老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に移ったあと、自宅で借りていた介護ベッドや車いすを介護保険で借り続けられるかは、入居先の種類で決まります。特別養護老人ホームなどの介護保険施設、介護付き有料老人ホーム(特定施設)、グループホームに入居している間は、介護保険の福祉用具貸与は使えません。住宅型有料老人ホームや、特定施設の指定を受けていないサ高住なら、自宅にいたときと同じように使えます。

「母がサ高住に移ることになった。今のベッドはそのまま持っていけるのか」「介護付きと住宅型で何が違うのか、パンフレットを見てもよく分からない」——入居の準備を進める家族から聞かれる相談です。施設の見学では部屋の広さや食事に目が向き、福祉用具のことは契約の直前になって気づくことも少なくありません。

先に、要点をまとめます。

  • 介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院など)、介護付き有料老人ホームなどの特定施設、グループホームに入居している間は、福祉用具貸与は算定されない。必要な用具は入居先の介護サービスの中で用意される
  • 住宅型有料老人ホーム、特定施設の指定を受けていないサ高住、外部サービス利用型の特定施設は、介護保険で福祉用具を借りられる
  • 同じ「有料老人ホーム」「サ高住」でも、特定施設入居者生活介護の指定があるかどうかで扱いが変わる。重要事項説明書や介護サービス情報公表システムで確認できる
  • ショートステイで家を空けている間も、自宅の介護ベッドの貸与を続けられる場合がある。必要性はサービス担当者会議で検討し、ケアプランに書いておく

ここから、福祉用具貸与費の算定ルールと、自治体が公開しているQ&Aをもとに整理します。

入居先によって、福祉用具レンタルが使えなくなるのはなぜ?

介護保険の福祉用具貸与は、在宅での生活を前提にした居宅サービスだからです。用具がそろっている施設や、介護サービスを一体で受ける住まいでは、重ねて算定しない決まりになっています。

宮崎市の「福祉用具貸与に係るQ&A」は、医療機関に入院中や介護保険施設に入所中に介護保険で福祉用具を借りられるかという問いに、「介護保険を使っての福祉用具貸与は在宅での生活を前提としています」と答え、施設では福祉用具が整備されていることが前提のため給付対象にならないとしています。

介護付き有料老人ホームやグループホームは、介護保険施設とは別の種類の住まいです。ただ、こちらも介護報酬の決まりで扱いが定められています。福祉用具貸与費の算定ルール(指定居宅サービス介護給付費単位数表の注)は、利用者が次のサービス費を算定している場合、福祉用具貸与費は算定しないとしています(福岡県などの「令和8年度 集団指導資料(福祉用具貸与・特定福祉用具販売)」に掲載)。

  • 特定施設入居者生活介護費(短期利用を除く)
  • 認知症対応型共同生活介護費(グループホーム。短期利用を除く)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護費(短期利用を除く)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護費(定員29人以下の特別養護老人ホーム)

これらの住まいでは、入居者への介護がまとめて報酬に含まれており、福祉用具もその中で用意する考え方です。自宅から運んだベッドを使いたい場合も、介護保険のレンタルとして続けることはできないので、入居先に持ち込みの可否と、レンタル契約をどう終えるかを相談します。

住宅型有料老人ホームやサ高住なら、介護保険で借りられる?

借りられます。住宅型有料老人ホームや、特定施設の指定を受けていないサ高住は住まいの扱いで、介護サービスは外部の事業所と個別に契約するためです。

藤沢市の「介護保険福祉用具貸与に係るQ&A」は、介護付き有料老人ホーム(特定施設)・グループホーム・地域密着型介護老人福祉施設・介護保険施設に入所中の方は福祉用具貸与の費用を算定できないとしたうえで、「外部サービス利用型の特定施設や住宅型有料老人ホーム、特定施設の指定を受けていないサービス付き高齢者向け住宅等の場合は算定できます」と説明しています。

