身体障害者手帳を持っている方が要介護・要支援の認定も受けている場合、車いすや歩行器のように介護保険の福祉用具と共通する補装具は、原則として介護保険のレンタル(福祉用具貸与)が優先されます。ただし、オーダーメイドなどで個別に作る必要があると判断された場合は、更生相談所の判定などにもとづいて、障害者総合支援法の補装具費を受けられます。

「65歳になったら、車いすは介護保険で借りるように言われた」「これまで補装具で作ってきたのに、どうして変わるのか分からない」——障害福祉と介護保険の両方にかかわる家族から、よく聞かれる戸惑いです。2つの制度は窓口も考え方も違うため、どちらに何を相談すればよいかが見えにくくなります。

先に、要点をまとめます。

  • 介護保険の認定を受けている身体障害者が、介護保険の福祉用具と共通する補装具を希望した場合、原則は介護保険の貸与が優先され、補装具費は支給されない
  • 例外は「オーダーメイド等により個別に製作する必要がある」と判断される場合で、更生相談所の判定等にもとづいて補装具費を支給できる
  • 義肢・装具・補聴器など、介護保険の福祉用具にない品目は、介護保険の認定とは関係なく補装具費で相談する
  • 費用の負担の仕組みも違う。介護保険は所得に応じた1〜3割、補装具費は原則1割で、所得に応じた月額の負担上限がある

ここから、厚生労働省の「補装具費支給事務取扱指針」(令和8年3月30日改正の全文)をもとに、順番に整理します。

補装具と介護保険の福祉用具は、何が違う?

補装具は体に合わせて作って購入するのが原則の用具で、介護保険の福祉用具は既製品をレンタルして状態に合わせて交換していく用具です。

どちらも車いすや歩行器を扱うため似て見えますが、制度の成り立ちが違います。

比べる点補装具(障害者総合支援法)介護保険の福祉用具貸与
主な対象身体障害者手帳を持つ方、難病患者等要介護・要支援の認定を受けた方
手に入れ方体に合わせて製作し、購入するのが原則(借受けは限られた場合のみ)既製品をレンタルし、状態が変われば交換する
相談先市区町村の障害福祉の窓口ケアマネジャー、福祉用具専門相談員
専門的な判定品目によって更生相談所が判定する福祉用具専門相談員が選定を支援し、ケアプランに位置づける
自己負担原則1割。所得に応じた月額の負担上限あり所得に応じて1〜3割

補装具費支給事務取扱指針では、補装具は「身体の状況に応じて個別に身体への適合を図るよう製作されたもの」を基本としているため、購入が原則とされています。借受け(レンタル)が認められるのは、成長に伴って短期間で交換が必要な場合、障害の進行で短期間の利用が見込まれる場合、購入の前に複数の候補を比べる必要がある場合に限られます。

一方、介護保険の福祉用具貸与は、既製品を借りて使い、体の状態や暮らし方が変われば別の機種に替えていく仕組みです。介護保険で借りられる13種目の全体像は、福祉用具貸与の対象13種目と利用の仕組みで確認できます。

どんなときに介護保険が優先される?

65歳以上(特定疾病で認定を受けた40〜64歳を含む)の身体障害者で、要介護・要支援の状態にある方が、介護保険の福祉用具と共通する補装具を希望するときです。

指針は、介護保険との適用関係を次のように定めています。

介護保険の福祉用具と共通する補装具を希望する場合には、介護保険による福祉用具の貸与が優先されるため、原則として、本制度においては補装具費の支給をしない。

対象になる人は、65歳以上の方と、40歳以上65歳未満で特定疾病により要介護・要支援の状態になった方のうち、身体障害者であって要介護・要支援の状態に当てはまる方です。

「共通する」品目として家族がまず出会うのは、移動を支える用具です。補装具の種目には車椅子・電動車椅子・歩行器・歩行補助つえがあり、介護保険の貸与13種目にも車いす・歩行器・歩行補助つえが入っています。ただし、つえのように同じ名前でも制度ごとに対象になる形が違う品目もあるため、具体的な機種がどちらの対象になるかは、相談先で確かめるのが確実です。

これは補装具の制度だけの考え方ではありません。指針には、障害者総合支援法以外の法律で補装具の給付等を受けられる人は、そちらを優先して受けるよう取り扱うという一般的な定めもあります。介護保険の認定を受けている方にとっては、介護保険がその「先に使う制度」にあたります。

なお、要支援1〜要介護1の方は、介護保険の車いすが原則として対象外です。この場合の例外給付の考え方は要支援・要介護1で使える福祉用具と原則対象外の品目で整理しています。介護保険で借りられないと分かったときに補装具費の相談に進めるかどうかは、市区町村の障害福祉の窓口で確認してください。

補装具費で作ってもらえるのは、どんな場合?

「オーダーメイド等により個別に製作する必要がある」と判断された場合で、更生相談所の判定等にもとづいて補装具費が支給されます。

指針は、介護保険優先の原則のすぐ後に、次の例外を置いています。

ただし、オーダーメイド等により個別に製作する必要があると判断される者である場合には、更生相談所の判定等に基づき、本制度により補装具費を支給して差し支えないこと。

ここで押さえておきたいのは、判断するのは本人や家族の希望ではなく、更生相談所などの専門機関だという点です。「これまでも補装具で作ってきたから」「レンタル品は見た目が気になるから」という理由だけでは、例外にはなりません。

相談の場で伝えると話が具体的になるのは、たとえば次のようなことです。

  • 介護保険のレンタル品を試したとき、どの姿勢・どの動作で合わなかったか
  • 座る姿勢を保つために、これまでどんな調整や部品が必要だったか
  • 1日のうちどのくらいの時間を車いすで過ごしているか、屋外での使い方
  • 主治医やリハビリの担当者から、体に合わせる必要について意見を聞いているか

身体障害者更生相談所は都道府県などに置かれていて、補装具の専門的な判定を担う機関です。どの品目で更生相談所の判定が必要になるか、来所が必要か書類で判定されるかは、品目や地域で変わります。

介護保険の認定を受けている身体障害者が車いすや歩行器を相談する順番を4段階で示した図。認定の有無を確認し、共通する品目は介護保険で検討し、合わない場合は市区町村の障害福祉窓口に補装具費を相談し、更生相談所の判定等を経て決定する

介護保険の認定があっても、補装具費で相談するものは?

