した排泄を促すことが目的で、失禁をなくすものではないと本人や家族が理解していることを確認するよう求めています

つまり、この機器が担うのは「そろそろトイレに行くタイミング」を知らせるところまでです。知らせを受けてトイレに移動する、あるいは家族が声をかけて誘導する、という動きがあってはじめて役に立ちます。

介護保険で購入できるのは、どんな状態の人?

運動機能の低下や、尿意が分からない・伝えられないことでトイレでの排尿が難しくなっていて、排尿の機会が予測できればトイレで排尿できる見込みがある方が対象です。

留意事項通知が示す給付の対象は、「運動動作の低下、排尿のタイミングが不明、または伝えることができない等により、トイレでの自立した排尿が困難となっている居宅要介護者等であって、排尿の機会の予測が可能となることで、失禁を回避し、トイレで排尿をすることが見込める者」です。

あわせて、利用が想定しにくい状態も示されています。目安になるのは、要介護認定の調査票にある「2-5 排尿」の項目です。

認定調査「2-5 排尿」の直近の結果通知・Q&Aでの扱い
1. 介助されていない一般に利用が想定しにくい。ただし、おむつ等を使いながらも準備から後始末まで自分で行っている方が、トイレでの排尿を目指す場合などは、十分に検討したうえで対象にできる
2. 見守り等想定しにくい状態としては挙げられていない。上の給付対象の状態に当てはまるかで判断する
3. 一部介助想定しにくい状態としては挙げられていない。上の給付対象の状態に当てはまるかで判断する
4. 全介助一般に利用が想定しにくい

要介護度については、要支援の方や要介護4・5の方でも、通知で示す状態に当てはまり、自立した排尿が期待できる場合は給付対象にできるとQ&Aで示されています。自動排泄処理装置のように要介護度で原則の対象が決まる用具とは、考え方が違います。

ひとり暮らしの方も、本人が通知を受けて自分でトイレに行く使い方があるため、それだけで対象外にはなりません。ただし、使う目的の理解や試用の状況を特に確かめたうえで判断することとされています。

一方で、常に失禁している状態の方について、おむつ交換の時期を知る目的で給付することは「適切ではない」とQ&Aに明記されています。「おむつ交換のタイミングを知りたい」という相談は、この機器の給付の趣旨とは別の話として扱われます。

購入する前に、何を確認されるの?

医師の所見で膀胱機能を確かめることと、事業所が「目的の理解」「装着できるか」「通知を理解してトイレまで移動・誘導できるか」の3点を確かめることです。

医学的な所見はどう確認する?

販売する事業所は、次のいずれかの方法で膀胱機能を確認することとされています。

  1. 要介護認定の審査で使われた主治医の意見書
  2. サービス担当者会議などでの医師の所見
  3. ケアマネジャーなどが聞き取り、ケアプラン等に記載した医師の所見
  4. 個別に取得した医師の診断書 など

以前にこのいずれかの方法で確認していて、そのときから本人の状態がおおむね変わっていない場合は、あらためての確認は不要とされています。新たに診断書を取る必要があるかどうかは、まずケアマネジャーに「主治医意見書や担当者会議の記録で確認できるか」を聞いてみると話が早く進みます。

事業所が事前に確かめる3つのこと

  1. 利用の目的を理解して、トイレでの自立した排尿を目指す意志があるか: 失禁がなくなる機器ではないことも含めて理解しているか
  2. 装着できるか: 製品によっては体型や体質によって装着が難しい場合があるとされ、装着後の様子を聞き取ることになっている
  3. 本人や介助する人が通知を理解でき、トイレまでの移動や誘導ができるか: 通知を受け取るスマートフォン等の操作に慣れているか、普段過ごしている部屋からトイレまでの介助方法や時間はどのくらいか

3つ目は、家族の暮らし方に直接かかわる部分です。介助する人も高齢で継続した支えが必要と考えられる場合、事業所は販売後も必要に応じて訪問し、使い方の確認や助言に努めることとされています。

排泄予測支援機器を介護保険で購入するまでの流れ。相談、医学的所見の確認、事業所の事前確認、一定期間の試用、購入と市区町村への申請の5段階。認定調査の排尿の項目が「介助されていない」「全介助」の方は一般に利用が想定しにくいとされる

試用はしないといけない?

試用は購入の要件ではありません。ただ、装着の具合や通知のあとにトイレへ移動できるかを確かめるため、厚生労働省は一定期間の試用を推奨しています。

尿がたまってから排尿に至るまでの時間は人によって違うため、どのタイミングで声をかけると間に合うかは、実際に使ってみないと分かりにくいところがあります。Q&Aでは、退所前の施設で使っていたなどの特別な事情がない限り試用を勧め、続けて使うのが難しそうな場合は試用の中止を助言するよう、事業所に求めています。

厚生労働省が示した「確認調書」の様式例には、試用のときに記録する項目として次のようなものが並んでいます。家族が試用に立ち会うときの観察の観点としても使えます。

  • 試用期間と、1日あたり何時間装着したか
  • 装着して通知が届いたか
  • 通知のあと、トイレまでの誘導にかかった時間
  • 日ごとの「通知後にトイレで排泄できた回数/実際の通知回数」

試用中に「通知は来るが、トイレに着く前に間に合わない」「夜間は通知に気づけない」といったことが分かれば、それは失敗ではなく、購入前に分かってよかった判断材料です。誘導の段取りを変えて試すか、別の用具や介助の方法を考えるかを、福祉用具専門相談員やケアマネジャーと相談します。試用の受け方全般は福祉用具を試用(デモ)するときの確認ポイントも参考になります。

市区町村への申請には、何をそろえる?