入居先の種類ごとの扱いをまとめると、次のとおりです。

入居先介護保険の福祉用具貸与用具の用意のされ方
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院使えない施設サービスの中で施設が用意
介護付き有料老人ホームなどの特定施設(一般型)使えない特定施設入居者生活介護の中で用意
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)使えない共同生活介護の中で用意
住宅型有料老人ホーム使える居宅サービスとして事業所と契約
特定施設の指定がないサ高住使える居宅サービスとして事業所と契約
外部サービス利用型の特定施設使える(藤沢市Q&A)入居先と事業所に契約の形を確認

入居先の種類によって介護保険の福祉用具貸与が使えるかを判定する図。介護保険施設・特定施設(一般型)・グループホームは使えず入居先が用具を用意する。住宅型有料老人ホーム・特定施設の指定がないサ高住・外部サービス利用型の特定施設は使え、居宅サービスとして事業所と契約する

住宅型やサ高住で福祉用具を借りる場合は、自宅にいたときと同じく、ケアマネジャーのケアプランに位置づけ、福祉用具専門相談員の選定を経て契約します。入居先が市区町村をまたぐなら、自宅で使っていた事業所の営業エリアに入居先が入るかも確認が要ります。営業エリアの確かめ方は福祉用具事業所の営業エリアに自宅が入るかの確認方法にまとめています。

介護付きか住宅型か、どこを見れば分かる?

入居先が「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているかを確認します。重要事項説明書のほか、介護サービス情報公表システムで調べられます。

「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」という名前だけでは、どちらの扱いか分かりません。サ高住の中にも特定施設の指定を受けているところがあり、その場合は介護付き有料老人ホームと同じく福祉用具貸与は使えません。確認の手がかりは次の3つです。

  • 入居先の重要事項説明書や契約書に、特定施設入居者生活介護(介護付き)の記載があるか
  • 厚生労働省の介護サービス情報公表システムで、入居先が「特定施設入居者生活介護」の事業所として載っているか
  • 入居相談の担当者に「ここに入ったら、いま借りている介護ベッドを介護保険で借り続けられますか」と聞く

あわせて、入居先に福祉用具の持ち込みのルールがあるかも聞いておきます。介護付きの住まいでは、施設側の用具を使う前提になっていることがあります。施設側で用意される用具の範囲や、見学時に見ておきたい点は介護施設で福祉用具を導入するときの確認ポイントで整理しています。

入居した月のレンタル料は、どう計算される?

入居前に自宅で使っていた分は介護保険の対象です。入居した月の計算は日割りか半月単位のどちらかで、事業所が運営規程で決めています。

藤沢市のQ&Aは、月の初日の午後に介護保険施設へ入所した場合も、入所前に自宅で使っていれば保険給付の対象になり、その月は日割りか半月分の単位で算定するよう答えています。宮崎市のQ&Aも同じ場面について、契約内容に基づいて算定するとし、退所日に福祉用具を使う場合も同じ扱いとしています。

月の途中で貸与をやめたときの計算方法(日割りか半月単位か)は、事業所が運営規程に定めています。具体的な決まりは入院中の福祉用具レンタルはどうなる?介護保険の算定と、返却か自費かの決め方で、入院の場合とあわせて説明しています。入居日が決まったら、事業所に次の点を聞いておくと、費用の見通しが立ちます。

  • 入居する月のレンタル料は、日割りか半月単位か
  • 用具の引き取り日をいつにするか(入居日の前後どちらにするか)
  • 入居先で使えない用具を引き取るとき、費用はかかるか

ショートステイで家を空ける間も、レンタルは続けられる?