義肢・装具・補聴器・眼鏡など、介護保険の福祉用具に同じ品目がない補装具は、介護保険の認定があっても補装具費で相談します。

介護保険優先の原則がかかるのは、介護保険の福祉用具と「共通する」補装具です。介護保険の貸与13種目と販売6種目に入っていない補装具は、介護保険では手に入らないため、これまでどおり市区町村の障害福祉の窓口が相談先になります。

また、40歳未満の方は介護保険の被保険者ではないため、車いすや歩行器も補装具費で検討します。40〜64歳の方は、特定疾病によって要介護・要支援の認定を受けているかどうかで扱いが分かれます。

家族の側で混乱しやすいのは、同じ人が「車いすは介護保険、下肢装具は補装具費」のように、品目ごとに別の制度を使う場面です。相談先も、介護保険の品目はケアマネジャー、補装具は市区町村の障害福祉の窓口と分かれるため、どの用具をどちらで用意しているかを一覧にしておくと、交換や修理のときに迷いにくくなります。

費用の負担は、どう違う?

介護保険のレンタルは所得に応じた1〜3割を毎月払い、補装具費は原則1割で、所得に応じた月額の負担上限があります。

介護保険の福祉用具貸与は、月々のレンタル料に対して1〜3割を負担します。他の介護サービスと合わせて区分支給限度額の枠を使うため、デイサービスや訪問介護を多く使っている方は、枠との兼ね合いも確認が必要です(区分支給限度額と福祉用具レンタルの関係)。

補装具費は、製作や購入にかかる費用のうち原則1割を本人が負担し、世帯の所得に応じた月額の上限額と1割相当額のいずれか低いほうが負担額になります。本人または配偶者の市町村民税所得割額が46万円以上の場合は、補装具費の支給対象にならず、自費での入手になります。

どちらの制度でも、機種や構成によって費用は変わります。金額の見込みは、介護保険なら事業所の見積もり、補装具費なら市区町村の窓口で確認してください。

65歳を迎える前に、何を準備しておく?

今使っている補装具の品目・作った時期・相談先を書き出し、介護保険の認定申請とあわせてケアマネジャーと障害福祉の窓口の両方に伝えておきます。

65歳になって介護保険の認定を受けると、車いすなどを新しく用意する場面で、介護保険が使えるかどうかを先に確かめる流れになります。指針は、補装具の修理や再支給が必要になったときも、市町村が他の制度で対応できるかを確認したうえで判断するとしています。

準備として書き出しておくと役立つのは、次の項目です。

  • 今使っている補装具の品目と、作った時期・業者
  • 補装具を作るときに更生相談所の判定を受けたかどうか
  • 体に合わせるために行った調整(座面の形、背もたれの角度、部品の追加など)
  • 交換や修理が近そうな用具と、その理由

この一覧をケアマネジャーに渡しておくと、介護保険のレンタル品で合うものがあるか、合わない場合に障害福祉の窓口へ相談をつなぐか、の判断が進めやすくなります。日常生活用具など自治体の制度も含めた違いは、介護保険と自治体制度の福祉用具の違いで整理しています。

この記事で持ち帰れること

  • 介護保険の認定を受けた身体障害者が、介護保険の福祉用具と共通する補装具(車いす・歩行器など)を希望すると、原則は介護保険の貸与が優先される
  • 個別に製作する必要があると判断されれば、更生相談所の判定等にもとづいて補装具費を受けられる。判断するのは専門機関で、家族の希望だけでは決まらない
  • 介護保険にない品目は補装具費で相談する。品目ごとに使う制度と相談先を一覧にしておくと迷いにくい

まずは、今使っている用具を「介護保険で用意しているもの」「補装具費で作ったもの」に分けて書き出し、ケアマネジャーに見せてみてください。介護保険で車いすや歩行器を試せる事業所は、介護ようひんさーちの事業所検索で住所を入れると、自宅が営業エリアに入る事業所に絞り込め、福祉用具貸与の指定の有無もあわせて確認できます。

よくある質問

Q. 身体障害者手帳があれば、車いすは補装具費で作れますか? A. 介護保険の認定を受けている方の場合、介護保険の福祉用具と共通する車いすは、原則として介護保険の貸与が優先されます。オーダーメイド等で個別に製作する必要があると判断された場合は、更生相談所の判定等にもとづいて補装具費の対象になります。

Q. 補装具で作った車いすは、65歳になったら返さないといけませんか? A. 今使っている補装具の扱いは、お住まいの市区町村の障害福祉の窓口で確認してください。指針では、修理や作り直しが必要になったときに、介護保険など他の制度で対応できるかを市区町村が確認したうえで判断するとしています。

Q. 介護保険のレンタル品が体に合わないときは、どこに相談しますか? A. まず福祉用具専門相談員に、どの姿勢・動作で合わないかを伝えて機種の変更を相談します。それでも合わず、個別に製作する必要がありそうな場合は、ケアマネジャーと一緒に市区町村の障害福祉の窓口へ補装具費を相談してください。