通常の福祉用具購入費の申請書類に加えて、膀胱機能についての医学的な所見が分かる書類を添えます。市区町村によっては試用の状況を記した確認調書の提出や、購入前の相談を求められます。

Q&Aで示されている申請時の書類は次のとおりです。

  • 申請書(種目、商品名、製造事業者名・販売事業者名、購入費用と購入日、必要な理由。必要な理由はケアプランや特定福祉用具販売計画で確認できる場合は不要)
  • 領収証と、その商品のパンフレットなど概要が分かる書面
  • 医学的な所見が分かる書類

確認調書については、市区町村が必要に応じて提出を求めることとされています。実際に、購入前に一定期間の試用と担当窓口への事前相談を求めている自治体もあります(阿久比町「特定福祉用具『排泄予測支援機器』の取扱いについて」)。手順は自治体ごとに違うため、購入を決める前に「事前の相談や確認調書の提出は必要か」を市区町村の介護保険担当窓口か事業所に確認しておきます。

支払いの流れは、ほかの特定福祉用具と同じです。いったん全額を支払ってあとから保険給付分が戻る償還払いが基本で、自治体によっては自己負担分だけを支払う受領委任払いも使えます。2つの払い方の違いは受領委任払いと償還払い、福祉用具購入はどちらが使える?で、同じ年度に入浴補助用具など複数の用具を買う予定がある場合の上限の考え方は福祉用具の購入費、年度をまたぐとどうなる?で整理しています。指定を受けていない店や通販で買うと保険給付の対象にならないことがある点も、ほかの購入品目と変わりません。

自動排泄処理装置を使っていても購入できる?

自動排泄処理装置を借りていることだけを理由に、対象外になることはありません。ただ、2つの機器が必要になる状態は違うと考えられるため、目的を十分に聞き取って検討することとされています。

自動排泄処理装置は、尿や便を自動で吸引する機器で、本体はレンタル、肌に触れる交換部品は購入という扱いです。原則の対象は要介護4・5の方で、ベッド上での排泄を支える場面が中心になります(詳しくは自動排泄処理装置は要介護4・5から?で整理しています)。

これに対して排泄予測支援機器は、トイレまで移動して排尿することを目指す方のための用具です。たとえば「夜間は自動排泄処理装置、日中はトイレでの排尿を目指したい」というように使い分けを考える場合も、その理由をケアマネジャーや福祉用具専門相談員に具体的に伝え、本人の状態に合っているかを一緒に確かめます。

家族が相談するとき、何から伝えればいい?

「いつ、どんな状況で間に合わないことが多いか」と「トイレまでの距離と介助のしかた」をメモして、ケアマネジャーか福祉用具専門相談員に伝えることから始めます。

排泄予測支援機器が合うかどうかは、要介護度よりも、排尿の困りごとの中身と、知らせを受けたあとに動ける体制があるかで決まります。相談の前に、次のことを2〜3日分書き出しておくと話が具体的になります。

  • 間に合わないことが多い時間帯(朝・日中・夜間)と、その前後の様子
  • 本人が尿意を感じているか、感じても伝えられないのか
  • 普段過ごしている部屋からトイレまでの距離と、移動にかかる時間
  • トイレへの声かけや付き添いを主にしている人と、その人がスマートフォンの通知に気づける環境か
  • 要介護認定の調査で「排尿」がどう判定されているか(分かれば)

排泄の話は、本人の気持ちに配慮しながら進めたい話題でもあります。本人がセンサーを付けることに抵抗を感じている場合は、家族だけで結論を急がず、専門職から本人に説明してもらう場を設けると、本人も納得したうえで決めやすくなります。

この記事で持ち帰れること

  • 排泄予測支援機器は2022年4月から購入(特定福祉用具販売)の対象。専用ジェルなどの消耗品は給付の対象外
  • 対象かどうかは要介護度ではなく、「排尿の機会が分かればトイレで排尿できる見込みがあるか」で判断される。認定調査の排尿が「介助されていない」「全介助」の方は一般に想定しにくいとされる
  • 購入前に医師の所見で膀胱機能を確認し、事業所が3つの点を確かめる。試用は要件ではないが推奨されており、申請に必要な書類や事前相談の有無は市区町村によって違う

まずは上のメモを書き出して、担当のケアマネジャーに相談してみてください。試用や購入を相談できる事業所を探す場合は、介護ようひんさーちの事業所検索で、お住まいの地域を営業エリアに含み、特定福祉用具販売の指定を受けている事業所を絞り込めます。

よくある質問

Q. 要介護1や要支援でも、排泄予測支援機器は買えますか? A. 買える場合があります。要介護度による一律の制限はなく、トイレでの自立した排尿が困難になっていて、排尿の機会が予測できればトイレで排尿できる見込みがある状態かどうかで判断されます。ケアマネジャーに相談してください。

Q. 医師の診断書は必ず取り直す必要がありますか? A. 主治医意見書やサービス担当者会議での医師の所見などで膀胱機能を確認できていれば、新たな診断書は必須ではありません。以前に確認していて状態がおおむね変わっていない場合も、あらためての確認は不要とされています。

Q. おむつ交換のタイミングを知るために使えますか? A. 常に失禁している状態の方について、おむつ交換の時期を知る目的で保険給付することは適切ではないと、厚生労働省のQ&Aに示されています。トイレでの排尿を目指すための用具として位置づけられています。

Q. 試用せずに購入しても申請は通りますか? A. 試用は購入の要件ではありません。ただし厚生労働省は試用を推奨しており、市区町村によっては試用の状況を記した確認調書や事前相談を求めています。購入前にお住まいの市区町村の窓口で確認してください。