続けられる場合があります。予定外の一時帰宅などに備える考え方ですが、使っていない間も料金はかかるため、必要性をサービス担当者会議で話し合い、ケアプランに書いておきます。

ショートステイ(短期入所)は施設に泊まるサービスですが、生活の場は自宅のままです。藤沢市のQ&Aは、ショートステイで自宅を空けている間の介護ベッドのレンタルについて、「予定外の一時帰宅」や「退所日の前倒し」などに備えて利用者の生活環境を保つ観点から貸与できるとしています。一方で、使っていないベッドにも料金がかかることから、貸与の必要性をサービス担当者会議などで十分に検討し、ケアプランに明記するよう求めています。

ショートステイ先やデイサービス先でだけ使う用具は、介護保険の対象になりません。藤沢市・宮崎市のQ&Aはいずれも、自宅でも使っている車いすを持ち込んで使うのは構わないとしたうえで、通所先・短期入所先でしか使わない用具は給付の対象外としています。

ショートステイの利用が長く続く見込みになったときは、自宅の用具を借り続けるかどうかを、あらためてケアマネジャーと話し合ってください。

入居が決まったら、どの順番で連絡する?

入居日が見えた時点でケアマネジャーに伝え、入居先が介護付きか住宅型かを確かめてから、福祉用具の事業所に引き取りか継続かを相談します。

入居の準備は、住まいの契約、引っ越し、介護サービスの切り替えが重なります。福祉用具については、次の順番で進めると行き違いが起きにくくなります。

  1. 入居日の見込みと入居先の名前を、担当のケアマネジャーに伝える
  2. 入居先が特定施設やグループホームか、住宅型・サ高住かを確かめる
  3. 介護付きなら、入居先の用具を使うか持ち込むかを入居先と決め、福祉用具の事業所に引き取り日を相談する
  4. 住宅型・サ高住なら、入居先でのケアマネジャーを誰が担うかと、いまの事業所の営業エリアに入居先が入るかを確認する
  5. 入居する月のレンタル料の計算方法を、事業所に確認する

市区町村をまたいで入居する場合は、介護保険の保険者がどこになるかも関わります。住所地特例の考え方は引っ越し・呼び寄せで福祉用具はどうなる?市区町村をまたぐ転居の手続きと切り替えの段取りにまとめています。レンタルを終えるときの連絡先や精算の流れは福祉用具レンタルの返却・解約はどこに連絡する?で確認できます。

この記事で持ち帰れること

  • 介護保険施設・特定施設(介護付き)・グループホームに入居している間は、介護保険の福祉用具貸与は使えない。住宅型有料老人ホームや特定施設の指定がないサ高住なら使える
  • 介護付きか住宅型かは名前では分からないので、特定施設入居者生活介護の指定の有無を重要事項説明書や介護サービス情報公表システムで確かめる
  • 入居した月のレンタル料は日割りか半月単位が基本で、計算方法は事業所が決めている。ショートステイ中の自宅のベッドは、ケアプランに必要性を書いたうえで続けられる場合がある

まずは、入居先のパンフレットか重要事項説明書を手元に用意し、「特定施設入居者生活介護」の文字があるかを見てみてください。住宅型やサ高住に入居し、入居先の地域で福祉用具の事業所を探す場合は、介護ようひんさーちの事業所検索で入居先の住所を入れると、営業エリアに入る福祉用具貸与の指定事業所を絞り込めます。

よくある質問

Q. 介護付き有料老人ホームに、自宅で使っていた介護ベッドを持ち込めますか? A. 持ち込めるかどうかは入居先のルールによります。持ち込めた場合でも、入居中は介護保険の福祉用具貸与としては算定されないため、レンタル契約の扱いを事業所と相談してください。

Q. サ高住なら、どこでも福祉用具を介護保険で借りられますか? A. 特定施設入居者生活介護の指定を受けていないサ高住なら借りられます。指定を受けているサ高住は介護付き有料老人ホームと同じ扱いで、福祉用具貸与は使えません。

Q. ショートステイの間、自宅の介護ベッドのレンタル料はかかりますか? A. 貸与を続ける場合は、使っていない期間も料金がかかります。続ける必要があるかをケアマネジャーやサービス担当者会議で話し合い、ケアプランに書いておく扱いが自治体のQ&Aで示されています。